24時間365日・年中無休の”神対応”で、取材は月に数十件!横浜郊外の小さなスーパーがテレビ局に愛される理由

ここ2年ほどのことだろうか。テレビのニュース番組を眺めながら、ずっと疑問に感じ続けてきたことがある。食品関連のニュースが流れる際、毎回のように取材を受けているスーパーがあるのだ。昨日も今日も……チャンネルを変えても、また出ている。その店の名は「スーパーマーケット セルシオ 和田町店」。横浜市保土ケ谷区にあるローカルスーパーだ。 取材を積極的に受け入れるスーパーといえば「アキダイ 関町本店」(東京都練馬区)が有名だが、セルシオの登場頻度はアキダイをもしのぐ勢いに見える。 横浜にあるスーパーがそんなにも取材を受けているのはいったいなぜなのだろう? ナゾを解明するべく、店に取材を申し込んだ。 前編記事『備蓄米ニュースでよく見かける《謎のスーパー》セルシオをご存じですか…?横浜の小さな店に連日取材が殺到する「納得の理由」』より続く。 自ら仕入れ先へ情報収集、月に数十件の取材を受ける セルシオで働き始めてしばらく経った頃、久保田さんの携帯に取材申し込みの連絡が入った。「転職して今は横浜のスーパーに勤務している」と伝えると、先方は「それでも構わないから取材させてほしい」と言う。都心からは車で1時間前後はかかるはずだが、「確実に取材できる」というメリットの前ではその程度の移動は苦にならないのだろう。 セルシオの上司も「受けていいんじゃないか」と寛容な態度を示したことから、新天地での初取材を受諾。そこから先はひばりが丘時代の展開と同じだ。連鎖的に他局からの取材申し込みが続くようになった。久保田さんは言う。 「同族経営の会社で、組織という意味ではゆるいところもある。私も放し飼いにされているようなものなので(笑)、自分で仕事をやりくりして時間をつくることができます。だからこそどんどん取材を受けられる、というところはありますね」 セルシオがニュース取材班に重宝がられるのは、即断即決のスピード感だけが理由ではないようだ。久保田さんは取材を受ける際、仕入れ先に連絡するなどして独自に情報を収集しておく。カメラの前では業界の専門用語を避け、視聴者に分かりやすく伝わることを意識して話す。 久保田さんが休みの日に電話がかかってくることもあるが、その場合は店長などが代わりに取材を受けられるよう、つなぎ役も果たす。まさしく至れり尽くせりの‟神対応”で人気を勝ち取っている。 このところ野菜の高騰や物価全般の高騰、そして最近のコメ問題など“生活ネタ”がニュースの中心になることが増えているが、それに伴って久保田さんの携帯に着信が入る頻度もうなぎ上りだ。NHK、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ、さらに地元のテレビ神奈川まで、取材に来たことがないテレビ局はないといい、インタビュー当日にも3社のテレビクルーが訪れていた。しっかり数えてはいないものの少なくとも月に数十件はあるというから、年間300本以上ともいわれるアキダイのペースを上回っているかもしれない。 超多忙になってしまったが…それでも取材を断らないワケ ここまで数が膨らんでしまった今、取材を断ろうと考えることはないのだろうか。久保田さんは苦笑交じりに言う。 「もちろんノーギャラですし、(忙しさが増して)自分の首を絞めているなとは思います。でも、それ以外は取材を受けることでマイナスになることはない。むしろ、無料の広告だ、これで認知が上がるぞというやらしい根性も心のどこかにはありますよ。最近は苦戦しているスーパーさんが多いと聞きますが、幸いにもうちは好調なんです。テレビ取材をたくさん受けているおかげかもしれません。お客様にも『テレビ見たよ』『また出てたね』と声をかけていただくことが多いですね。私自身はテレビをまったく視聴しないので、不思議な感じがします」 ところで、セルシオには取材を受けまくっていること以外に、ある特色がある。肉類の品揃えがかなり独特なのだ。冷蔵コーナーには、ハチノス(牛の第二胃)やフワ(牛の肺)、豚の鼻、ラムのタンなど、普通のスーパーでは見かけないホルモン系の商品がずらりと並ぶ。さらに冷凍コーナーには「珍獣」と書かれた貼り紙があり、ウサギやカエル、ワニ、熊の手などが売られている(在庫がないこともある)。久保田さんは言う。 「私も最初はびっくりしましたけど、そこは部長のこだわり。『これないの?』と言われたときに『ありません』とは言いたくないそうです。もともとお肉屋さんですから、いろんな入手ルートを持っている。外国人のお客様なんかが意外と買っていかれますよ。子豚を丸ごと真空パックにした商品(34567円)も売れました」 取材対応も独特な品揃えも、店を訪れた人の期待を裏切らないという点で共通しているといえる。 地元客と取材班を惹き付けてやまない、異色のスーパー「セルシオ」。アキダイを上回る知名度を獲得する日も遠くないのかもしれない。 (撮影/日比野恭三) ・・・・・・ 【もっと読む】『スーパーの元店主が語る…いま売り場から「半額弁当」が急速に姿を消している「残念な理由」』 【こちらも読む】スーパーの元店主が語る…いま売り場から「半額弁当」が急速に姿を消している「残念な理由」

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