“出生率70万人割れ”の衝撃「少子化」解決の糸口は?「every.しずおか」津川アンカーの目線で検証・第12回(静岡)

6月、衝撃の統計が発表されました。2024年、国内で生まれた子どもの数が70万人を下回ったのです。これは、統計を取り始めてから125年の歴史の中で初めてのこと。 生まれた子どもの数は、2016年に「100万人」を下回ると、わずか10年足らずで「70万人」を割り込みました。2023年の推計では“70万人割れ”は2038年とされていましたが、想定よりも14年早く下回り、危機的な状況に。 さらに、女性1人が生涯に産む子どもの数を表す「合計特殊出生率」は、「1.15」と過去最低になりました。このまま、子どもの数が減れば…。 静岡市では2050年に15歳未満の子どもは1割に届かず、65歳以上の高齢者が半数を占める「超少子高齢化社会」に。多くの店や施設もなくなっていき私たちの生活への影響も避けられません。 歯止めのかからない少子化に解決の糸口は見いだせるのでしょうか? (スタジオ解説) (津川 祥吾 アンカー) このコーナーは、日々お伝えしているニュースの中から私、津川の視線で選んだ話題を取り上げ、「皆さんで一緒に考えよう」というコーナーです。今回のテーマはこちら。「生まれない社会」で‟地方”から消えていく。 2024年に国内で生まれた子どもの数は統計開始以来、初めて70万人割れとなりました。全国と静岡「合計特殊出生率」1人の女性が生涯に産む子どもの数の指標として「合計特殊出生率」というものがありますが、人口維持に必要なのは「2.07人」といわれています。 現在、静岡県は「1.19」。全国も「1.15」ということで、このままだと静岡県も国もなくなってしまうというのがはっきりした数字な んですね。 さらに、この数字が低いことをもさることながら…、さらにびっくりするのが国の機関が将来人口の推計というのをしているのですね。 2017年に出した数字ですと、出生率下がっも2023年ぐらいには下げ止まるんじゃないかと、1.36ぐらいで止まってあとは微増していくかな、その間ずっと人口は減るけれども出生率はどこかで止まりますよ…という推計を出していたのですが…全然止まらないんです。 これはコロナの影響じゃないかという分析もあるようですけれど、いずれにしろ、本当に衝撃的な数字だという風に受け止めていいかと思います。なぜ、これほど急に減ってるのかということで、これは常にいわれていることですが、晩婚化が進んでいる、未婚の方が多いのではないかというところ。 一方でですね、静岡市の数字ですが、お子さんの数、これは結婚されている女性が、何人お子さんを産みたいですか?何人お子さんが欲しいですか?という理想を聞くと…平均では2.21人、2人を少し上回っているのですが、現実的には2人を下回っていると…こういうギャップもあるということなんですが、このギャップについて実際どういったことが起こっているのかということについて、2024年に静岡駅前にオープンした屋内型遊び場施設「KIDS PARK X」でお話をうかがいました。 (30代・1歳児の母親) 「初めての子どもなんですけど、こんなにお金かかるんだっていうのはすごいびっくりした。(子育ての)しやすさは、正直感じない。他の市の知り合いに話を聞くと、学童も無料だよとか医療費もただだよとか。今はかなり物価も高いし大変だなっていうのを感じます」 (20代・2歳児の母親) 「平日ちょっと自分が具合悪い時に預かってもらえたりとか、もうちょっと一時預かりのサービスとかが充実したら、もう少し2人目とか考えやすいのかなと思ったりします。地元が福岡なんですけど。おむつの定期便があったりとか、いろいろもらえたりするんですけど、そういうの全然静岡はないので、もうちょっと充実すると(出産を)考える人も増えるのでは」 (30代・1歳児の母親) 「夫の転勤で静岡に来たが妊娠中というのもあって仕事はやめてしまったが、また働きたいと思っている。2人は欲しいなというのはある。この子の子育てがちょっと落ち着いてきたので考えたい」 (スタジオ解説) (津川 祥吾 アンカー) お母さんたちの声の中には、静岡市の子育て支援がちょっと弱いのかなという感じもしましたが、本当は2人欲しいのだけど…という声もありました。増田さん、こうしたお母さんたちの声を聞いていかがですか? (コメンテーター 増田 英行 弁護士) 本当に子育てをされているお母さんもお父さんも、本当に大変だなという風に思うんですね。もちろん、お金の面もそうですし、子どもというのは突然病気になったり、けがしてみたり…そういう意味で体力的にもそうですし、いろいろな不安も抱えることになると思うんですね。だから本当に子育てというのは大変だと思います。それで昔から、子どもというのは…コミュニティですね、社会が育てるのだ…という話がありますので、だから親御さんだけではなくて周りも手助けをしてあげられる…それが実践できるような社会であってほしいなという風に常々思います。     (津川 祥吾 アンカー) 本当に子育てされている、お子さん方も大変なことも当然あると思いますし、お金がかかって大変というのも現実的な問題としてあると思います。ただ、出生率が低い原因は、実はたくさんあるともいわれていますし、よくわからないともいわれています。経済的なリスクがあるよと。お子さんが生まれると、退職しなきゃいけないとかですね、あるいはパートになるので収入が減ってしまうよ…というのは現実的な話とか、本当に育児教育にお金がかかりますよ…昔よりかかってますよという話もありますよね。ただですね、例えば今よりもっと経済が厳しい時代に、お子さんがどうだったかというと…もっとたくさん生まれていたとか、所得に応じてそのお子さんが多い少ないというのは比例しているかというと、実は必ずしもそうでもないというところがあって、原因は1つではなくて、なかなか対策が難しいというところではありますが、その問題もさることながら、では実際に子どもがこのままどんどん減っていくと何が起こってしまうかというところを、もう1回見たいと思います。 静岡市の独自の推計ですが、市長がこの間お話しされていましたが、2050年には50万人を切ってしまうのではないかと…静岡市がですね…、しかも若い方が少ないですから、様々な民間のサービス、行政のサービスがどんどんなくなっていってしまうのではないかと…こういったところから本当に生活し難い地域になっていってしまう。あるいは地域そのものが崩壊してしまうかもしれないということがいわれています。そういったところが、実は地方都市の方が先に具体的な影響が出てくるのではないかということで、実は地方に住む私たちは、本当に危機感を持つべきではないかなという風に思いますが…徳増さんいかがですか? (徳増 ないる キャスター) はいそうですね。人口が減っていくというこの現実は受け止めなければいけないですし、その減っていく中で、どうやってその街づくりをしたり、地方都市を残していくのかというところ…本当に大きな課題だなと思いますね。 (津川 祥吾 アンカー) 実は人口減少対策をですね、ものすごく有効なものが今出てきて、出生率がガンと上がったとしても、しばらくは人口は減り続けるんですね。構造上やむを得ないですから、人口が減っていく中で私たちの社会をどう維持していくか…この喫緊の課題、この対策をしっかりとるというのも1つものすごく大事なことなんですが、根本的には出生率を先ほどの2.07以上にしないと地域社会が本当になくなってしまいますよ…というところなので、この出生率を上げるために何ができるかということなんですけれども…。 まず、「産んでください」ということを私申し上げているわけではありません。そういう風に国家は言うべきでは決してないと思います。産むか産まないかは、やはり個人の自由ですから、しっかりと選択できるというのが、まず大前提で、ですから産まないという選択肢もしっかりと守った上で、産みたいという人たちをしっかりとサポートするという支援が必要だろうと、これが今行政がとっている対策になっています。 その中で、どんなことをやったら効果が出るのか…、県内でも、あるいは全国でも、あるいは世界でも、いろいろな対策をとっていますが、国内で1つ有名な例でいうと、兵庫県の明石市ですね。5つの無料化というのをやっています。医療費18歳まで無料。保育料も第2子以上は無料とかですね、給食費も中学校無料とか、こういったことをして、しかも全て所得制限なしでやっていると。 この中でも特にですね、おむつ1歳まで無料配達というのがあります。ただでくれるというありがたいところもあるんですが、実はそれだけではなくてですね、実際に配達をしていただいてる方、映像がありますが、子育て経験のある女性にやっていただいていて、おむつを届けるだけではなくて、相談にも乗ってくれると…。若いお母さんたちを孤立させないと、こういう政策もとって、これが10年以上やっているということなんですね。その結果として、実は出生率も少しずつ上がってきています。出生率は、2010年には「1.48」だったものが2021年には「1.65」全国平均よりはかなり高いですし、毎年少しずつ上がってきている。単に「子育て支援をしましょう」というだけではなくて、子育てというのは社会の投資なんですと。だから「行政はしっかりとそれを支えます」ということをやってきてるということですね。 私は、この出産とか結婚、こういったものは、やはり個人の自由なので、それに対して、「皆さん結婚してください」とか「子ども産んでください」というのは、私ちょっと違うと思うんですね。その生き方は本当に象徴されなきゃいけない。ただし、出産とかこの育児というものを選択された方々に対して、やはりその選択が未来の社会を作る選択であるということを、私たちはみんな考える必要があると思いますし、それをきちんと「見える形で支える」というのが重要になってくるかと思います。 この「見える形」というんですが…「シャドウワーク」という言葉がありますよね。「見えない労働」よく家事のことをいいますけれども、家で、家の仕事をするというのにお金がもらえないですね。時間もかかるし、すごく大変なんですが、誰からもお金、お給料もらえない。評価がされない。特にOECDの調査によると、日本の例なんですが、男女差もかなり大きいですよと…。この無償労働「シャドウワーク」というのを男性がやっているのがこのぐらい。女性がやってるのがこのぐらい…まさに女性は男性の5.5倍ぐらい、まさに無償労働「シャドウワーク」見えない労働をしてしまっているのではないのかと…このバランスの問題もあるのですが、そもそもこの育児とか出産というものが「個人のものですよ」、「家庭の中の問題ですよ」としてしまっているところが、私は根本的な何か足りない部分があるのではないかというふうに思います。 そこで、きょうの私の提言はこちらです。 子育てを“応援する社会”から“ ともに担う社会”へと…何かこう政治家の標語みたいで、ちょっと説得力ないかもしれませんが、どういうことかというとですね、「頑張ってください」ということで、「何か支援をしますよ」というのではなくて、出産・子育て、もちろん個人が決めることですが、そのことの一部は、やはり社会の土台を作っているものではないかということであれば、社会もまさにその子育ての部分を一定程度負担する責任があるのではないかという風に思います。具体的にはですね、「子育てインカム」と私は言ってるんですけれども、やはりその「シャドワーク」といって、ずっとそのままにされてきた問題を、しっかりと光を当てて、そこを評価して、お金をちゃんと渡す。「お金を渡しますから子どもを産んでください」という話をするわけではありません。そうではなくて、その無償労働をしっかりと社会の中で再定義をするということが、私はこれから出生率を上げていく上で、実は1番大事な根本的な部分になって…また、特にこの静岡みたいな地方から、そういった新しい政策を進めていくことが必要なのではないかなという風に思っております。

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