SNS上で「期日前投票は書き換えられてしまう」「消せない文房具で記入を」といった投稿が相次いでいます。実際に不正をすることは可能なのか、誤情報を拡散する背景には何があるのか? 22日投開票の東京都議選や参議院選挙を前に注意が求められます。 ■「期日前」「不正」が含まれる投稿数 藤井貴彦キャスター 「22日に投開票となる東京都議会議員選挙と、夏の参議院選挙が迫っています。『期日前投票は書き換えられてしまう』。こうした投稿が今、SNS上に相次いでいます。どういうことなのでしょうか?」 小栗泉・日本テレビ報道局特別解説委員 「Xで『期日前』『不正』という言葉が含まれる投稿の数を(Meltwaterによるグラフで)見ると、去年の東京都知事選挙、衆議院選挙、兵庫県知事選挙の前後で増えているのが分かります」 「今回も都議選の投開票を前に、こうした投稿が増えています。例えば『期日前投票は不正をされるから、当日に選挙に行こう』とか、『投票用紙には鉛筆ではなく、ボールペンなど消せない筆記用具で記入したほうがいい』といった投稿がされています」 ■書き換え可能? 投票箱やカギの保管は 藤井キャスター 「こういった投稿自体に驚きを隠せないという方もいらっしゃると思いますが、実際に誰かが書き換えるということはあるのですか?」 小栗委員 「そもそも、開票日まで投票箱がどのように保管されているのでしょうか。総務省によると投票箱の多くは、投票用紙を入れる部分の上ぶたに1つ、そして開票する時に開ける側面に2つの、合わせて3つのカギがかけられているそうです」 「総務省などによると、有権者の中から選ばれた投票立会人らがそのカギを封筒に入れて封をした後、ハンコを押します」 「カギを入れた封筒の保管場所には決まりはないそうですが、例えば東京・千代田区では投票箱と一緒に、投票所内の部屋にカギをかけて保管しているということです」 ■不正が入る隙は? ボールペンOK? 小栗委員 「長年選挙実務に携わってきた、選挙制度実務研究会理事長の小島勇人さんに聞きました」 「小島さんは『期日前投票は厳正公平な流れが公職選挙法で定められているため、巷(ちまた)で言われているような不正が入る隙は一切ない。今まで40年以上選挙管理事務に携わってきたが、不正を見聞きしたことは一度もない』と話しています」 藤井キャスター 「鉛筆ではなく、ボールペンで記入したほうがいいという声もありました。これはどうなのでしょう?」 小栗委員 「実際(投票所に)置いてある鉛筆ではなくて、持っていたボールペンなどで記入することもルール上、問題はないそうです」 「ただ投票用紙が特殊な材質の紙を使っているので、ボールペンだと文字がかすれてしまい、よく読めなくなったりする可能性もあるため、推奨はしていないということです」 藤井キャスター 「期日前投票したことはありますか?」 板垣李光人さん(俳優・『news zero』水曜パートナー) 「僕は期日前投票をすることが多いです。自分のように当日投票に行けない人のためにこうした選択肢を広げてくれているのに、こういう投稿があると耳にすれば、ただでさえ投票率が低い中で、不安を感じる方もいらっしゃるのではないかなと思います」 「不確かな情報に左右されないためにも、自分の考えというものをしっかり持つことの大切さを改めて感じます」 ■専門家に聞く…発信・拡散される背景 藤井キャスター 「『期日前投票で不正がある』という投稿が相次ぐのは、何か背景があるのではないですか?」 小栗委員 「こうした情報を発信したり拡散したりする背景について、ソーシャルメディアの情報政策のあり方に詳しい慶應義塾大学の水谷瑛嗣郎准教授は、大きく分けて2つの動機があるのでは、と指摘しています」 「1つは、(アメリカの)トランプ大統領の選挙戦でも見られたように、現状に不安や不満を感じている層が、その不安を埋めるための材料を見つけ共有しようとしているのではないかというもの」 「もう1つは、目新しい情報を発信することでソーシャルメディア上で注目されようとしている側面もあるのではないか、と水谷准教授は話しています」 藤井キャスター 「にわかには信じられないような投稿が広く拡散されていますが、それを取り入れる人も一方で増えています。誤った情報が届いたとしても、正確さを見極めることができるか、その後の拡散を皆さんのところで止めることができるか」 「選挙を控えている今、冷静さと慎重さがいつもより高いレベルで求められています」 (6月18日『news zero』より)