最新データが明かす「格差拡大のなれの果て」…多くの人が知らない、日本の「新しい階級社会」

「中流幻想」ははるか彼方の過去の夢。 1980年前後に始まった日本社会の格差拡大は、もはや後戻りができないまでに固定化され、いまや「新しい階級社会」が成立した。 講談社現代新書の新刊・橋本健二『新しい階級社会 最新データが明かす〈格差拡大の果て〉』では、2022年の新たな調査を元に「日本の現実」を提示している。 本記事では、〈「格差拡大」により日本に出現した「新しい下層階級」…現代日本の「階級社会」のしくみ〉に引き続き、各階級の基本属性について詳しく見ていく。 ※本記事は橋本健二『新しい階級社会 最新データが明かす〈格差拡大の果て〉』より抜粋・編集したものです。 各階級の基本属性 図表1・2は、各階級の基本属性として、性別、年齢、学歴を示したものである。 (1)は性別構成である。2022年三大都市圏調査では、性的マイノリティ、あるいは男/女の二分法に否定的な人々に配慮して、性別を尋ねる設問には「男性」「女性」のほかに「その他」「答えない」という選択肢を設けている。グラフの「その他・NA」は、「その他」と「答えない(ノー・アンサー)」を合計したものである。 資本家階級は男性比率が77.6%と非常に高い。女性が経営者になることは、依然としてかなり難しいようである。 新中間階級の男性比率は57.0%と、6割を少し下回る程度だった。この調査では、学校を出て最初についた仕事(初職)についても尋ねているのだが、これにもとづいて初職時点で新中間階級だった人の性別構成をみたところ、男性42.4%、女性56.3%と、女性の方がかなり多かった(その他・NAは1.3%)。つまり女性は初職の時点では、正規雇用の事務職を中心に新中間階級の比率が高いのだが、のちに退職して専業主婦やパート主婦になる人が多いため、現職では比率が小さくなるのである。 正規労働者階級の男性比率は77.2%で、資本家階級並みに高かった。これは製造業の生産現場や建設現場など、男性中心の職場が多いのが主な理由ではあるのだが、新中間階級と同様に、結婚や出産を経てなお働き続ける正規労働者階級女性が少ないというのも大きな理由である。初職時点でみると女性比率は33.6%で、現職より12%も高くなっている。 アンダークラスは、五つの階級のなかでもっとも女性比率が高く、56.8%と唯一、5割を超えている。この階級が女性中心の階級であることがわかる。また注目したいのは、「その他・NA」の比率が4.6%と他の階級よりかなり高くなっていることである。おそらく性的マイノリティであるために、正規雇用の職を続けられなかったり、不安定な就労を余儀なくされたりした人々がいるのではないだろうか。 旧中間階級は男性比率が65.1%、女性比率が33.8%と、ほぼ二対一の割合だった。これは初職時点でみても、男性59.9%、女性39.1%で、あまり変わらない。 年齢と学歴 (2)は年齢である。一見してわかるとおり、中高齢者が多い資本家階級と旧中間階級、若年者が多い新中間階級、正規労働者階級、アンダークラスと、はっきり二分されている。資本家階級と旧中間階級で中高齢者が多いのは、この二つの階級は到達階級という性質が強いからだろう。つまりいったん企業に雇われたあとで、内部で昇進を重ねたり、経験を生かして独立したりして、資本家階級や旧中間階級にたどり着くのである。 アンダークラスの典型はフリーターだから、若年者がとくに多いかとも考えられたが、必ずしもそうではない。20歳代は18.9%と新中間階級、正規労働者階級とほぼ同じだが、30歳代は22.8%と少なく、40歳代と50歳代が、それぞれ32.9%、25.4%と多い。非正規雇用で働く若者たちの増加が注目され、フリーターという言葉が使われ始めたのは1980年代後半のことだが、この時点で20歳前後だった人々は、2022年の調査時点ですでに50歳代となっている。また不況のため新規学卒者の就職状況が悪化し、のちに就職氷河期といわれるようになった2000年前後に学校を出た人々は40歳代である。アンダークラスにこの年代が多いのは、偶然ではない。 (3)は学歴である。学歴は四段階に分けた。「中学・専各」は中学、または高校卒業を入学要件としない専修学校・各種学校、「短大・専門」は短期大学、高等専門学校、高校卒業を入学要件とする専門学校である。なおここでいう学歴は、最後に在学した学校の種類を指しており、少数ながら中退者も含まれているが、煩雑になるのを避けるため、以下では「大卒」「高卒」などの表現を用いている。 もっとも学歴が高いのは新中間階級である。73.8%が大卒者で、短大・専門を含めると91.8%が高等教育を受けていることになる。資本家階級も大卒者が70.4%と多いが、高卒以下の比率が16.0%とやや高いところに新中間階級との違いがある。中小零細企業の経営者には、必ずしも高い学歴が必要とされないからだろう。 次に高等教育を受けた人の比率が高いのは正規労働者階級と旧中間階級である。大卒者の比率は正規労働者階級が56.4%と高いが、短大・専門を含めると旧中間階級の方が78.0%と高くなる。 アンダークラスは、大卒者の比率が37.7%と低く、短大・専門を含めても63.8%にとどまり、高卒者が34.6%と多い。 * さらに【つづき】〈年収わずか216万、結婚できない「アンダークラス」…日本で進行する「階級社会化」の現実〉では、階級間の経済格差について詳しく見ていく。 【つづきを読む】年収わずか216万、結婚できない「アンダークラス」…日本で進行する「階級社会化」の現実

もっと
Recommendations

出生前診断や延命治療など「命巡る選択」、心の揺らぎと「自己決定」への問いかけ…劇団俳優座「PERFECT」

人生は選択の連続だ。不妊治療、出生前診断、家族計画、延命治療—…

免許返納望む息子vs父親の“家族会議”をモニタリング…「事故しない自信ある」父に息子は「個人の説得ではキリがない」【news23】

18日長野市で91歳の男性が運転する車が外壁に衝突し、助手席に乗って…

大谷翔平、今季3度目の2試合連続無安打…ドジャースは代打スミスのサヨナラ弾で5連勝

【ロサンゼルス=帯津智昭】米大リーグ・ドジャースの大谷翔平は1…

【訃報】俳優・藤村志保さん(86) 肺炎で死去 映画「破戒」「長崎ぶらぶら節」ドラマ「風林火山」「だんだん」などで活躍

俳優の藤村志保さんが肺炎で亡くなったことが分かりました。86歳でし…

「現場の先生は違和感あっても言えない」性犯罪から子ども守る『日本版DBS』来年12月に施行...保育現場の実情とは?制度で防ぎきれない課題、対策へのハードルも

ある保育施設では、職員の配置転換などの対応について戸惑いの声が上がった

「孤独」「金欠」発信は狙われやすい 大学生開発のゲームで高校生に闇バイト被害防止の授業 北海道

北海道釧路市の阿寒高校で2025年6月18日、闇バイトから身を守るための…

西伊豆町の造船所で解体予定の船1隻を全焼…陸揚げ作業中に出火もけが人なし(18日・静岡)

18日、静岡・西伊豆町の造船所で、解体予定の船の陸揚げ作業中に船から…

他人名義で登録のマッチングアプリ悪用か、ぼったくり事件で異例の「詐欺罪」適用…男女6人逮捕

マッチングアプリを悪用し、東京・渋谷のバーでぼったくりを繰り返…

天皇、皇后両陛下が即位後初の広島県入り…被爆者や被爆体験伝承者らと懇談へ

天皇、皇后両陛下は19日午前、戦後80年の節目にあたり東京・羽…

大谷翔平 2戦ノーヒット いい当たりもフェンス手前で失速 2年ぶり先発シーハンが4回1失点の好投 ド軍代打スミスがサヨナラ弾で5連勝

■MLBドジャース 4×ー3 パドレス(日本時間19日、ドジャー・スタジ…

loading...