今季はこれまで4件が成立! プロ野球トレードの“裏側”から探る次に動く「球団名」とは

 セ・パ交流戦に突入した今年のプロ野球。両リーグともまだまだ混戦状態続いているが、優勝争い、Aクラス争いのために補強に動いている球団は少なくない。大きな話題となったのが、ソフトバンクと巨人の間で行われたリチャードと秋広優人、大江竜聖の交換トレードだが、他にも山野辺翔(西武→ヤクルト)、岩嵜翔(中日→オリックス)、佐藤龍世(西武→中日)の3人も金銭トレードによって移籍となった。7月31日のトレード期間終了までにまだ動きがある可能性も高いだろう。【西尾典文/野球ライター】  *** 【写真を見る】シーズン途中でなぜ? 話題となった「トレード選手」たち メジャーと比べトレードが少ないNPB  そもそも、このようなトレードはどのような経緯で成立するのだろうか。ある球団の編成担当者に聞くと、以下のように話してくれた。 6月15日の試合終了後に発表された西武・佐藤龍世選手の中日への金銭トレード 「プロの球団にはアマチュアの選手を調査するスカウトとは別に、他球団の選手を調査する編成担当が必ずいます。球団によっては『プロスカウト』とも言ったりしますね。視察するのは、基本的に二軍の試合です。メジャーであればバリバリのレギュラークラスがシーズン中にトレードとなることもありますが、NPBではそういうことはまずありません。対象は現在、一軍で出番が少ない選手ということが大半です。そういう選手のプレーぶりを日々ウォッチして、レポートにまとめる」  ただ、実際にトレードがまとまる件数はそれほど多くない。 「こちらが良いと思う選手は当然、所属している球団も評価していることが多いですから、簡単に話が進むケースは少ないです。メジャーは球団数も多く、低迷しているチームは、そのシーズンを早々に諦めて主力を放出して将来に舵を切るということもありますが、NPBはそういうことはありません。それもトレードが少ない理由だと思います」(編成担当者)  今年のペナントレースを見てもセ・リーグではヤクルト、パ・リーグではロッテが厳しい状況だが、それ以外の5チームはまだまだAクラス入りの可能性は十分に残されている。それを考えると、トレード期間終了までに来季に舵を切る球団がなかなか出てこないというのは、理解できるところだ。 球団同士の繋がりには強弱がある  前出の編成担当者は、こう続ける。 「他球団の編成担当とは、当然いろいろと情報交換をします。ただ球団によって多少違う部分はあるかもしれませんが、担当者が主導になって働きかけてトレードが成立するというケースは、あまりありません。GMや編成部長など編成のトップとなる人同士が話し合って決まることが多いですね。現場、つまり監督の意向が強い球団がありますが、逆にそうではない球団もあります。編成担当者にも事前に候補となっている選手について相談もなく、編成トップ同士で話が決まって、後から知らされるということも珍しくありません」  そうなってくると、やはり大きいのは編成トップの人脈や交渉力だ。 「いろんな球団を経験している人や、アマチュア時代に名門と呼ばれる大学出身で、母校の繋がりが多い人が重宝されやすいのは、そういう理由からだと思います。また人間同士でやっていることですから、球団同士の繋がりも強いところと弱いところはありますね」(編成担当者)  アマチュア選手を獲得するドラフト会議も担当スカウトの名前が取り上げられることが多いが、実際に最終的な決断をするのはスカウト部長や編成トップと言われている。球団によっては監督の意向が強く働くケースもあるという。そういう意味では、アマチュア選手の獲得もトレードも構造は同じで、編成トップや現場のトップ次第と言えるだろう。  冒頭で触れたリチャードの獲得は、巨人の阿部慎之助監督の強い意向が働いたと言われている。一方、ソフトバンクが秋広だけでなく、大江も獲得できたことは交渉の結果と見られる。 支配下の人数の枠を空ける目的も  また、過去にも巨人とソフトバンクは、2023年オフにウォーカーと高橋礼、泉圭輔の交換トレードを成立させている。昨年のオフにもフリー・エージェントとなった甲斐拓也を巨人が獲得し、その人的補償で伊藤優輔がソフトバンクに移籍している。このような繋がりも、今回のトレードが成立した背景と言えそうだ。  さらに、直近では3件の金銭トレードが成立しているが、選手を放出した側の球団にも狙いがある。それは支配下の人数の枠を空けることで、新たな選手の獲得や育成選手の昇格が可能になることだ。  実際、中日は岩嵜をオリックスに放出して間もなく佐藤を獲得した。一方、西武は3月以降、黒木優太、仲田慶介、モンテル、佐々木健を育成から支配下に昇格させているが、他の育成選手では、投手は上間永遠、野手は仲三河優太、佐藤太陽らが結果を残しており、右上腕動脈閉塞症からの再起を目指す森脇亮介も控えている。7月末までにこの中から支配下登録される可能性が高いだろう。  以上のような話を踏まえて、改めて近年のトレードを見てみると、確かに多く成立している球団とそうではない球団があることが分かる。 日本ハムの動きに注目?  2022年オフ以降で最も多くトレードを成立させている球団は日本ハムだ。その相手も、阪神をはじめ、西武やロッテ、中日、オリックス、巨人と6球団に及ぶ。  日本ハムは以前からフロント主導で多くトレードを行ってきたが、それに加えて新庄剛志監督が就任してチームを大きく作り変えようとした結果と言えるだろう。さらに付け加えると、これだけ多くの球団とトレードを成立できるだけの繋がりがある証明でもある。  今シーズンも新庄監督からトレードを希望するような発言が飛び出しており、チームも首位と好調で余剰戦力となっている選手もいる。ここから動きが出る可能性も高いのではないだろうか。  トレード終了期間まであと1ヵ月半。日本ハムはまた新たな動きを見せるのか。他球団がどのように動くのか。その動向に引き続き注目したい。 西尾典文(にしお・のりふみ) 野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。 デイリー新潮編集部

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