【バンフ（カナダ西部）＝山本貴徳、酒井圭吾】１６日から議論が始まる先進７か国首脳会議（Ｇ７サミット）で、議長国カナダは、ウクライナ支援や米国の関税措置を巡る対立を回避し、共通課題に焦点を絞ることでＧ７の結束を保ちたい考えだ。 　２４日からの北大西洋条約機構（ＮＡＴＯ）首脳会議でも、米欧の足並みがそろうかが焦点となっている。 　カナダのカーニー首相はサミットに先立つ声明で、「Ｇ７サミットは、信頼できる仲間とともに難題に立ち向かう場になる」と表明し、連携を重視する姿勢を打ち出した。 　カナダは三つの優先課題として、〈１〉平和と安全保障〈２〉エネルギーとデジタル技術〈３〉雇用と投資の促進——を掲げる。半導体や電気自動車（ＥＶ）などに使われる重要鉱物のサプライチェーン（供給網）の構築や人工知能（ＡＩ）の活用、山火事対策などが含まれる。 　重要鉱物は、中国への過度な依存がリスクとして指摘されており、カナダは技術協力や調達先の多様化の重要性について、各国と意見集約を目指す。国内で深刻な課題となっている山火事対策も、気候変動との関係から国際的な関心が高まっており、各国と取り組みやすい課題と言える。 　一方、ウクライナ支援や、米国の関税措置により高まる世界経済の不確実性などについても、各国は意見を交わす見通しだが、米国と他の参加国との立場の隔たりが鮮明になっている。 　そのため、カナダは全体を総括する首脳宣言の取りまとめは見送り、個別のテーマごとに合意文書を発表する方向で最終調整している。カナダ政府高官は「特定のテーマにより深く踏み込み、実行可能な合意が得られる」と説明する。対立によって全体の合意がまとまらなくなる事態を避ける狙いがあるとみられる。 　米欧の温度差は、２４〜２５日にオランダ・ハーグで開かれるＮＡＴＯ首脳会議にも影を落としている。 　ロシアのウクライナ侵略が始まった２０２２年以降、首脳会議ではウクライナのＮＡＴＯ加盟を強く支持してきたが、トランプ米大統領は加盟問題が侵略の引き金になったとの立場だ。 　欧州側では「米国と対立すれば、中露を利するだけ」（ＮＡＴＯ事務総長）との意見も出ており、今回は加盟問題を議題から外す方向だ。首脳宣言でも、ロシアへの直接的な非難は盛り込まず、トランプ氏が求める各国の防衛費増額が強調される内容になるとの見方が出ている。