【バンフ（カナダ西部）＝太田晶久】石破首相は関税措置などを巡って米国と欧州の対立が深まる中、初めて参加する先進７か国首脳会議（Ｇ７サミット）でＧ７結束に向けて役割を発揮できるかが問われることになる。 　アジア唯一のメンバーとして、中国が影響力を拡大させるインド太平洋地域にＧ７の関心を引き寄せることも課題となる。 　首相は出国前、記者団に対し、「Ｇ７として結束して色々な課題に当たっていくことが一番重要だ」と力を込めた。関税措置発動や同盟軽視で揺れる米欧関係を念頭に置いたものだ。首相は４月以降、英国やイタリアの首相らＧ７各国の首脳と電話会談して自由貿易体制の重要性を確認するなど、米欧間の橋渡しの地ならしを進めてきた。トランプ大統領とも電話会談を４回重ね、関税措置見直しに向け落としどころを探った。 　首相は昨年１０月の就任後、国際会議出席や訪米、東南アジア歴訪を重ね、大阪・関西万博に合わせて来日した約２０か国の各国首脳らとも会談するなど、外交経験を積み重ねてきた。外交への苦手意識は減りつつあるが、予測不能なトランプ政権を巡る外交問題の調整は依然として難易度が高い。 　首相は外遊前、周辺に「欧州に肩入れし過ぎて米国を孤立させるわけにもいかない。Ｇ７サミットで日本の振る舞いは非常に難しい」と吐露している。 　ウクライナ侵略が続き、中東情勢も動くなか、インド太平洋地域へのＧ７の関心をつなぎとめることも急務だ。首相は１６日（日本時間１７日）に行われる地域情勢の討議で、覇権主義的な動きを強める中国を念頭に同地域の安全保障環境に関して冒頭発言を行う。北朝鮮の核開発と絡めてイスラエルによるイラン攻撃に言及し、イラン核開発を非難する米国に配慮も示す方向で、国際・地域情勢、２国間関係など、様々な課題でバランス良く振る舞えるかが注目される。