卒業以来まったく縁がなかった母校で「超有名人」が生まれたら サッカー日本代表が“後輩”になって盛り上がる母校愛もある

母校からサッカー日本代表が  生まれ育った地方都市で職を得た人はさておき、ある程度の都会では大人になってから公立小中学校時代の友人と会うことは滅多にないだろう。自分のことを考えても、高校卒業後に中学時代の友人のバイト先に忍び込んで語り合ったことなどはあるが、その次は32歳の時に地元のスナックで恩師を囲み、皆で飲んだことぐらいである。 【鷺沼から世界へ】サッカー日本代表・三苫薫選手と田中碧選手を育んだ川崎市立鷺沼小学校の校舎に飾られた横断幕の様子  私は現在51歳だが、その時以来、小中学校の同級生とは誰とも会っていない。結局、頻繁に顔を合わせるのは仕事関係の人々と、現在住む地元の人々が大多数で、大学時代の友人ですら年に1〜2回程度。しかし、小学校の同級生女性とひょんなことから会うことになった。きっかけはサッカー日本代表の三笘薫と田中碧である。 川崎市立鷺沼小学校出身の三苫薫選手  彼女と私は神奈川県の川崎市立鷺沼小学校出身なのだが、同校は三笘と田中が通った学校であり、地元のサッカーチーム「さぎぬまSC」の先輩・後輩にあたる。同チームには代表の権田修一と板倉滉も所属していた。2022年のFIFAワールドカップの際、フェイスブックでたまたま繋がっていた同級生のハルコから連絡が来た。彼女の苗字はかなり珍しく、突然思い出してともだち申請をし、小学校時代の友人では唯一繋がっていたのである。 「あのさ、知ってた? 日本代表の三笘君と田中君って鷺沼小学校出身なんだって! だから今度会おうよ! 私たちと同じ学校に行っていた人が世界で活躍してるってすごくない?」 侍ジャパンではないが  それはそれはギョーテン、ということでハルコに会ったのだが、我々は学校まで一緒に通う仲だったため、昔話は色々ほじくり出せたし、現在の仕事の話などもたくさんした。ちなみに同小学校はタレントのベッキーと野球選手の雄平(高井雄平・ヤクルト ※現東北楽天二軍コーチ)も輩出している。  野球やサッカーの強い高校であれば、それこそプロ選手を多数輩出しているからそこまでの驚きはないし、「あぁ、またウチの後輩が活躍しているな」程度の感慨だろう。大学でも多数のアスリート、ミュージシャン、政治家、作家、アナウンサー等を輩出しているため同様の思いだ。だが、ことは公立小学校である。奇跡的に1学年違いの三笘と田中が同時に代表にいるというのは勝手ながら、非常に嬉しく感じたのだった。  私は4年生までこの学校に通って5年からは立川市立の小学校に転校したが、こちらはあまり「後輩が活躍しているから会おうよ」みたいな話にはならない。それなりに有名な人間としては、2017年、野球の世界一決定戦のWBC予選第一ラウンドのキューバ戦に関係した人物がいる。  といっても、侍ジャパンの選手がいたというわけではなく、山田哲人選手がライト方向に打ったホームラン性の打球を塀から手を出してキャッチした少年である。彼が腕をのばさなければホームランになっていただろうが、結局2塁打になったわけで、ネット上では非難囂々だった。この試合、日本が勝ったのでよかったものの、もしも負けていたらもっと激しい非難が彼に寄せられていただろう。 ワシが育てた  他には、2015年、イスラム国(ISIS)の影響を受けた中3の男子生徒が我が母校に忍び込んだ件もあった。敷地内で飼っていたヤギを殺し、人を殺す練習をしていたのだという。警官が近くをパトロールしていたため、バールで虐待されるヤギの鳴き声を聞き、ただごとではないと感じ敷地内に入り建造物侵入の疑いで逮捕した。この学校に侵入したということは、もしかしたら卒業生かもしれない。  無論、この2件をもって同級生が連絡を取り合い、同窓会を開くということにはならなかった。  だが、鷺沼小学校の場合はもしかしたら、2026年のサッカーW杯北中米大会の際に、同級生の実家の居酒屋でパブリックビューイングを開催する流れなども生まれるかもしれない。ハルコにしても、知り合いに今度声を掛けてみると言っていた。そうなったらなったで久々の再会は嬉しいことだし、ならなかったとしても、ハルコと一緒に鷺沼で試合観戦をしたら客同士盛り上がるはずだ。  オリンピックや大相撲の千秋楽では、親や兄弟も含めた地元の人々が公民館等に集って出身選手・力士の応援をする様子がテレビで中継される。当然、鷺沼でもそのようなことはあるだろう。  あそこまでの偉人を地元の公立小学校が輩出した場合、街の人々は勝手に「ワシが育てた」的気持ちになり、よりアツく応援したくなるのである。郷土愛・母校愛ってものはこうしたことからも生まれるものなのだ。 中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう) 1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。 デイリー新潮編集部

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