【エルサレム＝福島利之、テヘラン＝吉形祐司】イスラエルは、イランの核関連施設への攻撃のみならず、石油などエネルギー関連施設への攻撃を強めている。 　国家の基幹産業を攻撃し、イランの体制に揺さぶりをかけるのが狙いとみられるが、被害が甚大になれば世界経済への悪影響は必至だ。 　イスラエル軍は１４日、イランの複数の石油・ガス関連施設を攻撃した。首都テヘラン北西部と南部にある石油備蓄施設では、攻撃で火災が発生。イラン石油省によると、２、３基の貯蔵タンクに引火したが消火した。被害の程度は不明だ。 　ペルシャ湾にある大規模ガス田の精製施設は１４日、無人機の攻撃を受けて炎上し、一時的に操業停止となった。南部ブシェール州の精製施設も無人機の攻撃を受け火災が発生した。 　イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「イランの政権の全ての拠点を空爆する」と述べている。核施設への攻撃とともにエネルギー施設を攻撃するのは、経済を弱体化させ、イランの戦争を遂行する能力をそぐのが狙いとみられる。 　イスラエルの軍事筋からは、現段階の石油施設への攻撃は「限定的」で、イランがこれ以上、イスラエルへの報復攻撃を続けると本格的に攻撃するという「警告」だとの指摘も出ている。 　イランの石油の確認埋蔵量は世界有数で、今年度の国家予算の約３５％を占め、税収を上回る。２０１８年に米国が経済制裁を復活させた以降も、迂回（うかい）輸出し、生産量と石油輸出の収入はともに伸びている。イスラエルにとって、イラン経済の封じ込めに最も効果的なのが、石油関連施設の破壊であることは確かだ。 　イランも攻撃にただ沈黙しているわけではない。イラン国営放送は１４日、国会の反米・保守強硬派の重鎮エスマイル・コウサリ議員の話として、イランがホルムズ海峡の封鎖を真剣に検討していると報じた。 　ペルシャ湾の出入り口に位置するホルムズ海峡は、世界の石油関連製品の消費量の２０％が通過する石油輸出の大動脈で、封鎖されれば世界経済は大混乱に陥る。 　イスラエルの国家安全保障研究所ユバル・エイロン研究員は本紙の取材に、「イスラエルがイランの経済に打撃を与えるのは重要な選択肢だ」と言及した。