見るだけで楽しいフォードのコンセプトカー 50選(後編) 「明日」を託されたクルマたち

ギア・フォーカス(1992年) 欧州向けのハッチバック、フォーカスが発売される6年前に登場したギア・フォーカスは、名称こそ同じだが中身はまったく異なるモデルだ。ショートホイールベースのエスコートRSコスワースのプラットフォームをベースにした高性能四輪駆動ロードスターで、最高出力230psのターボチャージャー付き2.0Lエンジンを搭載していた。 【画像】これなら市販化もアリ? 発売してほしかったコンセプトカー【フォードFR100、ブロンコ・ボス、クーガー406、アレグロを詳しく見る】 全16枚 デザインの特徴は、古風なものから現代的なものまで多岐にわたる。ボディパネルはカーボンファイバー複合材で作られていたが、ステアリングホイールはレトロなウッドリムだった。 ギア・フォーカス(1992年) マスタング・マッハIII(1993年) フォードによると、マッハIIIは「1965年のマスタングの精神を、1990年代以降のスタイリングとテクノロジーで復活させた」モデルだ。最高出力450psのスーパーチャージャー付き4.6LモジュラーV8エンジンを搭載し、ウッドリムのステアリングホイールなど、クラシックなタッチも取り入れていたが、その形状は30年近く前のポニーカーよりもはるかに曲線的だった。 第4世代のマスタングの登場を間近に控えたタイミングだったが、「マッハIIIのスタイリングの特徴は、すぐに認識されるだろう」とフォードは述べていた。確かに若干の類似点はあったが、量産車のデザインはもっとシャープなエッジが特徴だった。 マスタング・マッハIII(1993年) ギア・アリオソ(1994年) 同年公開のヴィヴァーチェと同様、アリオソ(Arioso)もモンデオに搭載されていた 2.5Lの24バルブV6エンジンを流用したクーペだ。アリオソは2+2ではなく、ヴィヴァーチェよりも実用的な4シーターであった。 アルミニウム製スペースフレームをベースに、交換が容易な軽量カーボンファイバーパネルを採用。この構造により、サンルーフとリアウィンドウを後部ラゲッジコンパートメントに格納しても、車両の剛性を損なうことがなかったという。 ギア・アリオソ(1994年) アウトバック・ブロンコ(1994年) アウトバックは、2年前に発表されたブロンコ・ボスの後継モデルで、ボンネットが非常に似ている。その他、グリルガード、フロントフォグランプ、ウィンチ、サイドマフラー、オーバーフェンダーなどが特徴だった。 2年後、市販のブロンコは生産終了となり、2021年まで復活を待たなければならなくなった。アウトバック・ブロンコは、生産終了記念の特別仕様車として発売される可能性もあったが、実現はしなかった。 アウトバック・ブロンコ(1994年) マーキュリー・フュージョン(1995年) ブロンコDM-1を手掛けたコンセプト・センター・カリフォルニアが設計したフュージョンは、「小型スポーツ・ユーティリティ・ビークルのタフさとマーキュリーのラグジュアリーなイメージを融合させた」モデルだった。 その特徴の1つは、シート、インストゥルメントパネル、センターコンソールを支える鋼管フレームで、全体の構造剛性を高めていた。レザー張りの内装とクロームメッキのエクステリアトリムが、高級感を演出していた。 マーキュリー・フュージョン(1995年) ギア・サエッタ(1996年) フィエスタのプラットフォームをベースに1996年末に発売された小型ハッチバック、Ka(カー)は、フォード初のニューエッジデザインを採用した市販車だった。同年4月のトリノ・モーターショーでは、そのデザインを予告するサエッタというコンセプトカーが公開され、「空力性能を高めるためにすべての角を丸める必要がある、という神話を打ち破る」と語られていた。 サエッタのフロント部分はKaに非常によく似ていたが、ややレトロなテールデザインが市販車に反映されることはなかった。 ギア・サエッタ(1996年) Lynx(1996年) 同時期のサエッタと同様、Lynxはフィエスタのプラットフォームをベースにしていたが、ロードスターではなくクーペだった。フォード・カナダが発表したプレスリリースでは、「フォードが新しいコンセプトの探求とニッチ製品の研究に意欲的であることを明確に示すもの」と説明されていた。 実際、それ以上の意味があった。Lynxをどの角度(特に後方)から見ても、翌1997年のジュネーブ・モーターショーでデビューしたプーマの予告版であることは疑いようがない。 Lynx(1996年) レンジャー・サンドコート(1997年) ヘリテージ・ヴォールト以外の資料では『サンドコート』と呼ばれているこのコンセプトカーは、1998年モデルとして発売された3代目レンジャー・ピックアップトラックを改造したものだった。 プロモーション目的のモデルであることは明らかで、ハイチェア、パラソル、ドリンクキャビネットなど、非標準的な装備が多数採用されており、ビーチパトロールには役立つかもしれない。 レンジャー・サンドコート(1997年) マーキュリーMC4(1997年) MC4は大人4名と子供1名が乗れる、広々としたクーペだった。テールゲートに相当する部分はダブルガルウィングで、4枚の再サイドドアのうち前部は通常のものだが、後部は小型かつ後部ヒンジ式だった。前部のドアが閉まっていると、後部の2枚は開けることができなかった。 これに似たドア機構は後に、マツダ(当時フォードが3分の1を所有)がロータリーエンジン搭載のRX-8に採用した。 マーキュリーMC4(1997年) フォード・テックスポーツ・ウィンドスター(1998年) ヘリテージ・ヴォールトで2000年型『ウィンドスター・テックスポーツ』として紹介されているが、当時のプレスリリースでは『テックスポーツ・ウィンドスター』と呼ばれていた。初公開は1998年11月のSEMAだ。ミニバンの2代目ウィンドスターをベースにしつつ、外観はより空力性能に優れた、攻撃的なデザインになっていた。 しかし、革新的なのは車内だった。ビステオン社のハイテクなエンターテイメント機能と照明システムを採用し、フォードは「お子様連れの方には、右後部トリムパネルに組み込まれた充電式ハンディクリーナーが喜ばれるだろう」と述べている。 フォード・テックスポーツ・ウィンドスター(1998年) ブロンコU260(1999年) 5代目の生産終了から6代目の生産開始までの25年間、フォードはブロンコのコンセプトカーを作り続けていた。U260はほぼ直方体の形状を持ち、2021年に発売された現行型のブロンコと驚くほど似ている。 同年、ツートンカラーから赤一色に変更され、フロントエンドも若干改良されて、初めて一般公開された。 ブロンコU260(1999年) MYマーキュリー(1999年) このコンセプトカーは、ヘリテージ・ヴォールトでは『MY』と大文字で表記されているが、当時のプレスリリースでは『my』と小文字表記となっている。「乗用車、トラック、スポーツ・ユーティリティ・ビークルの境界線を曖昧にする」ものだという。 ドアの配置は、少し前のマーキュリーMC4と類似しており、テールゲートの上部(リアサイドウィンドウを含む)は上方に持ち上がり、下部は後方に延長され、後部座席を折りたたむと荷室長が6フィートを超える設計になっていた。 MYマーキュリー(1999年) デザート・エクスカージョン(2000年) 大型SUVのエクスカージョンをベースにしたデザート・コンセプトは、「最も過酷な天候や地形に対応するようにカスタマイズ」され、「どこへでも行ける、何でもできる究極のトラック」と表現された。 通常のエクスカージョンと同じプラットフォームに、最高出力310psの6.8LトライトンV10エンジンを搭載。フロントエンドは独自のデザインで、6人が乗れる広々としたインテリアは、耐候性にも優れていると言われた。 デザート・エクスカージョン(2000年) エクエイター(2000年) エクエイターは、F-150ピックアップトラックをベースにした究極のオフロードコンセプトカーだ。「オフロードレースの影響を受けた独立懸架式サスペンション」を採用し、バンパー、フェンダー、ホイールハウス、下部のトリムパネルはケブラー製だった。 2005年9月、フォードは米国南東部を襲ったハリケーン・リタの被災者支援のため、エクエイターをオークションに出品し、赤十字社に募金すると発表した。 エクエイター(2000年) プロディジーHEV(2000年) プロディジー(Prodigy)は、21 世紀のクリーンで低燃費なクルマの開発を目指すフォードの研究プロジェクト『P2000』の一環として製作された。そのアルミボディは5人の乗員を乗せるのに十分な大きさで、ハイブリッド・パワートレインは1.2Lの4気筒ターボディーゼルエンジンと電気モーターで構成されていた。 このコンセプトカーは、他の2台のP2000シリーズ・コンセプトカー(セダンと水素燃料電池搭載SUV)とともにジュネーブ・モーターショーで公開された。 プロディジーHEV(2000年) F-150ライトニングロッド(2001年) 2001年2月のシカゴ・モーターショーで発表されたライトニングロッドは、10代目F-150をベースに、同シリーズに搭載されていた最高出力380psのスーパーチャージャー付き5.4LトライトンV8エンジンを採用。車高を下げ、全長を伸ばし、カスタムカーのような外観に仕上げられた。 ボディとインテリアはチェリーレッドを基調とし、マオリ族のタトゥーからインスパイアされたグラフィックが施されていた。前後のライトはネオン管に置き換えられた。 F-150ライトニングロッド(2001年) フォーティーナイン(2001年) その名前が示す通り、「米国をセンチメンタルなドラッグレースの思い出の旅に誘う」ことをコンセプトとし、第二次世界大戦後に初めて発売されたフォードの1949年モデルシリーズから着想を得た。2001年のデトロイトで開催された北米国際モーターショーで初公開され、モダンでありながら、半世紀以上も前のクルマを彷彿とさせるスタイリングが特徴だった。 同時代の最終世代モデルであるサンダーバードと同様、このコンセプトカーも「その外観とパワーにふさわしい」3.9L AJ-V8エンジン(ジャガーが設計したが、フォードとリンカーンだけが採用)を搭載していた。 フォーティーナイン(2001年) サンダーバード・スポーツ・ロードスター(2001年) 1962年と1963年のモデルイヤーにおいて、フォードは3代目サンダーバードのスポーツ・ロードスターというバージョンを発売した。このモデルは後部座席を隠すトノカバーを備え、前席乗員の後ろにそれぞれ1つずつ、隆起したセクションを特徴としていた。 それから約50年、フォードは2001年モデルのサンダーバードで同じようなコンセプトカーを作り、赤いエナメル塗装と白いレザーのインテリアを採用した。しかし、市販車には導入されなかった。 サンダーバード・スポーツ・ロードスター(2001年) FR100(2002年) 写真は、FR100として知られる2台のコンセプトカーのうちの1台。どちらも、Fシリーズの第2世代がデビューした1953年のF-100ピックアップトラックを改造したものだ。 多くの抜本的な変更が加えられ、当時新しかった5.0LキャマーV8エンジンが搭載された。このエンジンはモジュラーユニットの派生型で、2005年にクレートエンジンとして発売された。 FR100(2002年) マイティF-350トンカ(2002年) 有名な玩具ブランドにちなんで名付けられたこのコンセプトカーは、フォードにとって技術革新を表現するものだった。最高出力300psのターボチャージャー付き6.0L V8ディーゼルエンジンを、同社として初めてオートマチック・トランスミッションと組み合わせたのだ。 また、ドアを開けると車高が5インチ自動的に低下するエアサスペンションも搭載され、乗降や荷物の積み下ろしを容易にする。 マイティF-350トンカ(2002年) モデルU(2003年) フォードがモデルUを「21世紀のモデルT」と称したのはやや大袈裟なことだったが、このコンセプトカーは確かに先駆的で、多機能なインテリアとボディパネル、アダプティブヘッドライト、ナイトビジョンディスプレイ、音声インターフェースを備えていた。 エンジンは、スーパーチャージャーと2段インタークーラーを備えた2.3Lの水素燃焼4気筒エンジンだった。出力は118psと控えめだが、このコンセプトカーのモジュラーハイブリッド・トランスミッションシステム(フライホイール、スターターオルタネーター、電気モーターの役割を兼ねる)により、連続使用で33ps、短時間で46psの出力を追加することができた。 モデルU(2003年) フォーカス(2004年) 自動車市場として中国が急速に重要性を増していることを示す出来事の1つに、フォードが2004年6月の北京モーターショーで、第2世代のフォーカスを世界初公開したことが挙げられる。ハッチバックとステーションワゴンの2種類が販売される予定だったが、北京ではこの地域で最も人気のある4ドア・セダン版が公開された。 フォードはこれを『フォーカス・コンセプト』と名付けたため、この記事で取り上げているが、間もなく生産が開始されたことから、市販バージョンに非常に近いものだったと考えられる。 フォーカス(2004年) イオシスX(2006年) 2006年9月のパリ・モーターショーで初公開された際、AUTOCAR英国編集部はイオシスXについて「ステロイドを注射したプーマ」のようで、「かなりファンキーだ」と表現した。これは英国式のポジティブな意味合いの英語表現で、米国式の否定的な意味ではない。 フォードは、このコンセプトカーは「約1年6か月後にコンパクトクロスオーバー市場に参入する」という強いメッセージを意図したものだと述べており、実際、その通りになった。市販バージョンは2008年に発売されたクーガだ。 イオシスX(2006年) スタート(2010年) フォードは、「将来の小型車の実現可能性を探求したデザイン」であるスタート・コンセプトを北京モーターショーで公開し、大きな話題を呼んだ。しかし、デザイナーのクリス・スベンソン氏(1965-2018)は5年後に、このコンセプトを市販化するにはコストがかかりすぎるため、実現は困難だと認めた。 しかし、ある意味でスタートは生き続けている。1.0L 3気筒の『エコブースト』ターボエンジンを搭載した最初のフォード車であり、このエンジンはフィエスタやトランジット・クーリエなどのさまざまなモデルに採用され、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーで総合優勝またはカテゴリー優勝を10回も獲得している。 スタート(2010年) Vertrek(2011年) フォードのグローバルCセグメント・プラットフォームをベースにしたVertrekは、欧州と北米で生産されている既存モデルを統合する「素晴らしい機会」として2011年に発表されたコンパクトSUVだ。 その後、市販化に向けた改良を経て、2代目クーガと3代目エスケープとしてそれぞれの市場で発売された。このプロセスは、2019年の両車のモデルチェンジの際にも継続された。 Vertrek(2011年) マスタング・コブラ・ジェット・ツインターボ(2012年) カスタマー向けドラッグレース用車両、マスタング・コブラ・ジェットが2008年に復活し、2011年には5.0L V8エンジンを搭載したモデルが発売された。その後、スーパーチャージャー付きと自然吸気式の2種類が販売されることになったが、2012年のSEMAショーでは、これまでとはまったく異なるモデルが登場した。エンジンは同じだが、2基の小型ターボチャージャーを使用しており、単一の大型ターボチャージャーよりも素早く回転し、かつ十分なブーストを発生させた。 アイデアとしては良かったが、結局のところ何も成果は得られなかった。このコンセプトカーが消えた後、フォードはドラッグレーサー向けの過給機としてスーパーチャージャーにこだわり続けた。 マスタング・コブラ・ジェット・ツインターボ(2012年) (翻訳者追記:この記事で参照したフォードの公式サイト、『フォード・ヘリテージ・ヴォールト(Ford Heritage Vault)』には同社の市販車やコンセプトカーの画像、当時の資料などが数多く掲載されています。興味のある方はぜひ同サイトを訪れてみてください)

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