華麗なる「二世MC」《小泉孝太郎、長嶋一茂、石原良純ら》がバラエティー番組を席巻し続ける「必然の理由」

バラエティMCを席巻する二世たち ミスタープロ野球・長嶋茂雄の訃報には、多くの有名人が哀悼の思いを口にした。なかでも目立っていたのが、小泉進次郎農林水産大臣のコメントだ。 「巨人の試合は父に連れられて何度も試合を見に行った。長嶋監督の時の試合もありました」 と、元・野球少年ならではの気持ちを吐露し、コメ問題による注目もあいまって、その映像があちこちで放送された。 コメントのなかに出てくる「父」が小泉純一郎・元首相であることはいうまでもない。コメ問題をめぐる対応で、進次郎がわりと支持されているのは「純一郎の息子」だというブランド性も関係しているのではないか。その言動に長期政権を築いた父と似たものを感じ、親しみや安心感を抱くという人が少なくないように思う。 とまあ、前置きが長くなったが、最近はテレビのバラエティー番組などにおいても、こうした「進次郎現象」のようなことが起きている。二世有名人がMCとして成功しやすくなっているのだ。 もうひとりの「純一郎の息子」小泉孝太郎もそうだし「長嶋茂雄の息子」である長嶋一茂はそれ以上の活躍ぶり。一茂の妹・長島三奈もテレビ朝日の記者時代『熱闘甲子園』のキャスターも務めて、人気を博した。また『ザワつく!金曜日』(テレビ朝日系)で一茂と一緒にMCをしている石原良純は、石原慎太郎の息子だ。叔父は昭和の大スター・石原裕次郎である。 そんな「二世MC」が成功する理由は、それほど謎ではない。親を知る世代に親しまれやすいこと、目立つことに慣れていて、年下はもとより、同世代にもある意味「上から」的に接することができること。これは中高年の視聴者に依存しつつ、若者も取り込みたいテレビ界にとって、好都合だ。 また、基本的にお坊ちゃまお嬢さまなので、キャラは天然っぽくマイペース。ときに暴走もするが、そこを育ちのよさでカバーできたりもする。 高学歴で、遊びも勉強も器用にこなす その二世MCの先駆けでレジェンドというべき存在が、関口宏だ。名優・佐野周二の息子として、役者業から出発したが、やがて司会業が本職となった。 若い頃、トーク番組『スター千一夜』(フジテレビ系)で各界のゲストをさばいたのを手始めに『クイズ100人に聞きました』(TBS系)『知ってるつもり⁈』(日本テレビ系)などのバラエティー番組をいくつもヒットさせ、報道番組『サンデーモーニング』(TBS系)でも長年MCを担当した。芸風はかなり違うとはいえ、長嶋一茂と同じ立教大出身というのも興味深いところだ。 ちなみに、石原良純は幼稚舎からの慶應ボーイ。そう、二世有名人には高学歴の人が多く、それも私大出身者が目立つ。勉強も遊びもそれなりにこなしてきて、そこがバラエティー番組や情報番組の仕切りにもプラスになっているのだろう。 徳光和夫の息子・徳光正行(日大)や甥のミッツ・マングローブ(慶大)がMCで結果を出せたのは、そのあたりも大きいといえる。 逸見政孝の息子・逸見太郎もまたしかり。米国の大学に留学中、父が急死して、卒業後に芸能界入りしたものの、しばらくは苦戦していた。父の親友だった北野武(ビートたけし)の映画でデビューしたが、役者としては振るわず『5時に夢中!』(TOKYO MX)のMCとしてようやく居場所を得た。 名コンビだった林家こぶ平とヒロミ 一方、家業の関係で大学に進まなかった芸能人の場合、そのぶん、芸事に早くから親しみ、いわば、芸能を通して世の中を学んできたケースが多い。たとえば、九代目の林家正蔵だ。 祖父は名人と謳われた七代目・林家正蔵で、父は「昭和の爆笑王」初代・林家三平。師匠でもあった三平が入門からわずか二年後に亡くなったこともあり、落語家として評価されるのは遅かったが、バラエティー番組でまず認められた。 本名の海老名泰孝で出演した『テレビ探偵団』(TBS系)でのコメンテーター役を経て、子供向け料理番組『モグモグGOMBO』(日本テレビ系)の司会をヒロミとともに担当。さらに、東海地区の長寿番組『天才クイズ』(CBC)で4代目の司会も務めた。 筆者は1990年代初めに当時「林家こぶ平」だった彼を取材、これが二世有名人というものを知るうえで貴重な経験となった。場所は都内・根岸にある、林家一門の拠点ともなってきた海老名邸。カメラマンは三平も撮ってきたベテランで、こぶ平になつかれていた。 トークでは趣味のジャズ鑑賞について、膨大なレコードコレクションの話も飛び出し、実家の太さを実感させられたものだ。それが嫌味にならないおっとりとした人柄に触れ、なるほど育ちのよさとはこういうものかと思ったりした。 その取材の翌年くらいに『モグモグGOMBO』が始まり、ヒロミにいじられるこぶ平という構図がウケた。ただ、林家一門のあいだでは「泰孝坊ちゃんに対してあの態度はなんだ」という声が飛んだようだ。 とはいえ、ヒロミとの共演こそ、二世MCならではの深い味を出すものだった。対照的な「たたき上げ」的有名人と組むとき、その魅力がさらに増すからだ。 「たたき上げ×二世」の相性の良さは鉄板 それこそ『ザワつく!金曜日』では一茂と良純に対し、高嶋ちさ子がいじる構図になっている。高嶋もまた、高島忠夫ファミリーと親戚だったりするが、父は音楽業界の人で表に出る立場ではなかった。それゆえ、たたき上げ的スタンスを存分に活かしているように思う。 また、一茂の才能を最初に引き出した人といえば、明石家さんまだ。野球選手時代から「一茂のキャラがテレビで欲しかった」としてラブコールを送り、引退後は自分の番組の常連として重用。ときに煽り、ときには制御もしながら、そのキャラを笑いに変えてきた。一茂は2022年に出演したトーク番組で、 「今こうやってしゃべれているのも、さんまさんのおかげ。きっかけがなかったらたぶん、ここにはいない」 と、振り返っている。 14年に起きた、自宅の壁に「バカ息子」と落書きされた騒動についても「さんまさんが犯人かと思った」というジョークを口にしている。自分を「バカ息子」と呼ぶのはさんまくらいしかいない、とのことだった。そうやっていじってくれるたたき上げ芸能人が、二世の活躍には重要なのだ。 良純にとっては、今年引退した中居正広がそれにあたる。『中井正広のブラックバラエティ』(日本テレビ系)で「まゆ毛」呼ばわりされるなどして、いじられキャラが開花。良純ものちにトーク番組で、中居への感謝を明かしている。 作家の阿川弘之を父に持ち『聞く力—心をひらく35のヒント』という本を書くなど、トークの名手として知られる阿川佐和子についても、そこにいたるまでにはたたきあげ芸能人のサポートがあった。『TVタックル』(テレビ朝日系)で長年共演しているビートたけしだ。もっとも、彼女の大物政治家にも臆さないお嬢さま的な真っ直ぐさと度胸をたけしが利用したともいえる。 阿川がメインMCの『日曜マイチョイス』(テレビ朝日系)では、ずんの飯尾和樹が進行役を担当。やはり、二世とたたき上げの組み合わせは鉄板のようだ。 組み合わせの妙が、思わぬ化学変化に 小泉孝太郎にも、たたき上げの「相棒」がいる。最近はヒロミとも組んでいるが、それ以上にくされ縁的な面白さを感じさせるのがムロツヨシだ。『小泉孝太郎&ムロツヨシ 自由気ままに2人旅』(フジテレビ系)という旅番組を定期的にやっている。 ムロは無名時代に年下ながら有名人だった孝太郎と共演して、小泉家に出入りするほど積極的に接近。純一郎のエピソードをバラエティー番組でネタにするなどしてきた。 NHKの大河ドラマ『どうする家康』で演じた木下藤吉郎(豊臣秀吉)のような抜け目のなさだが、お坊ちゃまでのんびりタイプの孝太郎とはウマが合ったのだろう。 変わったところでは『ハマスカ放送部』(テレビ朝日系)のハマ・オカモトと齋藤飛鳥という組み合わせもある。ハマの本業はミュージシャンだが、父・浜田雅功ゆずりのカンのよさで、番組に独特の雰囲気をかもしだし、齋藤飛鳥のアイドルっぽくない魅力も引き出している。本業でなくても、意外とこなせたりするのが二世MCの不思議なところだ。 なお『NHK紅白歌合戦』や『輝く!日本レコード大賞』(TBS系)のような国民的特番でも、堺正章や加山雄三といった二世芸能人が司会を務めている。加山くらい天然キャラだと「仮面ライダー!」のような珍プレーもやってしまうわけだが、堺は常にソツなく、大舞台を回してきた。 芸能活動後半の代表作は『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)。くりぃむしちゅーと組むことで、好々爺っぽい渋さが生まれ、MC寿命が延びたともいえる。二世とたたき上げの組み合わせは、さまざまな化学変化をもたらすわけだ。 今後も二世MCは重宝されていくのではないか。誰が次の成功者となるのか、あるいは、どんなたたき上げとの組み合わせが見られるのか、楽しみにしたい。 ・・・・・・ 【もっと読む】『永野芽郁と芳根京子の明暗はここから…?「朝ドラ」は「ヒロイン以外」でデビューするに限るワケ』 【こちらも読む】永野芽郁と芳根京子の明暗はここから…?「朝ドラ」は「ヒロイン以外」でデビューするに限るワケ

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