この4年半、佐賀県唐津市に住み、釣りが日常と化す人生を送るようになりまして、気付いたのが「意外とウマいもの」の多さです。 【写真を見る】「魚の舌」以外にも… これまで捨てられていた「意外とおいしい食べ物」とは? 物価が上がり続ける昨今、これまで捨てていた魚介類や野菜の部位もいっそ食べないと、生活が防衛できない。だからおススメです。 まず魚の舌。マグロやタイのようなデカい魚の頬肉やカマ肉は“よく運動している部位だからウマい”というのはよく知られますが、舌もナイスです。相当筋肉質で、塩焼きにするか煮付けで調理する。これは美味な希少部位になります。あと、火を通した魚の中骨を手で真っ二つに割ると骨髄が出てきます。これを指でビローンと取り出して食すと珍味的ウマさです。 「魚の舌」は実はウマい 同様に、イカの「トンビ(くちばし)」は鋭い歯ですが、コレを囲う肉が素晴らしい。イカ肉の究極の筋肉質部位です。イカの本場・唐津の呼子(よぶこ)の朝市で、このトンビだけが50個ほど入ったパックを500円で購入したことがあります。バター醤油炒めが最適です。 この前、イカ釣り船に乗った後でサバいて仰天したのがイカの内臓です。漫画「美味しんぼ」では、旬を外したカラスミよりもイカの肝の塩辛の方がウマい、という作者の考えを取り上げた回があります。だから肝臓のウマさについてはある程度認知されているところ、誰もが胃や腸は捨てるものと考えている。しかし、どんな内臓も、生姜・醤油・みりん・料理酒と共に煮たらコレが絶品に! 野菜に目を向けると、セリの根っこのウマさは有名ですが、大根の葉、キャベツの外側の一枚、ブロッコリーの芯なんかも火を通せばOK。バジルやパセリを買った際は葉だけを使うことが多いものの、固い茎も使い勝手がいい。ジェノベーゼソースに使えるので。 固い茎も(当然葉まで入れますが)ミキサーにかければおいしいソースになってくれます。入れるものは塩・オリーブ油・松の実・ニンニク。松の実がなければカシューナッツでも代替可。これでパスタだけでなく、ピザやトーストがグンとウマくなる。 エビの頭と殻、カニの殻も使い勝手良しです。 何しろダシがすさまじく強く出るのですよ。手巻きずし用に甘エビを買ってきて、その残った殻をみそ汁のダシに使うと完璧にエビ風味のみそ汁になります。このダシ汁は、インスタント袋麺のベースの味にしてもいいくらいかと。 かくて現在は、少しでも食材を大事にしなくてはいけない昭和初期〜中期のような状況になっております。だから本来は捨てるはずだった食材、ぜひご活用を。 ちなみにこれは半信半疑で聞いていただきたいのですが、小学校4年生の時、足に合わない運動靴を履いたところ、足の裏に大量のウオノメができた際の話。サリチル酸で溶かすとうたうパッドを貼ったりしましたが、どうにも治らない。 そこで皮膚科に行ったら、酔っ払った医師の爺さんが「ナスのヘタを切り取って1日2回、切断面をウオノメにゴシゴシしてそのエキスを移せ」と言いました。これが仰天! 2週間でウオノメは消え失せたのです。ナスのヘタのおかげかどうかは知りません。 ただしその間、我が家は2日に1回、マーボーナスを食べる結果となりました。 中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう) 1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』など。 まんきつ 1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。 「週刊新潮」2025年6月12日号 掲載