スバル「クロストレック」水平対向エンジンの魅力増すストロングハイブリッド搭載

 SUBARU(スバル)のスポーツ用多目的車(SUV)「クロストレック」に試乗した。  昨年12月に発売された同社初となる本格的なハイブリッドシステムを搭載したクルマで、スバル独自の水平対向エンジンと組み合わせたハイブリッド車(HV)になる。スタイルは車高を抑えたクロスオーバーSUVだ。  クロストレックは「インプレッサ」の派生モデルとして登場した「XV」が前身で、2022年に北米市場で使用していたクロストレックに名称が統一された。XVを含めた累計販売台数は約238万台に上る。特に北米で人気の車種で、24年の同地での販売台数は18万1811台と、同社の全モデルの中で最多だった。ストロングハイブリッドと名付けられたHVモデルは、従来のクロストレックのラインアップに最上級グレードとして追加されている。 モーター走行時間が増えて静かな室内、燃費は2割向上  実際に運転してみる。発進時が従来より力強くなり、加速時もアクセルの踏み込みに応じてスムーズに加速していく。従来のクロストレックはマイルドハイブリッドを搭載していて、発進時はEV走行、加速時にはモーターによるアシスト走行が加わる。ストロングハイブリッドではモーターによる長距離走行も可能となり、静かな室内という時間が大幅に増えている。走行状況に応じてモーターとエンジンを使い分けることで、燃費は約2割も向上している。燃料タンクの容量も30%増となり、長距離ドライブ時でも不安はほぼない水準になっている。  悪路での試乗まではしていないが、四輪駆動のため、高速での車線変更なども安定していた。さらに高度運転支援システム「アイサイトX(エックス)」も搭載している。特に渋滞時のハンズオフアシスト機能は便利で、一定速度以下の渋滞時にはハンドルから手を、アクセルから足を離しても前走車に追従していく。渋滞時の疲れが大幅に減るという実感があった。 トヨタの技術を活用し、スバルならではのクルマに  このクルマは、トヨタ自動車の「プリウス」に代表されるシリーズ・パラレル方式のハイブリッドを採用している。資本提携したトヨタの技術を活用し、新開発の2・5リッターの水平対向エンジンにストロングハイブリッド専用のトランスアクスルを組み合わせた。トランスアクスルは駆動用と発電用の二つのモーターを制御して、モーター駆動をメインとしながら、モーターが苦手な領域になるとエンジン駆動でカバーする調整などを担っている。  ご存じ、水平対向エンジンはスバルの特徴的な技術である。エンジンには直列、V型などもあり、これらがシリンダー(気筒)を縦方向に並べるのに対し、水平対向は横方向に並べる。横方向にすることで、エンジンを車体下部に置いて重心を低くできるとともに、表面積が大きくなって空冷に適しているなどのメリットがある。  一方、横方向に幅をとるためクルマが大型化する、部品点数増によるコスト高や燃費が良いとはいえないといったデメリットもあった。このデメリットが、水平対向エンジンを市販車に採用していたのがスバル、ドイツのポルシェの2社に限られてきた理由だ。 燃費の改善で購買層が拡大する可能性も  だが、中国の電気自動車(EV)大手BYDが4月の「上海モーターショー2025」で自社開発した水平対向エンジンを公開したほか、他の中国メーカーも同エンジンの開発を明らかにするなど今後採用する自動車メーカーは増えそう。EVは電池を車体下部に敷き詰めるため車高が高くなりがちだが、プラグインハイブリッド車(PHV)などで水平対向エンジンを採用した場合、車高を抑えられるのが魅力的なようだ。  クロストレックに話を戻そう。ストロングハイブリッドの搭載により、デメリットのひとつ、燃費が改善されることになったのは大きい。低重心による走行安定性などに定評がある水平対向エンジンだけに、今後購入の候補に加えたいという人は増えるのではないか。  トヨタのハイブリッド技術を活用した第1弾ながら、随所にスバルらしい技術も垣間見える。スバルは今後、ストロングハイブリッドを搭載した車種を増やしていく考えだ。4月には新型「フォレスター」(SUV)でもストロングハイブリッド搭載モデルを発表している。スバルらしいHVがどのように進化していくのか、今後が楽しみである。(デジタル編集部 松崎恵三) 【仕様・主要諸元】 (試乗したグレード「プレミアムS:HEV EX」)  ▼全長・全幅・全高(ミリ) 4480・1800・1575  ▼総排気量(L) 2.498  ▼燃費 WLTCモード(キロ/リットル) 18・9  ▼価格 405・35万円(オプションは除く)

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