宗像大社（福岡県宗像市）などは１０日、世界遺産・沖ノ島で出土した古墳時代（６世紀後半〜７世紀初頭）の鉄矛の鞘（さや）（長さ３０・５センチ、国宝）をＸ線撮影したところ、内部の矛全面に鳳凰（ほうおう）などをかたどった豪華な文様を確認したと発表した。 刻んだ模様に金をはめ込んだとみられる象嵌（ぞうがん）の技法が用いられており、島内で営まれた国家的祭祀（さいし）の奉納品と考えられる。 鞘は１９５４年の発掘調査の際、巨岩の陰で見つかった。表面に金メッキが施された高級品で、さびた矛と一体化しており、内部の状態は分からなかった。元興寺文化財研究所（奈良市）がＸ線ＣＴ撮影や蛍光Ｘ線分析を行い、細密な鳳凰や唐草の文様を確認、象嵌の金属は金の可能性が高いとした。 沖ノ島は玄界灘に浮かぶ孤島で、宗像大社の境内の一部。ヤマト王権が朝鮮半島との交流に向け、航海安全などの祈りをささげた祭祀遺跡（４〜９世紀頃）が残る。今回の矛鞘など、出土した奉納品約８万点は国宝に指定されている。調査した奈良県立橿原（かしはら）考古学研究所（奈良県橿原市）の水野敏典・資料課長は「当時の東アジアの鞘、矛で最高峰といえる優品。ヤマト王権が沖ノ島の祭祀をいかに重要視していたかを改めて示す発見だ」と話している。
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