再生エネルギーは空気を汚さず、自然と共生できる。一見、理想的なエネルギーにみえるのだが……

再エネの話には夢がある。空気は汚れないし、自然と共生できる。おまけに石炭などの資源を使わないのでタダだ思われている。まさに理想的なエネルギーのようだが、その実態を探っていくとおぞましい未来が見えてくる。 フランスは原発と再エネの両立を目指してエネルギー政策を進めている。一方、ドイツは資源が乏しいのに、再エネ100%を目指し「脱原発」にまっしぐらだ。 資源の乏しい日本が目指すのはフランス? それともドイツ? ボーン・上田記念国際記者賞を受賞されたフランス在住のジャーナリストの山口昌子氏と、40年以上ドイツで暮らし、再生可能エネルギーについて考察した著書を数多く出版している作家・川口マーン惠美氏が、「原発と再エネ問題」について熱く語り合う。 ※本記事は、『 原子力はいる? いらない? 』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。 原子力と再エネの両立を目指すフランス 山口昌子(以下、山口):日本では環境相の地位が低いことを小泉進次郎氏が環境相当時に嘆いていましたが、フランスでは一時は最重要ポストでした。2007年の大統領選で有力候補として出馬が取り沙汰された環境活動家のニコラ・ユロが、出馬断念と引き換えに、右派の公認候補サルコジや社会党の公認候補のセゴネール・ロワイヤルら有力候補者5人と、「大統領に当選した暁には環境相を首相に次ぐ内閣ナンバー2の地位にする」という協定を結びました。 サルコジが当選し、協定に従って元首相の大物政治家アラン・ジュペを環境エネルギー相に任命し、首相に次ぐ内閣2位の地位でしかも国務相の資格も与えました。ところがジュペは「才あって徳なし」の典型。秀才で力量もあるのですが、選挙に弱く、大統領選直後に実施された国民議会選挙で落選。 その結果、1カ月足らずで辞任したのですが、内閣序列3位のボルロー経済相が横滑りで就任しました。以来、環境相の地位は高くなりました。ユロも第一次マクロン政権(2017〜2022年)で入閣したときは内閣ナンバー3の序列で、国務相でしたので、思い切った環境政策が実施できました。 周辺住民が「環境破壊」「(近くに飛行場ありで)不必要」を叫んで反対していた飛行場の設営を反故(ほご)にするなど環境整備に務めましたが、反対していた狩猟団体の会費値上げ問題がらみで就任2年足らずで突如、辞任しました。 再エネへの批判はいろいろあると思いますが、イデオロギーや政治問題がらみではなく、純粋に環境問題として取り上げて論じる必要があると思います。温暖化の問題も純粋に科学的問題として、その原因を探り、対策する必要があると思います。 実際問題として、世界各地で発生している気象変動を直視する必要があると。私は決して左翼ではないことを断っておきますが、環境問題は今や、一種の文明度のバロメーターといえるかもしれませんね。政府や国民がもっと真剣に早急に取り組むべき現実問題として「環境問題」を直視するべきだと思います。この数年、世界各地で発生している地球温暖化が原因とみられる自然災害に目を向けるべきだと思います。 再生エネルギーは「高いアイスクリーム」だ! 川口マーン惠美(以下、川口):再エネの話は夢があって、しかも理想的です。だから語るほうも聞くほうも楽しい。皆が夢中になったのは、それはそれでわかります。 空気は汚れないし、自然と共生できる。おまけにタダだとみんな思っている。そういえば以前、緑の党も、「エネルギー転換は、ドイツ国民にとって月々アイスクリーム1個分ぐらいの負担にしかなりません」と言っていたものですが、高いアイスクリームです。 再エネは、いつか主流になっていくと思います。でも、産業あってのことですから、今のドイツのように、産業を潰して脱炭素をしても何の意味もありません。慎重に、バランスのとれたエネルギー転換が必要です。資源の乏しい日本では、再エネが原子力に取って代わるのは無理があり、結局、LNGや石炭への依存が増えます。ドイツも資源が乏しいのに、再エネ100%を目指していますが、だったら、産業国をやめますか? という選択肢になってしまうのです。 山口:農業国フランスでは10年前には見られなかった現象、つまり6カ月分の雨が1週間ぐらいの間に降り、水浸しで農作物が全滅。農作物や牛などが洪水で流されていきました。2003年の夏の酷暑で1万5000人以上が亡くなって以来、それまで必要でなかったクーラーがパリでは必需品になりました。 これまでフランスではなかった竜巻の発生や南極で氷河が溶け出すなど様々な気象変動をみていると、やはり地球が狂ってきているとしか思えないですね。単純で幼稚な楽天的な考えかもしれませんが、チリも積もれば山となるで、できること、たとえばレジ袋の廃止などから始める以外ないかな、と思いますね。 川口:原子力大国でありながら再エネの推進もするフランスには、見習うべき点は多いと思います。でも、レジ袋やプラスティック容器を駆逐しても、それで地球温暖化が治まって災害が減るわけではありません。それに、レジ袋が道路を舞ったり、海に漂っているというのは日本でのことではありません。そもそも、災害が増えているのであれば、政治が危急にしなくてはいけないのは防災、つまり国土の強靭化でしょう。日本は地震対策に関しては、極力頑張ってきたと思います。でも、その他はというと……、よくわかりません。ドイツに至っては、治水もインフラ整備も完全におろそかにしていると感じます。だから毎年洪水が起こっていますが、それを温暖化のせいにしておしまい。本末転倒です。 再エネ事業の裏で蠢(うごめ)く中国企業 川口:それはそうと、日本にしろ、ドイツにしろ、再エネ推進における最大の懸念は中国ではないでしょうか。しかしこれは、再エネがあまりにも神聖視されているせいで見逃されがちです。 太陽光パネルの生産量の国内シェアにおける国産の割合は2022年にとうとう10%を切り、90%を海外、つまり中国に委ねています(「エネルギー白書2024」)。ドイツはもっと多いかもしれない。 太陽光パネルだけではありません。日本政府は洋上風力発電事業を推進していますが、日本製は今やゼロで、これも中国企業や中国製品に頼っているのです。要するに化石燃料における中東依存と同じく、再エネは中国依存に驀進中だということです。みすみす中国に首根っこを押さえられにいくようなもので、これはエネルギーの自立とは真逆の選択です。 しかも、これでは中国に安全保障上重要な通信情報を抜き取られる恐れがある。登記をする必要がなく土地を自由に利用できる「地上権」というのがあります。これを隠れ蓑に、中国のメガソーラー事業者が自衛隊の通信を傍受することだって十分ありえます。 また、洋上風力のほうも、発電事業者に風力や海流など安全保障上重要な情報をとられる状況を、みずからつくりだしています。2024年の秋、レバノンで「ポケベル」が次々に爆発して、死者が出たじゃないですか。コンピューターで制御されている機器には、何が仕込まれているかわかりません。 再生可能エネルギーに関する内閣府の会議の資料に、「中国電網公司」のロゴが入っていたことが判明したのが2024年3月です。中国の国営企業ですよ! C.ドヌーヴも吃驚! いまやシェルブールの名物は「雨傘」ではなくプルトニウム!?

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