[陸奥讃歩 私とみちのく潮風トレイル]今の風景に震災時の光景と昔の景色が重なる…認定NPO法人みちのくトレイルクラブ代表理事 佐々木豊志さん 68

 2015年の春。  「震災復興のひとつであるみちのく潮風トレイル、約750キロ・メートル(当初の想定)を実際に歩き、沿線の自治体等の関係機関にヒアリングをして、トレイルの維持管理・利用促進をする仕組みを作るために協力してほしい」と環境省から依頼があった。  同省の担当課長から「復興のために」と強く依願され、東北で生まれ育った自分の思いとも重なり引き受けた。栗駒山中でくりこま高原自然学校を経営している私にルートを実際に歩いて、課題の解決を求めているものだった。  父親の転勤で岩手、宮城両県を何度も引っ越し、転校を繰り返した私にとって「みちのく潮風トレイル」の沿線上には、強烈な記憶と思いが強く残る地点がたくさんある。  福島県新地町の釣師浜は、叔母が釣師浜の漁師に嫁いだので、海に行くのが楽しみだった。海と戯れ、海のごちそうをたらふく食べ、笑い声が絶えない浜の叔母の家だった。あの釣師浜の家並みが消えた。  宮城県気仙沼市の大谷海岸は、幼稚園年長の時に気仙沼に住んでいたので、字が読めるようになった幼児の私は、当時の気仙沼線の終点の本吉駅で、「も・とよし」と読み、自分の駅のように思っていた。この海岸には夏の期間にテント村が出現し、キャンプを楽しんだ場所でもある。今でも大谷海岸の広い砂浜が脳裏に浮かぶ。  そして岩手県洋野町の種市海岸は、たくさん思い出があるみちのく潮風トレイル沿線の中で、私にとって唯一つらく悲しい場所である。中学3年の時に種市海岸でキャンプをした。その時にこの海で同級生を亡くした。土用波だった。友達が逝ってしまった。当時のキャンプ場はもうない。  みちのく潮風トレイルの沿線は整えられ、震災直後の風景の記憶もなくなってきているかもしれない。初めて訪れる人には、当時の惨状が想像もつかないかもしれない。  しかし、私の記憶の中には、今の風景に震災時の光景と、昔の景色が重なり、そこにあった町並み、そこにいた人たちが、今も鮮明に残っている。

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