義母や義父に…息子が依頼した55歳専業主婦の「浮気調査」。明らかになった母の苦しみ

子供からの「親の調査依頼」が増えている 「音信不通な子供の調査依頼に加えて、ここのところ急増しているのは、子供が親の調査を依頼するケースです。その背景には、ネットを媒介にした事件の多発にあります」 こう語るのは、リッツ横浜探偵社の山村佳子さん。2025年6月、警察庁は2024年の特殊詐欺関連統計(確定値)を発表。これにとると、全国の特殊詐欺の認知件数は2万1043件で、前年に比べ2005件(10.5%)も増えていた。その被害額は717億6000万円で、これも前年に比べ265億円(58.6%)も増加という結果だった。中でも、高齢者(65歳以上)が狙われており、その被害の認知件数は1万3738件で、総認知件数に占める割合は65.4%だった。 それゆえに「親の調査」が増えているというのだ。 「詐欺」にはさまざまある。今回山村佳子さんのところに相談にきた25歳の大学職員・昌人さん(仮名)は、55歳の母の調査を依頼してきた。昌人さんの母はかつて国際ロマンス詐欺で300万円を騙されており、そのときに昌人さんが対処を頼まれたのだった。今回相談にきたのは、母が平日におしゃれをして頻繁に出かけていることがわかったから。今度は詐欺ではなく浮気ではないか……。目的は浮気をやめさせ、57歳の父との家族関係を取り戻すことだった。では本当に浮気をしているのだろうか。 地主の娘でお見合い結婚 昌人さんの母は55歳。これまでの彼女の経歴を振り返ってみましょう。 母は、東京近郊の地主の娘で、大学を卒業してからほとんど働いたことがないまま、27年前に、大手企業に勤務する父と見合い結婚しました。その2年後に昌人さんを出産し、その後子供を授かることはありませんでした。 母は専業主婦ですが、母の兄が営む保険代理店の専務の肩書きを持っており、特に働かないまま、そこから毎月40万円の給料を得ており、お金はあります。父もまた地主の息子で、昌人さんと両親が住んでいるマンションは、父の両親の持ち物です。そこに、父の姉一家、父の弟一家も住んでいる。経済的な豊かさも背景にあり、親戚同士の仲は良く、かつてはいとこたちと共に旅行をしていたこともあったそうです。 母の“異変”に気付いたのは父方の伯母です。「デート風の服を着て、平日に頻繁に出かけている」と昌人さんに報告。昌人さんは母が国際ロマンス詐欺に引っかかった経験があることから、また母のお金を狙う人のカモにされているのではないかと心配していました。 というのも、母には恋愛において“夢見る少女”のような一面があるからです。「愛している」「あなたの魅力の虜になった」など、国際ロマンス詐欺の常套文句のような言葉に弱い。母の浮気相手がお金目当てだった場合、愛の言葉を囁かれ、騙されることを危惧していたのです。 とはいえ、父と母の夫婦仲は悪くはありません。父は母を信頼している。ただ、父は国際ロマンス詐欺のことも、浮気疑惑のことも知りません。昌人さんは、父が察知する前に、母と浮気相手を別れさせたい。そのための調査に入ることにしました。 同じマンションに「一族」が 母の生活を聞くと、朝早く起き、昌人さんと父を送り出した7時30分以降、二度寝をしているはずとのことでした。母は血圧が低く、午前中は基本的に活動しないだろうとも言います。 私たちは、10時から昌人さんの自宅マンション前で張り込みを始めました。マンションは6階建てのファミリータイプで、およそ50世帯が入居しています。最上階に父の両親と伯母一家が、3階に叔父一家、2階に昌人さん一家が住んでおり、「同じマンションに一族がいる」と言いながらも、プライバシーは確保できていることがわかりました。 母は11時に出てきました。実年齢は55歳ですが、10歳は若く見えます。小柄で顔が小さく、ショートボフが軽快な印象です。服はピンクのふんわりした麻素材のシャツに、デニムのフレアスカートを合わせおり、全体的にバランスがよくおしゃれ。バッグは若者の人気ブランドの、緑のトートバッグでした。 昌人さんに見せていただいた写真は年相応に見えていましたが、実際は、垢抜けた印象で、体つきもほっそりしています。恋をしてダイエットやメイクの努力をしたのではないかと推測します。 公園に行くと… 最寄り駅まで500メートルの道のりを、早足で歩き電車に乗り新宿で下車。すぐに美容外科へ入って行きました。なんらかの施術を受けているのでしょう。1時間ほどして出てくると、近くのコーヒーショップに入り、ブラックコーヒーを飲みながら、スマホをいじっています。 13時になると、店を出て百貨店をぐるぐると歩き、何も買わずに出て行きます。そこから公園まで歩き、ベンチに座って虫除けスプレーをかけてから、ぼーっとしていました。それから1時間後、スマホが鳴ると小走りに外に出ていきます。門の前には20代後半と思しき、すらっとした男性がいます。母はその男性の手を取って歩き始めました。 若い男性の「素性」 2人はラブホテルがある方向に歩いて行き、人気のホテルに入って行きます。2時間ほどで出てくると、ホテルの前であっさり別れていました。 男性の後を追うと、近くのマンションに入って行きます。表札を見ると、会社名があり検索すると、女性向け風俗の運営会社でした。ペアの探偵は、「浮気ではないけど、これは昌人さんがショックを受けるのではないか」とポツリ。昌人さんは、母をどこか神聖視しているところがあります。しかし55歳で性欲があるのはごく普通のことです。 ひとまず、「お母さんの相手がわかりました。でも詐欺ではないようです」と報告すると「それならよかったです」とホッとしたような声で話していました。 「あの子も苦労しているから」 報告には、母の姉である叔母さんと共にいらっしゃいました。幼い頃から昌人さんを可愛がってくれて、母が何かと頼りにしている存在だそうです。名刺には母の実家の事業の一つである会社の代表をしており、“やり手社長”という雰囲気を漂わせています。指には大粒のダイヤモンドが光っていました。 「あの子も苦労しているから、息抜きしたかったんじゃないかしら」と母のことを言っているので詳しく聞くと、母は幼い頃から、相手の言うことに合わせてしまう受け身な性格で、交際している男性からDVを受けたことがあり、両親はいつも心配していたそうです。 受け身すぎるために、結婚はいつもうまくいかず、最終的にまとまったのが昌人さんの父との婚姻でした。 「お互いの家が地主同士で気持ちもわかるし、とりあえず子供も生まれてよかったと思っていたのよ。あんたが生まれたばかりの頃、円形脱毛症を作って実家に来た。聞けば、あんたの婆さんにいじめられてるって」 父方の祖母は母に惣菜を作って運ばせては、「味が濃い」とか「まずい」などとダメ出しをしていたのだそう。さらに父の姉一家、父の弟一家も母をシッター代わりに使っていたとのこと。 「あんたが小さいころ、いとこたちが家にいたでしょ? あれはあの子が子守りを押し付けられていただけ」 昌人さんは「初耳です」と驚いていました。さらに母の姉は「あんたの父親も、ぼーっとしているのか、妻があれだけいじめられても気づかないんだから笑えるわよ」と続けます。 義母が認知症を発症し… 母の姉の話によると、父は言われたことは行うが、それ以外はしない性格で、感情表現も乏しい。トラブルが起こると、自分が我慢すればいいと引き受けてしまう。それでも母が離婚しなかったのは「親に心配をかけたくない、離婚は恥」という思いが強かったから。それに大手企業に勤務しており社会的に信頼があり、少なくとも暴力を振るわない伴侶に満足していたこともあります。 子供も手を離れ、婚家との付き合い方もわかり、ホッとしていた2年前ごろ、祖母、つまり母にとっての義母が認知症を発症したのです。 80代後半の祖母は母に対して「私の宝石を盗んだだろう」とか、「お前は家族ではない。部外者だ」などの言葉を浴びせる。外で仕事をしている夫の姉から「専業主婦で暇なんだから、食事の面倒を見て」などと言われると断れない。 80代後半の祖父も祖父で、祖母がせん妄状態になると、祖母に対して暴力を振るう。祖父は、自分の財産と趣味のゴルフをする時間を確保することしか考えていないため、母が間に入って取りなすしかなかったそうです。 「家にいると用事を言いつけられるから、外に出ていたんでしょうね。そして女性向け風俗を頼んでいた。それでいいじゃない。発散できるんだから」と母の姉は話していました。 義理の実家からの「解放」 以上を聞いた昌人さんは顔面蒼白になっていました。おそらく“母親”に性欲はないと思っていたのでしょう。加えて、仲がいいと思っていた家族関係は、母の犠牲の上で成り立っていたこともわかったからです。 母にはこの夜、母の姉が調査の内容を伝えたそうです。母は息子・昌人さんに一連のことが知られたとわかると、「恥ずかしい」と泣き、母の姉の勧めもあり、一時的に実家に戻って暮らすことにしたそうです。「恥ずかしがらなくて大丈夫。55歳で性欲があって何が悪い」とお姉さんは話したとのことで、ちょっと安心しました。 そんな状態になっても父はどこか他人事で、「いずれ戻ってくるならいいよ」と別居を受け入れます。父は母が別の男性とラブホテルに入る写真を見ても、「へえ、そうなんだ」と無関心だったとか。おそらく、父は性行為にあまり興味がない。母とはずっとセックスレスだったのではないかと感じました。そうなると、女性用風俗を頼る気持ちもわかります。 母は現在、実家で80代の両親の生活のサポートをしながら平穏に暮らしているそうです。昌人さんは母が家を出てから、家事を一手に引き受けており「こんなに大変だと思わなかった」と言いながらも、父が何もしないから奮闘しているとのこと。 このまま別居状態が続くのか、どこかのタイミングで母が家に帰るのか先のことは誰にもわかりません。ただ、この調査によって、母を義実家から解放し、昌人さんが母を神聖視する思考から抜けることができました。母はまだ55歳。ひとりの女性として自分の好きなことをしていいのです。それがわかっただけでもよかったのではないかと感じています。 調査料金は15万円(経費別)です。 【前編】「55歳専業主婦」の母の浮気調査を25歳の男性が依頼した切実な事情

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