「北方の兵隊さんへ」満州の兵士に送った4枚の慰問文、青森で発見…書いた女学生の母校に返却へ

 太平洋戦争中、東京の女学生が満州(現中国東北部)で活動する兵士に送った「慰問文」が、青森県むつ市中央の杉沢セイ子さん(89)宅で見つかった。  慰問文は1943年初頭のものとみられ、本土での日常や戦地の兵士を思いやる内容がつづられている。戦後80年を迎える今年、戦争を伝える記録として当時に思いをはせる手がかりになればと、杉沢さんは慰問文を女学生らが所属した学校に返還する予定だ。(伊藤駿介)  青森市の県立郷土館によると、慰問文は戦地の兵士の士気を高めるための手紙で、学校が子どもたちに受取人を特定せずに書かせる場合が多かったという。  杉沢さんが見つけたのはA3サイズほどの4枚だ。戦時中、陸軍に召集されて満州に渡った叔父の片谷理吉さん(1916年生まれ、故人)が終戦前に除隊して帰郷した際、杉沢さんに手渡していた。  杉沢さんはその後、慰問文を箱にしまい込んで忘れていたが、最近、高齢となり身辺整理をしていたところ発見した。片谷さんから「慰問文を戦地から腹巻きの中に入れて持ち帰ってきた」と聞かされたといい、杉沢さんは「つらい戦地で、本土からの便りはよっぽど大事だったのだろう」と思いやる。  慰問文には差出人として、東京・渋谷区の関東高等女学校(現関東国際高校)の女学生4人の名前がある。「北方の兵隊さんへ」と宛てて、「大東亜戦争2回目のお正月を迎え、おいしいおもちなどたくさん食べて」「寒さの中でも日夜一生懸命に活躍くださいまして」などと書かれていた。  また、「私たちが心配していたガダルカナル島で、とうとう日本が勝ったと聞いた」との一文もある。実際には、同島を巡る戦いで日本は敗北し撤退したにもかかわらず、大本営は43年2月9日、撤退ではなく、目標達成による「転進」と発表。国民を欺いていた。  郷土館学芸課の佐藤良宣学芸主幹(55)は4枚について、日付を特定できないものの、内容から「43年の正月から2月頃に書かれたものではないか」とみる。その上で、「戦後80年がたってこのサイズのものが見つかるのは珍しい。戦時下の子どもたちの日常や思いを知ることができる」と話す。  杉沢さんは今後、慰問文を関東国際高に返すつもりだ。当時の女学生や、その親族の手元に届くのかはわからない。ただ、「戦争を知らない人たちが増えている中、今の高校生たちが戦争について考える一つのきっかけになるのかもしれない」と思いを巡らせている。

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