《大阪教育大附属・池田小児童殺傷事件24年》祈りと誓いの集い〜学校長「共に生きる」【全文掲載】

 大阪教育大学附属池田小学校殺傷事件から24年、「祈りと誓いの集い」での荒川真一校長の言葉は次の通り。 ・・・・・・・・ 大阪教育大学附属池田小学校「祈りと誓いの集い」荒川真一校長〈2025年6月8日午前 大阪府池田市〉  今から24年前の平成13年、2001年6月8日、この時間に不審者の侵入を防ぐことができずに、8人の児童の尊いいのちが奪われ、13人の児童と、2人の教員が傷つけられるという大変悲しくつらい事件がこの場所で起こりました。  当時は、「学校は安全なところである」という根拠のない思い込みにより、不審者の侵入に対する想定ができていませんでした。学校として、迅速な対応や組織的な対応が取れなかったため、子供たちを守ることができず、子供達および保護者の方々をはじめ多くの方々に悲しく、つらい思いをさせてしまうことになりました。 犠牲になった児童らの名前が刻まれた「祈りと誓いの塔」に献花する児童〈2025年6月8日 10時32分撮影 大阪府池田市〉  事件当時の教職員は、二度とこのような悲しい事件が起こらないよう安全管理を徹底することと、いのちを大切にする教育を推進することを誓いました。そして、教育の力によって、子供達が将来、人を傷つける側の人間にならないように教育していくことを誓いました。  事件から24年が経ち、事件当時に本校に勤務していた教員は本校からいなくなりました。しかし、今本校で勤務している教員が、これらのことを大切にしていくことを誓い、日々の教育活動に励んでいます。  現在は、様々な方々の思いを受けて作られた、この安全に配慮された校舎で子供たちは学ぶことができています。8家族の皆様、保護者、地域の方々をはじめ、過去から現在に至るまで本校に関わってくださる多くの方々が、本校の教育活動を見守り、支えていただいていることに対して深く感謝いたします。  さて、事件から24年が経ち、児童や教員が入れ替わっていっても、児童や教員たちは事件のことをしっかりと語り伝えていってくれています。高学年は低学年に、これまで自分が学んできたことを自分なりの言葉で語りかけてくれています。それを聞いた低学年の児童は、その思いを受け取り校長室にある 8 人の児童の写真の前に、祈りの気持ちを込めて折った折り紙などを飾ってくれます。  また、祈りと誓いの塔の周りの花壇の植替えの際には、児童達は亡くなった 8 人の児童に思いを寄せながらマリーゴールドの花を植えました。  一方、教職員は、4月の春休み中に行う不審者対応訓練に、新しく赴任した教員も、先輩の教員とともに全力で訓練に取り組み、学校安全の大切さを実感するとともに、学校安全を発信していくという本校の責務を重く受け止め、今までの教員が積み重ねてきたことを受け継いでいこうと努力を続けています。  本校の事件以後、世の中の学校安全に対する意識が変わり、様々な取り組みが行われ、子供たちを守る取り組みは大きく前進してきています。しかし、残念ながら、子供が犠牲になる悲しい事件は、本校の事件が最後にはなりませんでした。学校や児童が被害に遭う事件、事故は、毎年発生し、学校や社会の無力さを感じることもあります。それでも、事件や事故が起こらないことをあきらめたら、学校は学校ではなくなってしまいます。社会は社会でなくなってしまいます。  事件から24年が経ち、事件当時の学校関係者も年齢を重ね、学校現場から退く世代になりつつあります。また、事件に関わられた多くの方々も同様に現役世代から少しずつ退く時期になりつつあります。  しかしながら、本校で起きた悲惨な事件を決して風化させることなく、しっかりと語り伝えていくためにも、この 6 月 8 日を学校安全について全国で考えていただく機会にしていただき、本校の事件を他人事ではなく、自分事してとらえ、各学校、各自治体、関係機関において、それぞれの学校安全の体制を振り返り、改善に努めていただきたいと考えています。  先日、児童のみなさんに「共に生きる」ことを学校で学んでほしいと話をしましたね。「共に生きる」ことにはたくさんのことが含まれていると思います。友だちと協力すること、困っている人に手を差し伸べることなどが思い浮かんだ人も多いと思います。残念ながら、現在も世界には様々な場所で争いごとが絶えません。様々な異なった価値観を寛容できる、大きな心を持つことも「共に生きる」ことのひとつだと思います。皆さんがそのような心を持つことができれば、平和な世の中に貢献できるはずです。  そして、今、この学校に在籍している児童の皆さんが人を傷つける側の人間ではなく、自他のいのちを大切にし、人を守る側、支える側の大人になってくれるものと信じています。  事件で亡くなられた8人のみなさん、みなさんが大好きだったこの附属池田小学校は、引き続き、日本中の学校とさらには世界中の学校と手をたずさえ、学校が安全で安心できる場所であるように、これからも努力を続けます。  令和7年6月8日  大阪教育大学附属池田小学校長 荒川 真一

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