オレオレ詐欺など犯罪目的の迷惑電話をスマホで受けて被害に遭う高齢者が増えている。 　被害を防ぐためにどんな対策や心構えが必要か、専門家に聞いた。（及川昭夫） 　オレオレ詐欺は、犯人が息子や孫などになりすまして電話をかけ、「会社のお金を使い込んでしまった」などのトラブルを口実に金銭を要求する手口だ。「自分はだまされるはずがない」「身内の声を聞き間違えるはずがない」と思い込み、疑わずにだまされてしまう例が目立つ。 　ほかに自治体や金融機関の職員、警察官を名乗って脅すなど様々な手口がある。高齢になると記憶力や理解力などの認知機能は徐々に低下し、判断能力が落ちるため、注意が必要だ。 　最近は、犯人がスマホにかけてくるケースが増えている。オレオレ詐欺はこれまで固定電話が大半だったが、スマホが中心の携帯電話は２０２３年の４％から、２４年は３４％に急増した。 　迷惑電話を受けることで資産状況などの個人情報を聞き出され、特殊詐欺や強盗などの犯罪に利用される恐れもあり、自治体などは被害を防ぐための啓発に取り組む。 　東京都練馬区は５月下旬、公共施設「はつらつセンター光が丘」で６０歳以上向けのスマホ教室を開いた。講師で情報通信サービスを手がける「アイ・ティー・エックス」（神奈川）の森山友紀さんは、「電話の相手が狙うのは皆さんの個人情報。高齢者はメールよりも声を直接聞ける電話に心を許してしまいがち。情報を伝えないことが何よりの対策だ」と呼びかけた。参加者の女性（７５）は「詐欺に引っかからないようよく注意していきたい」と話した。 ◇ 　電話がかかってきたら、どう注意すべきか。ＮＴＴドコモの「スマホ教室」担当の中島伸悟さんは「表示される電話番号を見て、特に国際電話に注意してほしい」と話す。国際電話は「＋１」や「＋４４」のように「＋」と「国番号」で始まる。発信元の特定を防ぐために悪用されているケースがある。国際電話の末尾が警察署と同じ「０１１０」であっても、警察署からの電話ではない可能性がある。１回だけ鳴る「ワン切り」は折り返すと高額な国際通話料が発生し、犯罪組織の収益になる恐れがある。 　警察庁はこうした電話について、「出たり、かけ直したりしないで」と呼びかける。中島さんも「海外に子どもや孫などがいる場合は、事前に番号を登録しておいてほしい」と話す。 　登録していない人などからかかってきた場合は電話に出ずに留守番電話サービスを利用し、相手の伝言を聞いてから判断するとよい。ショートメッセージ（ＳＭＳ）に伝言を残す人もいるので、留守電やＳＭＳの確認方法などを把握しておこう。 　また、高齢者は、自分の電話番号を忘れないようにスマホのカバーなどに貼り付けるケースがあるという。中島さんは「個人情報の流出につながる恐れがある。人の目に触れるところに大切な情報を明示しないでほしい」と話す。 　通信各社は、高齢者などスマホに不慣れな人向けに、迷惑電話の拒否や、番号非通知の相手に通知を求める音声ガイダンスを流すなどのサービスも提供している。中島さんは「人に相談せず自分だけで解決しようとしないでほしい。誤って電話に出て何か要求されたなど、困ったことがあれば、警察や自治体の専門窓口、家族などに相談してほしい」と話す。