山梨県は今年度、県内で開業を目指す若手料理人が、一流シェフに料理を教わりながら、一定期間「自分の店」を持てるようサポートする事業を始める。 　開業に挑戦しやすい環境や支援体制を充実させ、有望な料理人の県内誘致を図る。県は「他県にもない珍しい取り組み」としており、将来的には「一流の料理」を目的に山梨を訪れる人を増やしていきたい考えだ。（瀬田糸織） 　県観光振興グループによると、サポートの対象となるのは将来県内で飲食店の開業を検討している若手料理人で、２人程度を想定している。イタリアンやフレンチなどジャンルは問わない。 　そして、その料理人らに県内の既存のレストランなどを一定期間「自分の店」として使ってもらい、実際にシェフとして料理の腕を振るってもらう。客の反応を目の当たりにすることで、開業時のイメージをより具体的に持ってもらいやすくするという。 　また、自身の店を持つ前には、１日限定で創作コース料理を作ってもらう機会も設ける。この際には、技術や知識を身に付けられるよう都内などにレストランを構える一流シェフを県などがマッチングし、教えを受けながら料理の開発に挑戦することを想定している。 　その後の店の運営についても、アドバイスを受けながら、料理の考案や価格設定などについて一から体験してもらう想定という。 　出店期間は未定だが、若手料理人が使いたい食材の旬などに合わせて決定していく方針で、開店場所についても本人の意向に寄り添って県などがサポートして選定を行う。 　県観光振興グループの相川和茂・観光振興監は「この取り組みを経て、山梨で開業してみたいと思ってもらい、全国から注目される飲食店が県内に増えることを期待している」と話した。 「美酒・美食」発信に力 　県では「美酒・美食王国やまなし」のブランド確立を目指し、「心躍る食体験」をテーマに様々な事業を展開している。 　コロナ禍が明けた２０２３年度頃から事業を本格化させ、県内のレストランで味わえる絶品料理と、料理に合うおすすめの酒をまとめた冊子を作成した。県外の人たちに手にしてもらい、旅行の目的に「食」を加えてもらうことが目的という。 　また、今年２月には、県内に有望な料理人を誘致しようと「やまなしシェフズツアー」と題して、首都圏で活躍しているシェフを招き、県産食材の魅力を発信するイベントも開催した。 　実際に味わってもらうことで、県産食材の魅力を伝えようと、甲斐市で世界最大の淡水エビ・オニテナガエビを養殖している企業を視察したり、甲州市のワイナリーなどを訪れたりしてもらったという。