預金「大争奪時代」にメガ&ネット銀行にどう対抗?りそな社長が掲げる「リアル×デジタル」とは

「本格的にこの分野で攻勢をしたい」 先月27日、リテール戦略発表会でこう意気込んだのは三菱UFJフィナンシャル・グループの亀澤宏則社長。視線の先にあるのは前を行く三井住友FGの「Olive」だ。銀行口座とクレジット・デビットがカード一枚に集約され、アプリで一括管理できる利便性が若者らの心をつかみ、利用者は2年で500万を超える大ヒットに。それを追う三菱UFJがこの日発表したのが、総合金融アプリ「エムット」で、カードのポイント還元率は最大20%を打ち出した。 【写真を見る】預金「大争奪時代」にメガ&ネット銀行にどう対抗?りそな社長が掲げる「リアル×デジタル」とは 預金量トップの最大手が躍起なのにはワケがある。植田日銀が利上げで“金融正常化”を進めるなか、「預金」の重要性が増しているからだ。預金獲得競争では高い金利水準のネット銀行もライバル。業績絶好調のMUFGですら亀澤社長が「今のままずっとNo.1を保っていけるのか…」と危機感を示すほどの混戦模様なのだ。 こうしたなかで「リテールNo.1」の実現を目標に掲げてきた、りそなホールディングス。この混戦を勝ち抜く戦略はあるのか、南昌宏社長に直撃した。 金融の大シフト時代 「リアル×デジタル」で勝負 ──3メガバンクで預金集めの動きが活発化しているが、りそなならではの戦い方や差別化の方法は? メガバンクの動きは非常に学ぶところが大きいし、着目していかなければいけないが、我々も我々なりの生き方、勝負の仕方はある。 これまで掲げてきたが、やはりキーワードは「リアルとデジタルの融合」。りそなは地域密着型で営業店を800以上展開し、私企業としておそらく国内最大。一方で、日常の金融は明らかにデジタル・データ化が加速するなかで、顧客と100%デジタルで繋がっていくことが重要。ただ「特別なリアルの瞬間」というのは必ずあるので、日常の金融はデジタルで、特別なリアルの瞬間には金融が持つ深いソリューションを営業店で提供していくことが我々のスタイルになっていく。 そのためにも、営業店など「リアル」は人材やデータでコンサルティング能力を格段に向上させ、「デジタル」はUI・UXでお客様に選ばれるようにして、二つの強い軸が融合していく世界観をいかに作っていくか。りそなが持っている繋がりの強みやコンサルティング能力、10年来かけて磨いてきたデジタルの知見やノウハウをいかに顧客に合うかたちで提供し続けられるかが大事なポイントだ。 ──メガバンクもデジタルに巨額を投資しているが、差別化のカギになるのはリアルでの密着力ということか? 一つの柱はやはりそうだ。地域密着で得られているリアルの情報も当然あるし、デジタルから得られる高頻度・広範囲のデータもある。データの質・量が上がれば、今までぼやけていた顧客の輪郭がはっきりしてくる。予測の精度が上がれば、日常の金融や特別なリアルの瞬間の精度も上がっていく。リアルとデジタルの「トータル」で地域の顧客にどういう価値を提供できるか、どういう体験を提供できるかが我々の勝負のポイント。 広がる「金融×通信」 ポイント経済圏の“活用”は? ──みずほFGは楽天経済圏、三井住友FGはPayPay経済圏と、ポイント経済圏を巻き込んだ競争が増えているが、そこに加わる予定や構想は? 決済という軸を真ん中に置いた経済圏や、非金融も含めたいろんな価値を提供していくことがいま大きな流れの一つになってきている。我々も全く同じような感覚を持っている。 ポイント経済圏って一言で言うとすごく大きな話だが、我々のグループで当然ポイントはあるし、これがどういう繋がりを持って広がっていくのか、顧客にとってどういう価値や利便性があるのかを研ぎ澄ましていかなければいけない。「リアル」も含めて、しっかり考えていかなければいけないところだ。 企業に打撃の“トランプ関税” 「新しいリスクと機会を考える出発点」 ──りそな銀行の大きな柱の一つである「個人」について聞いてきたが、もう一つの大きな柱が「中小企業」。日本に限らず世界全体のビジネスが“トランプ関税”に揺らぐなか、銀行として「中小企業」に提供できる価値は? 現状がどうなっているかも非常に大事だが、我々が考えなければいけないことは、一定程度時間が進んだときに、直接的・間接的にいろんな波及経路を通じて個別の顧客にどんな影響が出てくるのか。業種や顧客が置かれている状況や財務体質によって様々なので、個別の予兆の変化をしっかり見据えながら、対話の質量を上げたい。そのことが、新しいリスクと機会を考えていく出発点になる。 現時点でインパクトは見通せる状況にはないので、いま大事なのはこれからの予測のレンジを複数持つこと。最悪の事態も想定しながら、ちゃんとリアルな足元の動きを見続けることが必要。必ずどこかの時間軸で影響は少なからず出てくると思うので、変化に適応するために情報収集を怠らないことが大事なポイントだと考えている。 ──先行き不透明感で企業の設備投資が鈍る場合、銀行にとって融資の減少はどの程度の打撃になるか? これは読みにくいところで、個々の企業によっても戦略は違うが、ベースとなるトランプ関税の状況次第でかなり変わってくる可能性はある。その中で(設備投資の)判断が少し後にずれるとか、方向転換を一部しようという動きには個々に対応していくほかない。顧客が成長しないのに我々だけが成長することはないので、二人三脚で寄り添い、コンサルティングをしっかりやっていく。 ■取材後記 長らく続いた低金利時代が終わりを迎え、銀行ビジネスは大きな変革期を迎えている。そこにJR東日本やNTTドコモなど異業種のビッグネームの参入が相次ぐなど、金融・非金融の垣根も下がる一方だ。これから先“銀行だからできること”は何なのか?スピード感をもって次の姿へと変貌できるのかが問われている。 TBS経済部 渡邉優子

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