運転手の点呼をめぐり、悪質な違反が発覚した日本郵便。重い処分が下され、全国の郵便局のトラックなど約2500台が使えなくなる見通しです。年間に約169億もの郵便物を配達しているだけに、生活への影響が心配されています。 そこで今回の#みんなのギモンでは、「日本郵便 悪質違反で影響は?」をテーマに解説します。 ■点呼ナシでも「実施済み」と記録 忽滑谷こころアナウンサー 「悪質な違反が発覚した日本郵便ですが、処分がされると、私たちの生活にどう影響が出るのでしょうか。今回明らかになったのは、運転手の点呼に関する問題です」 「日本郵便では、全国の集配を担う郵便局の7割以上で、法令で義務づけられている運転手の健康状態や飲酒の有無などを確認する点呼を行っていないにもかかわらず、実施済みと記録するなど不適切だったことが明らかになりました」 「特別監査を行った国土交通省は5日、全国の郵便局のトラックなど約2500台を対象に、自動車貨物運送の事業許可を取り消す方針を固めました」 鈴江奈々アナウンサー 「事業許可の取り消しという重い処分になった、それだけかなり不適切な状況が起きていたということなんですね」 ■日本郵便の社内調査で分かったこと 忽滑谷アナウンサー 「不適切な事例はどのようなものだったのでしょうか」 「日本郵便の調査によると、点呼の意識が薄れていて、面倒だから管理者がいる時だけやっていた、業務繁忙の時は行わなかった、などということがありました。勤務時間中に飲酒し、その後の検査で酩酊(めいてい)状態だったケースもありました」 「事業許可の取り消しは貨物自動車運送事業法の中で最も重い処分で、取り消し後、5年は許可を取得できません」 森圭介アナウンサー 「本当に重い処分ですけれども、従業員の皆さんの健康もそうですし、飲酒状態というのは大きな事故につながる可能性もあるわけですから、こういった処分も致し方ないのかなという気はしますね」 ■対象は…「集配局」間で使うトラック 山崎誠アナウンサー 「期間も5年ですから、運送における影響もかなり大きくなってきますよね」 忽滑谷アナウンサー 「2500台のトラックなどが使えないということになります。そもそも使えなくなるのが、郵便局と郵便局の間で手紙や荷物を配送するトラックとワンボックス車の約2500台。これは日本郵便が所有するすべてのトラックなどです」 「日本郵便では、手紙やハガキ、宅配便など年間にすると約169億(2024年度)もの郵便物を配達しています。まず、私たちが集荷や窓口などで出した手紙や宅配物は、出したところの近くの『集配局』から、送り先の地域の『集配局』に振り分けられます」 「主に近い距離の間の輸送に使われているということですが、この時に使われるのが、今回の対象となったトラックです」 森アナウンサー 「地域と地域をつなぐ、かなり大事な役割を担っているということですよね」 忽滑谷アナウンサー 「その通りです。さらに、最初に窓口などから集配局に運ぶ時に使う軽ワゴンなど(約3万2000台)についても、今後国交省は監査を進めていき、(使用)停止などの処分を出す可能性があるということです」 ■配送業界全体の問題に発展? 鈴江アナウンサー 「(郵便物は)169億が行き交う中、大動脈が途絶えてしまわないのかという心配が出てきますよね」 忽滑谷アナウンサー 「流通経済大学の板谷和也教授によると、トラックが使えなくなった分、軽ワゴンを使うとなると、やはり運べる量が少ないので何台も必要になって、コストがかかるということです」 「さらに、子会社への委託にも限界があるため、同業他社への業務委託を考えなければならない可能性があると話していました」 「日本大学の鈴木邦成特任教授によると、日本郵便が受けていた分の配送が同業他社に流れると、ドライバー不足の中コストが上がってしまい、各社の配送料金の値上げに拍車がかかる可能性もあるとのことです」 森アナウンサー 「そうなると日本郵便の問題だけではなくて、配送業界全体の問題になってくるということですよね」 ■各企業に聞く…サービスへの影響は? 山崎アナウンサー 「悪質な違反があって処分が下されるということですが、いつ頃なのでしょうか?」 忽滑谷アナウンサー 「今後の動きについて、6月18日に国交省による日本郵便への聞き取りが行われる予定で、処分は6月中にも下される可能性があります」 「お店などでも日本郵便の宅配便を利用することがあると思います。私たちの生活への影響について、企業にも聞きました」 「ゆうパックを活用している大手家電量販店では、『ゆうパックに影響が出ると困る』『影響が出れば他社の配送業者の協力が必要になってくる』としています」 「オークションサイトのYahoo!オークションは『従来通りの配送ができない状況だと判断した場合には、利用者に他の配送方法の選択を促すなどの対応をする可能性がある』とのことです」 「フリマサイトのメルカリは、日本郵便と提携した『ゆうゆうメルカリ便』について、『今後の状況次第で配送方法を変更する可能性もある』。現時点でサービスの停止などは発生していませんが、このような状況だということです」 鈴江アナウンサー 「日常的に利用されている方も多いでしょうし、お中元シーズンも近づいてきているので、気にされる方もいるんじゃないでしょうか」 忽滑谷アナウンサー 「東京都内の大手百貨店に取材したところ、5つの百貨店では日本郵便以外の業者を使っているということで、影響は今のところないということでした」 ■ゆうパック廃止は「検討していない」 鈴江アナウンサー 「6月中に処分が下される可能性があるということですが、今後日本郵便としてはどう対応していくのでしょうか?」 忽滑谷アナウンサー 「今後はまずは全社を挙げて、点呼実施の徹底など再発防止の取り組みを実施するとしています」 「さらに“信頼回復に向けて全力を尽くすとともに、お客様にご迷惑をおかけすることのないようにあらゆる手段を講じ、しっかりと荷物を届けてまいります”としています」 「また、ゆうパックの廃止などは検討しておらず、“荷物及び郵便のサービスはこれまで通りお客様に提供する”ともしています。今後の影響など、我々も冷静に見ていくことが大事です」 (2025年6月6日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より) 【みんなのギモン】 身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト)