「地元で有名なワル」2人が飲酒運転で時速100キロ超…「一家5人」を一瞬にして崩壊させた砂川死傷事故から10年

 いまからちょうど10年前の2015年6月6日、北海道砂川市で発生した交通死傷事故が日本に衝撃を与えた。犠牲となったのは軽ワゴン車に乗った一家5人。父母と長男、長女が命を落とし、九死に一生を得た次女も脳に障害を負うという悲惨な事故である。しかも、加害者の男2人は飲酒運転のうえ、レースのように競い合いながら時速100キロ超で走行していた。  幸せな一家が一瞬にして崩壊するというあまりにも理不尽なこの事故に、世間からは激しい怒りの声が上がった。その後、この2人にいかなる裁きが下されたのか。事故発生時を振り返る第1回では当時の「週刊新潮」記事を、第2回では裁判の結果を伝える。 (全2回の第1回)  ***  (「週刊新潮」2015年6月25日号「それでも死刑にならない! 幸せ5人家族を踏み潰した北海道『飲酒暴走のごろつき』」を再編集しました) 【写真】首都高6人死傷事故 遺族が絶対に許せない「LINE500通」 約8キロ離れた馴染みの店へ  去る6日の午後7時ごろのことである。北海道砂川市で建設業を営むT(27=当時)は友人2人を伴って、地元の飲食店街に顔を出していた。愛車である黒の「BMW X5」を空地に停めて、隣の焼き鳥屋の暖簾をくぐったのだ。 2人が事故直前まで飲酒していた飲み屋街 「彼らはそこで焼き鳥をつまみながら、ちょうど向かいにあるお目当てのスナックの席が空くのを待っていました。でも客が引かないのを見て、“はしご”することにしたのです」  と言うのは、全国紙社会部デスクである。そこに合流したのが、同じ遊び仲間のK(26=当時)ら2人だった。Kもまた燈(だいだい)がかった愛車「シボレーC 1500」を従えていた。 「常連客として、時にお尻を出してふざけたりしたこともあったのですが、この日に限って店は“満員御礼”が続いていました。これにしびれを切らして、彼らはそこから約8キロ離れた滝川市にある馴染みの店を目指すことになった。5人は、TとKがそれぞれハンドルを握る愛車に分乗。Tは焼酎の水割りを数杯飲んでいましたし、Kにしてもビールのジョッキ1杯を空にした後だった」(同) シボレーに1.5キロほど引きずられた長男  目的地までは、信号の少ない直線が29キロ続き、「日本一直線が長い道路」である国道12号線を北上することになる。片側2車線の道路をBMWとシボレーは先を争うように加速し、時速は100キロを超えていた。  ちょうどそのころ、12号線を横断しようと近づいていたのが、Nさん(44=当時)が運転する軽ワゴン車である。 「T運転のBMWが赤信号を無視して交差点に進入し、Nさんの車に衝突。BMWは爆発して燃え盛っていました。危険運転致死傷容疑で逮捕された本人は“信号は青だった”と主張していますが、それはあり得ない。防犯カメラや信号機の記録解析の結果、約30秒前から赤信号だったことがわかっています。それのみならず、酒気帯び運転の基準値を超えるアルコールも検出されました」  と、道警のさる捜査関係者が次のように打ち明ける。 「この事故で、Nさんと奥さん、長女の3人が死亡し、次女は両足と頭に大けがをして重体。車外に放り出された長男に至っては、BMWの後を走っていたKのシボレーにひかれたうえ、1.5キロほど引きずられて亡くなったのです」 興奮を抑えきれない様子で電話  Kは現場から一旦離れた後、翌朝に道警砂川署へ出頭し、ひき逃げ容疑で逮捕された。 「彼は“飲酒運転がばれるのが怖くて逃げた”“人をひいた覚えはない”と弁明しています。が、同乗者の言い分は“何か柔らかいものを踏んだと思った”と。そのうえ彼が蛇行や右左折を繰り返したのもわかっている。人を引きずっていることに気づき、これを振り落そうとしたせいではないかと見られています」(同)  それだけではない。 「Kは事故後、興奮を抑えきれない様子で複数の知人に電話をしている。差し当たって当局は、知人らに事情を聞き、『ひき逃げの認識の有無』を詰めているところです」(先のデスク)  外堀は埋められつつあるのだ。 「ひとことで言えば有名なワル」  TとKが共に育った上砂川はかつて炭鉱地だった。1987年の閉山から30年近くが経とうとする今もなお、映画「幸福の黄色いハンカチ」で描かれたような炭鉱住宅が、町の一角に多く立ち並んでいる。  2人は小学校からの幼馴染で、地元の道立高校に進学したがいずれも中退している。彼らの知人曰く、 「ひとことで言えば有名なワル。Tは年下に対しては威張ったり因縁をつけることが多いんです。で、Kは喧嘩に勝つためには手段を選ばないタイプ。隣町・滝川の不良グループって、パトカーを奪って逃げたりするくらいの連中ですが、彼らでさえ“Kには手を出すな”と言ってる。それに彼は“万引き魔”。雑誌とかを服の下に隠すやり口です」  別の知人がこれを受ける。 「2人揃ってバイクと車が大好き。中学生のころから公園でいじっては無免許で乗り回していたんです。特にKは自動車修理工場に顔が利くせいもあって、車がころころ替わる。何でもその工場は、“廃車にしてくれ”と客が頼んできた車をKに貸していたんです。車検が切れてたり整備不十分だったりすることが多いんですが、そんなのお構いなしだった」  ***  「いつか事故になるなと思っていた……」——第2回【時速100キロ超の飲酒暴走で「一家4人死亡」12歳長女は重体…「砂川暴走事故」で加害者が主張した「赤信号を見落とした理由」】では、飲酒運転が常態化していた事実や、TとKが公判で主張した驚きの内容などについて伝えている。 デイリー新潮編集部

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