地産地消イベントこそが日本自動車趣味文化のボックボーン|第10回妙高はねうまクラシックカーレビュー

ヒストリックカー趣味と聞くと、人は得てして”オークションで高額取引される歴史的な名車”や、”裕福なコレクターたちが集う華やかなコンクール・デレガンス”などを連想しがち。しかし、ヒストリックカー趣味がごく一部の富裕層のものかと言えば、もちろんそんなことはない。車の生まれた時代や格式、さらにはその個体がもたらす経済効果の大小などとは無関係に、我々は「自分が好きだ」と思った車を自由に楽しむことはできるのだ。それが、本来の趣味というものである。 【画像】地元と協力して開催する「地産地消」のクラシックカーイベント「はねうまクラシックカーレビュー」で出会った車たち(写真11点) 本誌をはじめとする自動車専門誌などで紹介されるのは、全国規模の大きなミーティングや華やかなサーキット・イベントである場合が多い。その注目度、話題の大きさから言えばどうしてもそうなるわけだが、小規模なもの、エリア限定のものなどまで含めれば、実は全国各地ではほぼ毎週のようにさまざまなヒストリックカー・イベントが行われている。そこで本稿では、日本全国それぞれの地域に根ざして独自の発展を遂げてきた"地産地消"的なイベントにも改めて着目してみたい。そして今回取材に向かったのが「第10回妙高はねうまクラシックカーレビュー」である。 車好きが"跳ね馬"と聞いてまず思い浮かべるのはフェラーリのエンブレムとして知られるキャバリーノ・ランパンテ。その名前から当然フェラーリ系のイベントかと思いきや、さにあらず。実は上越・妙高エリアの人々が"跳ね馬"といえば、妙高山の外輪山である神奈山の北東側中腹に出現する、残雪が形作る馬のようなシルエットのこと。昔から「山に跳ね馬が現れたらそろそろ田植えの季節」といわれ、太古からこの地の生活に根ざした地元のシンボルなのだ。 というわけでさる5月25日、国道18号沿いの上信越自動車道新井PA・スマートICに隣接する妙高市猪野山の「道の駅あらい」西エリア駐車場にて開催されたのが、今年で10回目の節目を迎える妙高はねうまクラシックカーレビュー。もともと地元の愛好家が自然発生的に集まって発展してきただけに、アマチュアリズムにあふれた爽やかなイベントだ。 イベント当日、会場に集まったエトラントは約100台。県内を中心に、長野、富山、福井、山形、群馬などからのエントラントも。トヨタ2000GTやフォード・マスタング360GTAといった大物が注目を集めるなか、メインとなるのは360cc時代の軽やBC戦争を戦ったブルーバードにコロナ、歴代スカイラインやセリカなど、古くからの車好きにとっては馴染み深い車種たちである。そしてエントラントの皆さんにお話を伺って改めて感じるのは、それぞれのオーナーと車との間にはさまざまなエピソード、興味深いヒストリーが詰まっているということ。 かつてお父上がレストアし、その息子さんが受け継いだ初代ダットサン・ブルーバード。その310ブルで、今では孫のお嬢さんがイベントに参加するというSさん一家。昭和30年代のノックダウン車が好きで、半世紀以上乗り続けているといういすゞヒルマン・ミンクスで参加のKさん。ひょんなきっかけで知人の乗っていたトヨタ1600GT5を受け継ぎ、それ以来ごく自然体で乗り続けているSさん。コンパクトで走りの良い欧州製セダンに突如目覚めて手に入れたというアルファのジュリエッタt.iのオーナーのMさんは、それまでは大排気量V8好きのアメ車を乗り継いできたという経歴の持ち主。BMWイセッタをイメージした塗装とカスタムで注目を集めていたタケオカ・アビーで参加のHさんは、簡便な原付カーの特性を活かし自らレストアした由。 そしてイベントを主催する妙高はねうまクラシックカークラブの会長、水野博文さんの乗るMGB Mk.IIIもまた、旧くからこの地で乗り続けてきた前オーナーが亡くなった後「地元で乗り続けてくれるなら託したい」と、そのご遺族から受け継いだというヒストリーを持つ個体なのである。 国際レースでの輝かしい戦績や、有名人の所有歴といった派手なヒストリーを持つわけではない市井のヒストリックカーとそのオーナーたちが、地元の商業施設や行政とも協力しつつ地産地消のヒストリックカー趣味の発展に寄与する。そんな地に足のついたムーブメントこそが、実は日本の自動車趣味文化のボックボーンとなっているのかもしれない。 文・写真:長尾 循 Words and Photography: Jun NAGAO 取材協力:妙高はねうまクラシックカーイベント事務局 090-2309-6215/道の駅あらい

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