被災地「能登」に舞った鯉のぼり…大阪万博のウラで進まぬ復興の「現状」

万博のウラで進まぬ復興 毎日毎日テレビ画面からは万博のネタばっかやないけ。世の中には行きたくても行けん方々もおられるんやで。っていやあワシはなにも別に万博に恨みはないでぇ。実際EXPO70は実家兵庫県におったから3回も行ったけど、そりゃあ、子供ながら強烈な印象受け、我が国の未来に明るい希望も抱いたわ。せやけど、今回は東京五輪2020やないけど、どうも手放しで喜べん。けっして食わず……もとい、行かず嫌いやないんや。日本人なら他に行かないかん、見とかないかんもんがあるんちゃうかと。時おりしも黄金週間、なんとか、花粉症が収まったかと思うたら、もう梅雨や、ほしたら、あっちゅう間に夏休み、この世で最もきっつい日本の夏や。こみこみ、じめじめの万博会場で、汗だくになりながら行列に並ぶうちに閉幕や。まあそれもこれに目を通してからでも遅ないからまあ一息ついて考えたらええわえ。 そんな大阪から特急「サンダーバード」と北陸新幹線乗り継いでわずか2時間、で古都、金沢や。東京からでも北陸新幹線「かがやき」で2時間ちょいや。不肖・宮嶋にとっても今回で6度目である。昨年の元日の震災以来、能登半島を訪れたのは。そして毎度毎度、足を運ぶたびに遅々として進まぬ復興にいらだちが募る。 能登半島の商店も商いを始め、インフラが絶たれた我が家から仮設住宅にやっと移れ、やっとやっと復興の兆しが見え始めた矢先の昨年9月に今度は豪雨災害が襲い掛かり、奥能登は再び土砂と濁流に飲まれ、住民16人が犠牲になったばかりか、約400戸が再び全半壊した。これで心が折れないわけがない。「頑張ってください」「応援しています」などの軽々しい言葉は今の能登の民にはひやかしにしか聞こえない。 それでも、いったん報道の世界にゲソつけた以上、日本人ならよりによって元日に起こった、この悲劇の連鎖を、この国難を能登の民がいかに克服したか、なんとか見届けんと、迷惑を承知で6度もこの地を訪れたのである。 金沢から北上すると状況は一変 時折しもGWが始まったばっか。能登を有する石川県、いや日本の古都を代表する金沢市内は昨年の震災なんぞ無かったかのように、県、いや国の内外から観光客が訪れ、活気を有していた。しかし、一歩半島を北上すると、状況は一変する。確かに道路事情は震災前同様とまではとてもいかんが、復旧しつつある。半島を縦断する「のと里山海道」は対面通行ばっかやが、なんとか全線復旧、半島を周回する国道249号線も、輪島市街と門前地区を結ぶトンネル崩壊現場など数か所を除いて、半島先端部まで全線再開した。震災発生当初、穴水町でつかまった殺人的渋滞は今は見られない。珠洲市や輪島市の沿岸部で山積みにされたまんまの瓦礫の山も確かに消えたが、町がいまだに電気水道ガス、通信が途絶えたまんまのゴースト・タウンと化したままである。 今回初めて通る、珠洲と輪島市を海岸線で結ぶ国道249号沿線では風光明媚な能登の大自然を観光資源と当てこんだ食堂や旅館、ホテルがいまだ土砂に埋まったままなのである。日本海の荒波が打ち寄せるビーチでザンバラ髪振り回し、太鼓を打ち鳴らす無形文化財「御陣乗太鼓」の舞台となるビーチにも瓦礫がうずたかく積もったまま、雰囲気ぶち壊しである。 その名舟町ばかりではない。海岸線まで押し寄せた土砂の周りを取り囲むように迂回した249号は、文字通り海抜0(ゼロ)メートル道路。その両側には無数の殺風景な土嚢が積み上がり、これじゃあ、天気悪化して、波が高くなるとまた249号は冠水して通行止めや。いや、それでも阪神淡路、東日本と比べても復旧復興に時間がかかったとはいえ、少ない機材、材料、人手でやっとこさ全面再開できた249号である。しかし、この日本海沿岸ともとても見えん荒涼とした風景は日本というより、アメリカのデス・バレイを思いおこさせる。 震災前はそんな日本海を目の前にして点在していた食堂、旅館やホテルはいまだ土砂と瓦礫に埋まったまんま、金沢にはあれほどいた観光客どころか住民の姿も見えない。ただ押しては返す日本海のさざ波が聞こえてくるだけである。 青空に舞う鯉のぼり ここ仁江町では地元石川県警の警察官大間圭介さんの妻子4名を含め親族9名が家族団らんのまっ最中に地震が発生、直後、土砂崩れに飲まれ、犠牲になった。生き残った大間さんは警察官という職業柄他の住民の救助や避難誘導に当たっていたが、今年元日の家族の命日に1年ぶりにやっとこの町に戻り、手を合わせる事だけは叶った。今まで気丈にふるまっていた大間さんだったが、土砂の下から見つかった一家の愛車を見つけるや泣き崩れたという。その大間さん一家を偲び、またここを訪れるボランテイアの励みとなればと隣人のかたが揚げた一組の鯉のぼりが青空に舞っていた。しかしGW中ということもあり、重機がうなりをあげるどころか、第一この集落に人の気配がせんのである。まるでこの街を取り囲む大自然がこの町を地図から消え去るのを待っているかのように、途絶えることのない日本海のさざ波が打ちつけるだけである。 さらに歩みを進めた大谷町に入るや、大空を埋め尽くす鯉のぼりが目に飛び込んでくる。色とりどりの大小様々な鯉が大空を舞うのは確かに壮観である。しかし……これでも例年より少ないと言う。震災前なら、この町を流れる大谷川の上流でそれこそ川面を埋め尽くす鯉が舞っていたが、今年は河口近くのビーチで若干スケールダウンしたものの、ボランティアの方々の尽力でなんとか開催にこぎつけられた。それでもこの町に住民の姿は見えない。 昨秋の土砂崩れの爪痕も生々しく、地図を塗り替えるがごとく土砂が、瓦礫が海岸線を埋め尽くしていた。そんな能登半島先端部の集落から住民が次々に離れつつあるのである。ここ大谷町からも故郷を離れ、次々に人口が流出しつつある。このままでは地図を塗り替えるというより、大谷町が仁江町の名が地図から消えてしまうかもしれんのである。ふと、子供の歓声で我に返る。車でやってきた祖母、母、男の子の三世代家族である。初めて見る大量の鯉のぼりに大はしゃぎの男の子、スマホ片手にそれを追いかける母親、それらを目を細めて見つめる祖母、幸福を絵に描いたような一家である。しかしこの一家以外に住民の姿は見えない。 外遊に忙しい閣僚たち こんな能登の民や、米不足と物価高にあえぐ国民を尻目にこのGW中外遊に出た閣僚は14人である。我らが石破茂首相は夫妻でベトナム等東南アジアへ、財務官僚のいいなり加藤財務相や日本人の生活より中国人大事の岩屋外相らはイタリアに、「格下の格下」の赤澤経済再生担当大臣はまたアメリカ等々である。何をさておき主食の米の値上がりをなんとかせなあかんはずやのに、米買ったことすらなかった江藤農水大臣はインドネシアへ、行って帰ったとたん更迭や。おえ、江藤センセイ、ドブに捨てたインドネシアへの渡航費くらい国庫に返せよ。 いや別にマジで必要やったらええんやで。いくら落ちぶれた、いやいや石破政権になって、堕ちるとこまで堕ちるやろけどGDP世界第5位の「経済大国」の大臣のメンツもあるやろ。ワシらの血税でファースト・クラスにふんぞり返って外遊されても。「エッフェルねえさん」や元アイドルみたいにコソコソせんで、堂々と胸張って帰国して、国民にその成果をちゃあんと説明してくれたらや。せやけど19人中、14人は出来すぎやろ。そのかわり東南アジアやヨーロッパよりはるかに近い能登に来た閣僚はゼロやんけ。 そんな奥能登に我らが石破茂首相が姿を見せたのは首相に選ばれたばっかの、不肖・宮嶋もいた、昨年10月と今年元日くらいである。一度目は石破首相と首相の座を争った、能登とは何の縁もない少数政権与党の選挙対策委員長にこれまた任命されたばっかの小泉家の4代目と時を同じうしてであった。そんな石破首相も今や「格下の格下の」パシリ大臣をアメリカに遣わし、トランプ大統領のご機嫌を伺うことや、国民やなしに陣笠議員に10万円の商品券ばらまいた言い訳でお忙しく、能登の民に思いを馳せる余裕はとてもない。 開幕した大阪万博 そして去る4月12日は大阪で55年ぶりの万博が始まり初日には雨にもかかわらず、国の内外から11万人以上の人々が押しかけたという報が能登まで届いた。この前日の開会式には天皇皇后両陛下や万博協会名誉会長であらせられる秋篠宮様までお見えになった。まさに国の維新、もとい威信を賭けた大興行である。今もロシアと戦い続けるウクライナまでもがパビリオンを出し、なんとかウクライナやそこで侵略者と戦い続ける人々にも関心を持ってもらうきっかけとなるよう涙ぐましい努力をつづけている。55年前当時小学生だった不肖・宮嶋も1970年の大阪万博では、まだ見ぬ国々のパビリオンをめぐるうちに、いつかは行ってみたいと夢を膨らませたもんである。そのうちのいくつかの国へ訪れることは叶えたが、ソ連や南ベトナムのように国家自体が消滅してしまった国々もある。 さらに、当時兵庫県民だった不肖・宮嶋は大人気だったソ連館のパビリオンも訪れることができ、館内に掲げられていた禿でちょび髭の人物の巨大レリーフを見上げ「誰や、あれ?」と尋ねるや、「レーニンです」とやさしく教えてくれたロシア人コンパニオンねえちゃんにいつか再会できると思うたわけではないが、実際ソ連は不肖・宮嶋がその10年後初めて報道カメラマンとしてデビューするきっかけとなった国になったのである。その52年後ロシアが同じくソ連邦を構成していたウクライナに侵攻するとは夢にも思わんかったけど。 しかし、動く歩道ににテレビ電話と9歳の不肖・宮嶋少年が夢にさえ見なかったものに、現在、実際そのほとんどをスマホやリニアと実用化するほど英知ある人類がいまだに地球上から紛争を1秒たりとも止めることができぬほど愚かであるばかりか、天災を防ぐことすらできぬほど無力なのである。関西万博はそれを実感できるだけでも足を運ぶ価値はあるかもしれん。 復興の足を引っ張るもの 行きもせず、この目で見もせんうちに万博に対するネガティブな評価を下し、ましてやそんな自分勝手な意見を流布し、他人にまでそれを押し付けるなんぞ、ケンポーで認められた表現の自由のおかげでおまんま食えているカメラマンの端くれとしては、厳に慎むべきことである。しかし、能登の地からテレビ画面から流れてきた、わずか半年後に取り壊される、万博会場を取り囲んだ世界最大の木造建造物とやらの「大屋根リング」を一瞥したら、ため息が漏れるばかりである。この地で地震や津波、火災や豪雨やその後の山津波により破壊されたり流された家屋のほとんどが古い木造である。あの巨大リングに使うた建材や重機や車両、そして万博開幕までにこぎつけた情熱をちったあ能登に向けてくれてたら、復興の槌音はもっと高くなったんちゃうかと思わざるをえない。 それにしても6か月後経ったらその木材どないするの? 能登に回すつもり? 燃やしたら大量のCO2出してただでさえ暑い日本がもっと暑うなるで。そや東日本から万博見に行った方は帰りに特急サンダーバードに北陸新幹線乗り継いでわずか2時間ちょいで金沢や。まだまだ奥能登は宿が少ないから金沢ベースにして日帰りでのと鉄道で名倉温泉行くんもええやんか? 復興の足を引っ張るのは無能な政治家と役人の官僚主義のみならず。最大の敵は国民の無関心である。我ら報道に携わる者は万博やの芸能人の不倫やのテレビ局の性加害問題やの、そんな能登の復興に屁のつっぱりにもならんことばっか報道してきたんちゃうか。自戒の念を込めて自らに問うてみたい。 写真はすべて著者撮影 SLが走る釧路「圧倒的な光景」に覚えた「違和感」…「日本の原風景」を中国資本が破壊する

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