時代を画した国民的スターの訃報（ふほう）に、東京都内のゆかりの人々からは哀悼の声が相次いだ。 本人から「料理を担当してほしい」 　長嶋茂雄さんがよく訪れた日本料理店「分とく山」（東京都港区）の元総料理長、野崎洋光さん（７２）は２００４年のアテネ五輪で、長嶋さんが指揮を執るはずだった野球日本代表に同行。選手らに和食を振る舞った。長嶋さん本人から「料理を担当してほしい」と請われたといい、「長嶋さんのおかげで、普通の料理人にはできない経験をさせてもらった」と振り返る。 　最後に会ったのは、野崎さんが同店を辞める直前の２３年秋頃。食べやすいよう、料理を小さく切るなどして提供すると、長嶋さんは「ありがとう、ごちそうさま」と笑顔で声をかけてくれた。野崎さんは「０４年からよく頑張ったが、この時が来てしまった」と惜しみつつ、「これからも、皆の心に長嶋さんの輝かしい姿は生き続ける」と語った。 総長「立教大にとって永久不滅のヒーロー」 　長嶋さんの母校、立教大の池袋キャンパス（豊島区）には昨年５月、長嶋さんを顕彰するモニュメントが設置された。「立教の後輩たちへ」と題した長嶋さんのメッセージには、「自分を甘やかさないで、何事にも積極的に取り組んで、社会に出たら示すものをたくさん蓄えてください」と刻まれている。 　立教大野球部ＯＢＯＧ会の村山修一会長は「長嶋先輩」と呼んで悼み、「私たちにとっては、永遠の憧れであり、誇りでした。偉大な功績と熱い思いは、私たちの原動力であり続けています」とコメント。立教大の西原廉太総長も「驚きと深い悲しみに包まれている。（長嶋さんは）プロ野球界の至宝として尊敬を集められた。立教大にとって永久不滅のヒーローです」との談話を発表した。 江戸切子に刻む 　昨年５月に行われた巨人の球団創設９０周年記念の特別試合「長嶋茂雄ＤＡＹ」に合わせ、特別デザインの東京の伝統工芸品「江戸切子」のグラスが制作、販売された。鮮やかな緑色を基調に、長嶋さんのシルエットなどを刻んだ切り子を手がけたのは、江戸切子協同組合の前理事長で、伝統工芸士の篠崎英明さん（６６）（江東区）だ。 　大の巨人ファンで長嶋さんが現役引退した時には、「友達がテープに録音した引退セレモニーを何度も聞いて、みんなで泣いたほど」と振り返る。スターの訃報に、「とても残念で悲しい思い。でも、記念の切り子づくりに携われたことは職人として光栄です」と語った。 小池知事「都民に多くの夢を与えてくださった」 　野球界の発展に尽力したとして、長嶋さんは１４年１０月に名誉都民となった。小池知事は３日午前、報道陣の取材に、「多くの方々に親しまれた、まさに国民的スターだった。人生の中で、国民、都民に多くの夢を与えてくださったことに、改めて感謝します」と話した。