本日6月3日の深夜、隣国の韓国で、李在明(イ・ジェミョン)新大統領が誕生する。これは日本にとって「大きな地殻変動」だ。 なぜなら、1月に太平洋の向こうに、米ドナルド・トランプ大統領が誕生したことに続き、日本海の向こうにも、「韓国のトランプ」が誕生するからだ。アチラにもトランプ、コチラにもミニ・トランプ誕生で、日々新たな政策や発言が飛び出し、日本は大わらわとなるだろう。 私は先週、李在明新大統領誕生で、韓国がどうなるのかを取材するために、韓国に飛び、本人にも直撃した。 三つ巴となった大統領選 今回は、韓国が民主化を果たしてから9回目の大統領選挙で、私はそのほとんどを取材してきた。 大統領選挙の終版、革新系(左派)「共に民主党」の李在明候補(61歳)は、ライバルである保守系(右派)与党「国民の力」の金文洙(キム・ムンス)候補(73歳)に急追され、焦燥感を募らせていた。金文洙候補は、今年4月4日に憲法裁判所によって罷免(ひめん)された尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の政権で、雇用労働部長官(大臣)を務めた。 当初は、尹前大統領が昨年12月3日の深夜に起こした「戒厳令」とその失敗による影響で、「内乱勢力の一掃」を説く李在明候補は、圧倒的に有利だった。だが、金文洙候補の実直で清廉潔白な人柄が次第に評価され、急速に支持を伸ばしていった。5つもの裁判を抱えている疑惑にまみれた李在明候補とは対照的だったのだ。 韓国ギャラップの5月26日、27日の支持率調査(以後は調査禁止)によれば、李在明候補が46%、金文洙候補が37%、保守系野党「革新新党」の李俊錫(イ・ジュンソク)候補(40歳)が10%である。金候補は日を追うごとに支持率を伸ばしており、もしも保守系の金候補と李候補が一本化すれば、単純に支持率を足し算すれば抜かれてしまうのだ。 そこで李在明候補は、5月25日の日曜日午前11時から、自らの取り巻きの番記者たちを党本部に集めて、ただ一度の「記者懇談会」を催すことにした。いわば、気心の知れた番記者たちに、もっと自分のことを報じてもらいたいと考えたのだ。 民主党本部に置かれた竹島の模型 私はその情報を「共に民主党」の関係者から聞きつけ、ソウル漢江(ハンガン)の中州・汝矣島(ヨイド)にある「共に民主党」本部に駆けつけた。10階建ての党本部のビルの壁面には、李在明候補の巨大なポスターが掲げてあった。ちなみに、ライバルの「国民の力」の党本部もすぐ近くにあり、そこにはやはり金文洙候補が小学生と握手する巨大なポスターが掲げてあった。 「共に民主党」の本部前で警備員と交渉したら、あっさり中へ入れてくれた。1階のエレベーター前に「竹島」(韓国名「独島」)の映像が掲げてあったのに驚いた。さすがは文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に、「反日」でならした党だ。ちなみに、2階のブリーフィングルームの入口には、大型の竹島の模型まで置かれていた。 ずいぶんと小柄で痩せた男 私はこの時、初めて目の前で李在明候補を見た。最初の印象は、ずいぶんと小柄で痩せた人というものだった。屈強なボディガードたちに囲まれて入場し、かつ「共に民主党」の議員たちが、テロを警戒して両脇を囲んだので、正面からでないと本人の姿が見えなかった。 その次に感じたのは、本人が話す韓国語の独特のイントネーションだった。今回の候補者の中で、一番美しい標準語を話していたのは、3位につけていた保守系「改革新党」の李俊錫候補だった。ソウル育ちで米ハーバード大学を卒業した、スーパーエリートの40歳だ。 それに比べて、李在明候補が話す韓国語は、ボソボソと小声で、かつ独特の訛(なま)りというかイントネーションがあって、決して聞き取りやすいものではなかった。近くの韓国人記者に聞くと、「(慶尚北道)安東(アンドン)の生まれで、しかも貧困層で小学校しか出ていない(中学校と高校は通わず、小卒で工場労働者となった)ためだ」と言う。また李在明候補のある側近は、「ああ見えてシャイな性格のため、人前に出ると口ごもってしまうのだ」と説明した。 「内乱」時代と決別する ともあれ、この日はライバルの金文洙候補が迫ってきたとあって、再度持論を展開した。以下は、私が気になった李在明候補の発言である。 「私は、『共に民主党』とか『国民の力』とかいうことではなく、韓国の国民全体の大統領になりたいのだ」 「私は、昨年12月3日に『内乱』(尹錫悦大統領が発令した戒厳令)を食い止めた時に、戦争のような政治を止め、韓国という『難破船』を前に進めていかねばならないと決意した」 「主人公は李在明ではなく、大韓民国の国民だ」 「選挙運動で国内を数千キロメートル回って何より実感したのは、国民が食べて生活していける経済力をつけなければならないということだ。今年第1四半期の経済成長率は−0・1%で、国民に負担をかけている」 「この国には、どうでもいい規制が多すぎる。私が大統領になったら、規制を少なくしたり、撤廃したりすることを考えている。特に、AI(人工知能)の規制を外し、発展させることを検討している」 「人事は、まず『内乱擁護勢力』は起用しない。そのためにも、『内乱の首魁(しゅかい)』(金文洙候補?)を選択してはならない。 その上で、第一に国民に忠実な人材、第二に有能な人材を抜擢する。第三に、いろんな意味で均衡を取っていく」 「成長と福祉のどちらを優先させるかという問題は、どちらも大事であって二択ではない。食べて暮らしていける社会を作ることが大事だ」 「大統領を4年制にして、2期までやれるように憲法と国民投票法を改正したい(現在は5年制で1期のみ)。何回もやるのでなく、2期までだ。プーチンのような独裁はやらない。アメリカも同じではないか。一度やってみて、それが韓国にふさわしくないというなら、元に戻したらいい」 「今回の大統領選挙は、『内乱克服選挙』だ。それなのに『国民の力』は、争点をすり替えようとしている。それは国民のためによくないことだ。昨年末に起こったことの責任を問えというのが民意だ」 「北朝鮮に関しては、尹政権下で緊張が増した。いつ戦争が起こるか知れない状態になり、韓半島(朝鮮半島)は危機に陥った。 安保とは、国民の生活を守ることだ。そのための方法はいろいろあるが、戦えば被害が出る。戦わずして勝つよう努力するのが政策というものだ。そのために、わが国は他国よりもGDP比の平均で2倍もの国防費を確保している。対話、協力、公助などが大事だ。軍事的には緩和の方向に向けて進めていく」 「経済は、皆が勝手にやっていたら、崩壊してしまう。(1930年代に)アメリカ経済を復活させたニューディール政策のようにやる。経済は理念ではなく、実用的にやらないといけない。 原発問題も同じだ。エネルギーが不足しているのだから、原発も火力発電もミックスしてやる」 「何よりも民生経済の回復を最優先させる。司法改革も重要だが、『やさしいものから早くやる』のが、公務員を動かす行政の基本だ」 「国会も、『与小野大』で野党が多すぎては仕事ができないが、そうだからといって(尹政権は昨年12月3日に)軍事クーデターまでやろうとした。これは無責任だということで、いま体制を変えようとしているのだ。私が政権を担えば『与大野小』となるので、汎国家的な、汎国民的な仕事をしていく」 「まず民生経済の回復が来て、その次に外交通商をやる。(トランプ関税による)韓米通商問題は、もう時間がない。両国の利益を求めていくのが外交というもので、自己の利益だけを求めるのは略奪だ。遠からずよい発表ができるだろう」 「現在2位の『国民の力』と3位の『改革新党』の候補者統一化は、『内乱統一化』だ。ニューライトとは、日本の植民地時代に戻るのかという話だ。彼らがやろうとしているのは、解放ではなく王国造りだ」 李在明候補に日韓関係について直撃 以上である。李在明候補は、1時間にわたって多様な話をしたが、あまり深みのある内容ではなかった。 最後は番記者の人たちに向かって、「私は、日々活躍しているあなたたちの仲間だ」と言って、作り笑顔を浮かべた。そして記者たちの前に降りて来て、名刺を差し出す記者たちの挨拶を受けた。 会見の間、私もずっと挙手していたが、質問をさせてもらえなかった。もちろん、聞きたかったのは日韓関係に関することだ。 そこで韓国人記者たちの後ろで、李在明候補が出口に向かって歩いてくるのを待った。5人の屈強なボディガードが脇を固めているので、近づこうとするたびに引っ張り出される。 ようやく李候補が目の前に来たので、名刺を渡した。日本語の名刺だったので、仰天したようだった。 「来月は韓日国交正常化60周年になりますが、韓日関係をどう進展させていくつもりでしょうか?」 私がこう聞くと、「鬼の形相」で私を睨(にら)みつけた。そして右手を振り上げ、顔の前ではたく動作をすると、そのまま無言で立ち去ってしまった。 とても「恐い目」をしていて、今後5年間の日韓関係を暗示しているようにも思えてきた。 「国民の力」の李在明批判 ちなみに、その二日前にライバルの「国民の力」党本部へ行くと、朴ヨンチャン公報メッセージ団長(広報部長)が、30分にわたって快く対応してくれた。朴団長は、李在明外交に警鐘を鳴らした。 「李在明がやろうとしているのは『謝謝(シエシエ)外交』だ。つまり対中従属外交になる可能性を排除できない。逆に、対日関係が悪化するのは目に見えている。 李在明は外交政策に関しても、日によって言うことがまるで違う。2022年に『共に民主党』の代表になった頃は、『韓米日3ヵ国による合同訓練は3国同盟につながるもので、絶対に座視できない』と強硬に反対していた。それがいまは180度変わって、『韓米日3ヵ国の関係は大事だ』と言い出している。 こんなに言うことがクルクル変わる政治家が、この先、『韓日友好』などと言い出しても、決して信じてはいけない」 ちなみに朴団長によれば、金文洙候補の外交政策は、「尹錫悦政権の外交を引き継ぐと同時に、さらに発展させる」ものだという。「北朝鮮が核ミサイル開発に邁進しているのは、韓国の左派政権が甘やかし、資金を提供したからだ」と断罪。そして日韓関係については、「FTA(自由貿易協定)を早期に結び、EUをモデルにした韓日経済共同体を築いていく」とまで言っていた。 元大統領候補が「大逆転」と断言 「国民の力」本部庁舎では、元大統領候補だった李仁済(イ・インジェ)氏(76歳)にもお目にかかった。1997年当時、47歳で大統領選に出馬し、492万票も取った「若手の星」も、すっかり好好爺になっていた。 私が「日本から来ました。1997年の大統領選の時は、本当に輝かしく見えていました」と挨拶すると、「おお」と言って笑顔で握手。そして、「今後の大統領選はどうなりますか?」と聞くと、「大逆転、大逆転だよ!」と力強い声で述べたのだった。 その根拠は、1996年に金候補がソウル麻浦区から出馬した際、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった金大中(キム・デジュン)氏(後の大統領)最側近だった朴智元(パク・チウォン)候補を大逆転で討ち破ったことだという。「1996年の再来だ」というわけだ。実現は厳しそうに見えるが、ともあれ楽観的で前向きなのが、韓国人らしい。 韓国中部まで「追っかけ」 民主党関係者に聞くと、李在明候補は午後、「最も激戦地域の3カ所に遊説に出る」という。 韓国の大統領選挙は、アメリカの大統領選挙と似ていて、地方によって投票傾向がはっきりしている。西部の全羅道(チョルラド)は李在明候補支持、東部の慶尚道(キョンサンド)は金文洙候補支持、そして忠清道(チュンチョンド)が激戦区である。アメリカ大統領選における「激戦7州」のようなものだ。 そこで、遊説地の一つである忠清南道の牙山(アサン)に向かうことにした。牙山は温陽温泉が有名で、私も30年以上前に行ったことがあるが、当時はまだ寂れていて、日本植民地時代の面影を残していた。ソウルから南へ、水原を越えた先にあり、100�弱の距離だ。 だがいまや、すっかり新興都市に生まれ変わっていて、サムスン電子や現代自動車などの巨大工場が建っていた。そして、それらの企業や工場に勤める人々が住む高層マンション群が並んでいた。 その中の一角に作られたハンドゥル水色公園が、午後の2つ目の演説場所だった。現地へ行くと、「本命の到着」まで2時間以上前で、舞台の設営が行われていた。すでに前方の芝生席には市民たちが詰めかけて腰を下ろし、1000ウォン(約100円)の簡易座布団売りのアジュンマまで現れていた。 公園に集まった住民たちに聞いてみると、ソウルで見るような熱狂的な感じではなかった。 「私たちは子育て世代なので、李在明候補がどんな政策を行ってくれるのか、実際に聞いてみようと思って来た」(40代の子連れ夫婦) 「李在明のファンではないが、この辺りは日曜日でも派手なイベントは久しぶりなので、見に来た」(20代女性3人組) 少子高齢化が加速するソウルでは、もう「希少価値」になった子供たちが多いのが、会場に活気を添えていた。 響き渡る「李在明の歌」 そうこうしているうちに、約1万人もの人々が集まって、午後4時20分からイベントが始まった。最初に皆で、「李在明応援歌」の大合唱だ。 「李在明〜1番〜信じられる人♬ 偉大な大韓民国にする〜本当の大韓民国にする〜世界に活躍する大韓民国にする♬ 一緒に1番を選択しよう〜1番を選択しよう♬」 壇上では、「ブルーライト遊説団」と呼ばれるダンスチームが、応援ダンスを繰り広げていた。 その後、何人もの地元選出の国会議員や市会議員、市長などが「前座の演説」を行った。そこでは手を変え品を変え、「内乱の首魁(ボス)を倒すぞ!」とシュプレヒコールを上げた。 そして、午後5時過ぎになってようやく「本命」が到着した。まるでプーチン大統領が乗るような完全武装の大型リムジンが舞台脇に付けられると、警察犬による周囲や舞台上の入念な爆発物検査。その間に、舞台の演壇の3面に、分厚い防弾ガラスを設置した。 そしてようやく、屈強な5人の男に囲まれながら、防弾チョッキの上に「共に民主党」のブルーのジャケットを着た小柄な男が演壇に立った。李在明候補だ。 「牙山の皆さん、内乱勢力を最も困らせる候補者は誰ですか? 私が大統領になれば、皆さんの生活はとてもよくなるんです。私は新しい大韓民国、真の大韓民国を作ります。6月3日火曜日には、どうぞこの私に投票して下さい!」 内容は特になく、ひたすら市民を鼓舞する演説を、10分ほど行って去っていった。遠くソウルから来た私は、拍子抜けしてしまった。 取材に来ていたベテランの韓国人記者に聞くと、ため息交じりに答えた。 「現時点で李在明が恐れているのは、『暗殺』と『失言』だけだ。だから完全に守りに入っているのだ。 それにしても、いまの『共に民主党』には民主がなく、『国民の力』には力がない。李在明新大統領は、1993年に金泳三(キム・ヨンサム)文民大統領が発足して以降、最も独裁的な大統領になるだろう。まさに『韓国のトランプ』であり、『韓国の習近平』であり、『韓国のプーチン』だ。 韓日関係についても、李在明新大統領が取り繕っていられるのは、おそらく半年くらいで、その後はこれまでの悪態に戻るだろう。見ているのはアメリカ、中国、ロシアであって、日本なんか目に入っていないのだから」 2025年「全羅南道の憤怒」が爆発し、朝鮮半島が激変する!
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