メルセデスはやはりメルセデスであった、という話【新米編集長コラム#32】

今メルセデスの中心にあるGLC メルセデス・ベンツの基幹車種といえば、かつてはCクラス、Eクラス、Sクラスという確固たるラインがあり、そこにコンパクトなAクラスが加わって……というものであった。しかし、BMWにおいて現在一番売れているのがX3であるように、今メルセデスの中心にあるのがSUVのGLCだ。 【画像】メルセデスはやはりメルセデス!今回の試乗したGLC350eとE300 全49枚 初代GLCは2015年にデビューし、2016年2月に日本導入。2020、2021年にはグローバルで『メルセデス・ベンツにおけるベストセラーSUV』になるほど成長。2022年には現行モデルとなる2代目が登場し、2023年3月に日本導入。2024年には『日本で最も売れたメルセデス・ベンツ』となり、市場ニーズと完全に合致した。 2024年には『日本で最も売れたメルセデス・ベンツ』となったGLC。 平井大介 そこで、日本自動車輸入組合(JAIA)のデータを拾ってみた。確かに2024年は7047台の新車が登録され、車種別のランキングでも2位に入っている。遡ると、2023年はモデルチェンジがあったとはいえ4577台だから、大幅な躍進だ。ちなみに先代で最高は2018年の6316台なので、2024年は過去最高にもなった。 そこで今回は、『メルセデス・ベンツGLC350e 4マチック・スポーツ・エディションスター』をお借りして、数日間試乗させて頂いた。 現在GLCは、2L直列4気筒ディーゼルの220dと、2L直4ガソリンエンジン+モーターのAMG名義である43(ハイブリッド)と63(プラグインハイブリッド)が用意される。350eは2L直4ガソリンエンジン+モーターのプラグインハイブリッドだ。エンジン、モーターのシステム合計最高出力は313ps/550Nmとなっており、これに9速ATを組み合わせている。 1990年代後半、W124やR129のSLあたりを思い出した 乗りはじめてまず気が付いたのは、アクセルペダルの反応であった。踏み込んでも過剰に反応せず、加速するためには加速したいだけちゃんと踏む必要があるのだ。ただしこう書けるようになったのは慣れたからであって、最初は一気に速度があがることなくジワっと進む感じに、若干戸惑ってしまった。 近年のメルセデスは触れる機会が少なく久しぶりの試乗となったが、この感じは個人的に初めて乗った1990年代後半、W124やR129のSLあたりを思い出し好感を得た。なるほど、これはメルセデスだ……と。 全幅1920mmは街中で大きく感じたが、どこかメルセデスに乗っているという高揚感もあった。 平井大介 また、感心したのはステアリングの切れ角だ。駐車したコインパーキングの前が狭い道だった際、多くのクルマが数回切り替えしそうなところを、一回で脱出できたのには感動した。実はこれも伝統的な部分で、過去何度も「さすがはメルセデス」と唸ってきた部分だ。 視界の高いGLCは見切りもよく、全幅1920mmはさすがに街中で大きく感じたものの、どこかで『メルセデスに乗っている』という高揚感もあり、気持ちよく走ることができた。また、相性がいいのか、ステアリングを握りながら肘がちょうどシートのサイドサポートにかかるため、長距離でも腕を休めながら運転できたことも好感度があがった部分であった。 野球のユニフォームのような縦ピンストライプ 一方、気になったのは、これはメルセデス全般の話だが、シフトがステアリング右側で上下に動かすレバーであることだ。実は今回の走行中も一度、ウインカーと間違えてニュートラルに入れてしまったことがあった。位置はここでもいいが、フォルクスワーゲンやヒョンデのように、前後に捻る形のほうが個人的には使いやすいと思う。 また、あくまで好みの話ながら、野球のユニフォームのような縦ピンストライプが入ったインパネデザインが、実直さを感じさせるクルマのキャラクターに合ってない気がした。あと、ブレーキを奥まで踏み込んで作動するオートホールドのロジックが最後まで理解できず、踏んだのにホールドしない? という場面が何回かあった。 縦ピンストライプが入ったインパネデザインに個人的には馴染めなかった。 平井大介 しかし、気になる部分はあくまで個人的な感覚によるもので、アクセルペダルのように、その多くはメルセデスの哲学に基づいている気がしてならない。 特にGLCは『SUVのCクラス』となるべく、気合いを入れて開発しているようにも感じている。初代GLCを取材した際も、製品としての緻密さや完成度の高さから、クルマから緊張感が伝わってきたのが印象的だった。さらに書けば、これは同日取材したひと回り大きいGLEからは伝わってこなかったことだ。その時、「これからはCクラスではなくGLCがメルセデスの中心になる」と直感したのである。 冒頭で書いたようにこの感覚は正解だったようで、別日に試乗会で触れた220dコアも含めて、GLCは購入して間違いない1台だと思っている。 しかも350eはWLTCモードで126kmのEV走行が可能で、今回の試乗でも100km以上は軽く走ってくれる印象だった。自宅に充電環境があれば、年間の給油回数はかなり少なくなりそうだ。この内容で価格1013万円は(数字だけ見ればもちろん安くはないが)、リーズナブルとさえ思うのである。 世の中的には少数派となってきたパッケージ そして、GLCと入れ替えで『E300エクスクルーシブ』にも数日間試乗することができた。300を名乗るが、2L直4にISGを組み合わせたモデルである。ISGはエンジンとトランスミッションの間にあるモーターのことで、現在メルセデスの多くのモデルに搭載されている。 E300の美点はGLCで感じたものと基本的には同じであったが、『後輪駆動のガソリンエンジンを搭載したセダン』という、世の中的には少数派となってきたパッケージに心地よさを覚えた。全長4960mm、全幅1880mmはもはやSクラスと呼べそうな大きさではあるものの、視線の低さは逆に落ち着く部分もあり、乗っているとW124から始まる流れの先にちゃんと位置していると感じてくる。 E300の『後輪駆動のガソリンエンジンを搭載したセダン』というパッケージに心地よさ。 平井大介 GLCにしてもE300にしても、一度これらの『哲学』に慣れてしまうと、他には戻れないのではないかという感覚があった。20歳代の頃、乗って感心したことを先輩に話すと、「メルセデスはあがりのクルマだからね。この仕事を続けるなら、まだ買わないほうがいいよ」と言われたことがあり、それを思い出したのである。 あれから四半世紀ほどが過ぎた今、周囲を見渡すと、Cクラスのワゴンあたりを仕事のアシとして使用し、一方で趣味のクルマを所有する姿がいくつも具体例として浮かぶ。まだ『あがる』には早いが、そろそろ『ありかも、メルセデス』と思った52歳の初夏であった。 車両協力:メルセデス・ベンツ日本 今回の試乗した2台のスペック メルセデス・ベンツGLC350e 4マチック・スポーツ・エディション・スター 全長×全幅×全高:4725×1920×1635mm ホイールベース:2890mm エンジン形式:直列4気筒 排気量:1997cc 最高出力:150kW(204ps)/6100rpm 最大トルク:320Nm/2000-4000rpm モーター最高出力:115kW/2500-6800rpm モーター最大トルク:440Nm/0-2500rpm 車両重量:2340kg トランスミッション:9速AT 燃料消費量(WLTCモード):11.9km/L 燃料タンク容量:49L 車両価格:1013万円 取材車価格:1161万2000円 メルセデス・ベンツE300エクスクルーシブ 全長×全幅×全高:4960×1880×1465mm ホイールベース:2960mm エンジン形式:直列4気筒 排気量:1997cc 最高出力:190kW(258ps)/5800rpm 最大トルク:400Nm/2000-3200rpm モーター最高出力:17kW/1500-3000rpm モーター最大トルク:205Nm/0-750rpm 車両重量:1890kg トランスミッション:9速AT 燃料消費量(WLTCモード):14.0km/L 燃料タンク容量:66L 車両価格:1135万円 取材車価格:1368万8000円 E300を名乗るがエンジンは2Lの直4。テールライトはエンブレムがモチーフ。 平井大介

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