残念ですが!小泉進次郎農相の「随意契約」でコメ高騰は解決しません…生産と供給を制限している「強固な利益集団」の正体

備蓄米の放出が、随意契約で行われることとなった。これによって、コメ価格の異常な値上がりは落ち着くだろう。しかし、これで、すべてが解決とはいえない。問題の基本は、コメの輸入がほぼ禁止された状態にあり、コメの供給が政府によって事実上コントロールされていることだ。輸入を自由化することに対しては、「鉄の三角形」が巨大な障害となる。 コメ価格高騰 コメ価格の高騰が家計を圧迫している。 農水省によると、5月5〜11日に全国のスーパー約1000店で売られたコメ5キロの平均価格は、税込み4268円で、前年同期の2倍超だった。 この事態に対して、政府は当初、備蓄米の放出を行なわなかったが、コメ価格の高値が続いたため、3月から放出を始めた。3回の入札で年間需要量(約700万トン)の4〜5%に相当する約31万トンを放出した。しかし、3月の入札で放出した約21万トンのうち、4月27日までに小売店に届いたのは、放出量のわずか7.1%にあたる1万4998トンでしかなかった。 流通業者が、再び品不足に陥るのを懸念して高値でも仕入れるようになり、多めに在庫を持つようになったためだと言われている(朝日新聞、5月22日)。 小泉農水相による随意契約への転換 こうした事態に対処するため、小泉農水大臣は、備蓄米の放出について、これまでの入札方式に変えて、随意契約方式を導入した。 入札制度では、国が大手集荷業者に入札方式で販売した後、卸売業者を通じて、小売りや中・外食事業者に供給する形をとっていた。 高い価格を提示した業者が順に落札していくため、スーパーなどの小売店頭価格が高止まりになるとされている。また、全国農業協同組合連合会(JA全農)が9割超を落札していて、JA全農と従前から取引のある卸売業者にのみ備蓄米が渡っているとの見方もある。 随意契約方式に問題がないわけではない。まず、配送ルートを確保できるかが懸念材料だった。また、多くの小売業者には精米設備がなく、玄米のまま仕入れた備蓄米の取り扱いも困難だ。さらに、業者の選定や価格の決定が恣意的にならないか?精米や貯蔵施設のある業者しか応募できない、などの問題もある。 またJAを除外した契約を継続できるのかも問題だ。 こうした問題を克服できれば、コメ価格を、政府の望む価格に下げることができるだろう。 しかし、これによって米の問題が解決されたということはできない。 第1に、小泉大臣は価格高騰が続く限りいくらでも放出すると言っているが、備蓄米の量は約100万トンであり、放出量には限度がある。 第2に、政府の恣意的な取引を排除するという意味で、入札方式が本来あるべき方法であることに変わりはない。今回はあくまでも緊急避難的な意味で用いられるのであって、随意契約が常態的なものになるのが望ましいわけではない。 問題の根源は供給制限 本質的な問題は、日本の米の供給量が政策的にコントロールされていることだ。 輸入については、ミニマムコントロールの範囲でしか入荷されない。したがって日本の米使用の供給はほぼ国内生産になる。つまり、日本の米マーケットは世界市場から隔離されている。 そして、政府が米の需給をコントロールしている。「減反政策」は2018年度に廃止されたが、その後も「水田活用の直接支払交付金」制度(「水田にコメ以外の作物を作付けする」ことに対して補助金を支給する制度)などを通じて、実質的な生産調整が継続されている。 農水省「米政策の見直しに関する説明資料」によると、2023年の全国作付面積は約134万ヘクタールで、これは2010年比で約15%減だ。 令和の米騒動と言われる事態がなぜ発生したかを振り返ってみれば、米の需要量を少なめに見通し、それに合わせて供給量を少なめに設定したところ、2023年に天候不順や外国人客による需要望などが発生して、需給が逼迫し、24年の夏に、スーパーの棚から米が消えるという「令和の米騒動」が発生したのだ。 米の需要が長期的に減少しつつあることは事実だ。しかし、そうではあっても、それ以上に米の生産を事実をそれ以上に削減すれば価格は上昇する。 いま求められているのは、硬直的な生産制限から脱却し、市場需要に応じた柔軟な供給体制を構築することである。 輸入自由化への強い反対 まず必要なのは、輸入の増加だ。 財務省の「貿易統計」によれば、2023年のコメ(精米およびもみ・玄米を含む)の輸入量は約74.3万トン、主な輸入相手国は、アメリカ、タイ、オーストラリアだ。しかし、このうち小売市場に出回るのは、1割未満と推定されている。 このように、日本のコメ市場は世界のマーケットから切り離されたものであるために、これまで見たような投機的な動きで価格が動くような事態になってしまうのだ。 輸入枠を拡大し、関税なしでの一般消費市場への供給を進めることは、価格引き下げ効果をもたらす可能性がある。また、これはアメリカとの関税交渉において有利な交渉材料ともなりうる。 だが、その実現のためには、国内農業団体、特にJAグループの強い反発が伴う。農水省「農業者意識調査」(2022年)によれば、約65%の水稲農家が「米価維持のための輸入制限は必要」と回答しており、政策変更には慎重論が支配的だ。 鉄の三角形 「鉄の三角形」とは、農業協同組合(JA)、農水省、農水族議員から形成される強固な利益集団だ。 JAは、単なる流通業者や金融機関にとどまらず、肥料や農薬、機械の販売、さらに共済、信用事業に至るまで広範な業務を担い、農村地域社会の中核的存在になっている。その役割は、単なる農家支援にとどまらず、農業政策の実質的な形成主体としても機能している。実際、JA全中(全国農業協同組合中央会)を頂点としたネットワークは、地域JA、県中央会、全国連系組織によって構成され、その影響力は国政にも及んでいる。 JAグループの職員総数は、2023年時点で約14万人とされており、これは大手民間企業に匹敵する規模だ。これだけの人的資源を背景に、JAは農水省や国会議員に対して政策提言・陳情を行っている。コメの生産調整政策や価格維持策をめぐっても、強い発言力をもつ。また、農家の政治的動員力を掌握する存在として、選挙にも間接的な影響を与える。 なぜ国内の生産を制約するのか? それは米価格の下落を防ぐためである。それによって米生産農家を維持するのだ。 このような構造が続けば、米価格の高騰が、今後も起きる可能性がある。 先物市場の導入などの根本的改革を コメの生産は、1年後の価格を予測して、個々の農作者が決める。そこに大きなリスクがあることは間違いない。こうしたリスクはどんな事業についてもあるが、米作の場合には、生産者が大企業のように価格変動に対応できるような大規模な生産をしているのではなく、個人であると言う点に問題がある。 これに対する対処が必要だ。一つの方策として、コメ価格の先物市場を整備する方法が考えられる。実は、コメ価格の先物市場は、江戸時代に、世界に先駆けて、日本で作られたものだ。 こうした提案を含めて、参議院選挙の争点として議論すべきだ。 【兼業農家にとっては「退職金代わり」】減反をやめればコメの価格が下がるのに、農水省とJAが減反にこだわる「納得の理由」

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