走りと質感を極めた“軽ツアラー”「ソニカ」の真価とは 　生産終了となった軽自動車を振り返ると、時代を先取りしすぎたために短命に終わった「隠れた名車」が存在します。 　ダイハツ「ソニカ」も、その1台といえるでしょう。 シートもスゴい！ ダイハツの軽ツアラー「ソニカ」とは 【画像】超カッコいい！ これがダイハツの「小さな高級ハッチ」です！ 画像で見る（30枚以上） 　ソニカは、2006年6月から2009年6月までのわずか3年間販売された軽自動車です。 　当時の軽自動車市場では、スズキ「ワゴンR」やダイハツ「タント」に代表されるハイトワゴンが主流を占める中、ソニカは全高1470mmという低いフォルムに加え、走行性能や上質な内外装に重きを置いた「ツアラー志向」の個性派でした。 　販売は振るわなかったものの、その完成度の高さは今なお語り継がれています。 　開発コンセプトは「爽快ツアラー」。そのルーツは、2005年の東京モーターショーに出展されたコンセプトカー「SKツアラー」にありました。 　当時の軽自動車では、価格の安さや手軽さを訴求することも多かったなか、「包み込むような快適なクオリティ空間」と「爽やかで躍動的なスタイル」を融合させ、長距離ドライブを心から楽しめる上質なクルマを目指したという、異色の存在でした。 　ボディサイズは全長3395mm×全幅1475mm×全高1470mm。ワイド感を演出するロングフォルムと低重心設計によって、軽快な走りと洗練されたスタイルを両立しています。 　ボディカラーはメタリックやパール系を中心とした8色展開で、特殊クリア塗装「プレミアムクリアコート」によって、宝石のような深みのある質感を実現していました。 　インテリアもまた、軽自動車とは思えない上質な空間が広がっていました。 　ダッシュボードからドアまで一体的に繋がる「サラウンドインテリア」に加え、当時のトヨタの最高級セダン「セルシオ」を参考にしたといわれる座り心地重視の「ツアラーベンチシート」、レッドやブラックのアクセント、MOMO製革巻ステアリングなど、随所にプレミアム志向の仕立てが施されていました。 　ホイールベースは2440mmと長く、室内長1915mm・室内幅1320mmという居住性も確保され、低い全高にもかかわらず実現されたクラストップレベルの室内幅は特筆すべき点です。 　全車に搭載されたのは、直列3気筒DOHCインタークーラー付きターボ「KF-DET」型エンジンです。 　最高出力64PS・最大トルク103N・mを発生し、CVTとの組み合わせによりスムーズで力強い走りを実現していました。上位グレードには7速マニュアルモード付きCVTも採用され、よりスポーティな走行感覚を楽しめる設定でした。 　グレード構成は「R」「RS」「RS Limited」の3種類で、上位モデルになるほど15インチアルミホイールやディスチャージヘッドライト、オートエアコン、自発光メーター、キーフリーシステムなど、当時上級モデルにしか採用のなかった装備が標準設定される充実ぶりが際立っていました。 　また4WDモデルも設定され、寒冷地ユーザーのニーズにも応えていました。 　新車価格は、前期型で118万6500円（R・FF）〜154万8750円（RS Limited・4WD）。後期型では120万7500円〜155万9250円と、軽自動車としてはやや高めの設定でしたが、装備や性能を考慮すれば納得の価格帯だったといえるでしょう。 　しかし、ハイトワゴンが主流だった当時の軽自動車市場では「広さ」や「利便性」を重視する傾向が強く、ソニカの「走り」や「質感」といった魅力は、一般ユーザーにとってややニッチな提案でした。 　その結果、生産台数は約3万台にとどまり、2009年には早期終了を迎えることとなりました。 ※　※　※ 　走りと質感、デザインを融合させた「軽の高級ツアラー」というソニカのユニークな成り立ちや高い完成度は、いま再び評価されつつあります。 　時代のニーズには合致しなかったかもしれませんが、多くのクルマ好きをひきつけてやみません。