「私も悪いんです。それまでホストにハマった経験がなかったとはいえ、彼を好きになって、依存して、家族カードまで渡してしまいました。その上、刑事事件にも発展してしまいました」──近年、女性客に多額の売掛金(ツケ)を負わせたり、売春をあっ旋させたりするなど、社会問題となっているホストクラブの“悪質営業”。取材に応じた女性・Aさんもまた、ホストクラブの闇を垣間見たひとりだ。 【写真】悪質ホストの“色恋営業”LINE〈200万払う〉〈今までありがとう〉 Aさんは関西出身で、主に不動産などで生計を立てている経営者だ。資産にもある程度の余裕があったことから、ホストの世界へ足を踏み入れてしまったという──。【前後編の前編】 警視庁によれば、ホストクラブに関する相談件数は2021年と2022年では約2000件だったが、2023年には2675件と急増。昨年も2776件の相談が寄せられており、その数は年々増加している。問題の深刻化をふまえ、同庁は取り締まりの強化と対策に乗り出している。全国紙記者が語る。 「警視庁は2024年7月から、一連の問題に関して『悪質ホストクラブ対策検討会』を設置。同年12月に風俗営業法の改正原案をまとめ、今年5月20日には通常国会で正式に可決・成立しました。 改正法は、具体的な禁止行為を盛り込んだ内容になっています。特に客の恋愛感情につけ込んだ“色恋営業”で飲食させることなどを行政処分の対象とする可能性があると定めたことに、業界内外から注目が集まりました」 近年、ホスト業界には“色恋営業”という言葉自体は広まっていたが、その定義はあやふやだった。しかし今回、改正法の条文でその成立要素と定義が明文化されたことで、従来のホスト営業のあり方が改めて問われることになった。 「悪いホストもいることを知ってほしい」 Aさんも、“色恋営業”にハマってしまった1人だ。彼女は今回、NEWSポストセブンの取材に応えた理由について、こう述懐する。 「それまでホストはまったく経験がなく、まさかあんなにハマってしまうなんて思いもよりませんでした。 お店に通う直前に離婚したばかりで、担当についたホストのX氏にどんどん依存するようになりました。それまでは薬を飲まなければ安眠できなかったけど、彼と一緒にいるときはぐっすり眠ることができて、『この人しかいない』と思い込んでしまった。結果として、いろんなひどいことをされて、深く傷つきました。 もちろん、私に落ち度があることはわかっています。私も大人ですし、自己責任の部分も大きいって。でも今回の取材を受けることにしたのは、ホストの中にはタチの悪い男がいること、そして私のように、どんな女の子でもホストにハマりすぎてしまう可能性があることを少しでも知ってほしくて……」 Aさんがある有名ホストクラブに足を運んだのは2024年4月下旬。そこは業界内外でも有名な元ホストが運営するグループの北海道・すすきの支店で、このときAさんはホスト好きの友人から誘いを受け、軽い気持ちで訪店したという。 “色恋営業”の常套句「営業とかじゃないんだけどなあ…」 「その時、私の担当として席についたX氏の顔はどタイプでした。けど、私より友達の方が盛り上がっていたし、そもそも付き合いみたいな感じだったから、めちゃくちゃ盛り上がったとかではなかったんです。それでも、連絡先は交換しちゃって……。 彼は友人から私の話を聞いていて、ある程度お金があることは事前に知っていたみたい。なので、最初から目をつけられていたんだと思います」 AさんはX氏とLINEを重ね、約1週間後に再び会うことになった。この日は店休日だったが、2人で食事をともにすることになったという。その後の流れでホテルに誘われたことから体を重ね、X氏との距離が急速に縮まっていった。 「最初のころは、わざわざ車で迎えに来てくれたり、同伴のご飯も必ず行ってくれたり、すごく優しかった。もともと、遠方に住んでいたので2回目に遊んだときからまた1か月くらい会えなかったんですけど、その間も毎日LINEでやりとりして、1時間以上通話することもありました。 X氏から『早く帰って来て』『拗ねてたの? かわいい』とか恋人みたいな言葉を送られてくることもあれば、『脱いでる写真みせて』と頼まれて、写真を送り合って自慰行為をしたこともあります。 そのうち、X氏から『俺しか見なくていいよ』とか頻繁に言われるようになりました。あるとき私が『これがいわゆる色恋営業?』と冗談で聞くと、『どれが色恋なの(笑)。ホントのことしかないよ』『ホスト(の営業)とかじゃないんだけどなあ』って……。私はそれを信じたんです。 そして6月8日から、ホストクラブの近くへ一時的に引越しをすることになったので、本格的にお店に通うようになりました」 それから2人の距離はさらに近づいたようだ。LINEには親密なやりとりが残っている。 〈都合いい関係望んで始めたのにX君だけには何か違うから危なーい〉(Aさん) 〈ちゅーしたら魔法かかるかも? でも俺も求めてるもーん〉(X氏) 6月から7月の間でAさんがX氏に貢いだ額は500万円以上。一度の請求額が100万円近いときもあったが、Aさんはクレジットカードなどで問題なく支払いをしていたという。8月に入ってからも数十万円単位で飲食を繰り返していたが、ここで刑事事件にも発展するある“重大トラブル”が起こってしまう──。 (後編に続く) 情報提供募集 「NEWSポストセブン」では、ホストクラブに関するトラブルについての情報・タレコミを募集しています。情報提供フォームまたは、下記の「公式X」のDMまで情報をお寄せください。 ・情報提供フォーム:https://www.news-postseven.com/information XのDMはnews_postsevenまでお送りください。