コンセプトカーの試乗ってどんな感じ? 走りは期待外れ 英国記者の視点

加熱前の料理と同じ でも試乗記には…… 「知らない方がいいでしょう。幻想を壊し、かつてモーターショーで浴びたきらびやかなライトと観客の歓声が台無しになってしまうから」 「コンセプトカーが実現しなかったのは残念だと思いますか? 素晴らしい。あの美しい、儚いアイデアを現実でぶち壊すのはやめておきましょうか」 マツダが2006年に公開したコンセプトカー『鏑(かぶら)』 ひどく冷淡に思われるかもしれないが、これは、コンセプトカーに試乗した感想を求められたときの筆者の決まり文句になっている。コンセプトカーへの試乗は、何よりもまず大きな特権であり、またとない機会であり、そして確かな信頼の証でもある。このような体験は、いつも特別なものだ。 しかし、正直なところ、コンセプトカーは見るためのものだ。アイデア、性能、そして可能性を探るためのものだ。特に、技術的に大胆で革新的なものは、大きな魅力を感じる。 しかし、実際に運転するとなると話は変わる。シーフードラザニアにソースとチーズをのせたら美味しそうに見えるかもしれないが、オーブンで30分以上焼いてからでないと食べられないだろう。 問題は、コンセプトカーが期限ギリギリに完成し、安っぽい塗装がまだ乾かないうちにショーの会場に運ばれ、皆から賞賛を浴びた後、その熱狂はすぐに冷めてしまうことだ。 以降、メディアで大きく取り上げられることはあまりない。それもあって、筆者のような人間が試乗する機会を得られるのだが。 面白いことに、コンセプトカーは運転するだけでも大変な思いをするのだが、試乗記を書くのも同じくらい大変だ。主な理由は、実際の走行性能などまったく無関係だからである。 コンセプトカーはしばしば遅くて、扱いにくく、騒々しく、臭く、不快で、乗り心地が悪い……。しかし、それは問題ではない。そんなことは絶対に書いてはいけない。誰もそんなことは知りたくない。興味深い部分だけを拾い上げるのだ。 量産バージョンに引き継がれる可能性のある部分を絞り込み、そこを掘り下げる。それがジャーナリストというもの。 筆者がこうしたやり方について学び始めたのは2006年、新しいマツダのスポーツカーを運転する機会に恵まれたときだった。『鏑(かぶら)』を覚えている人は、ぜひ挙手をお願いしたい。 とても良い外観だ。鏑はMX-5(日本名:ロードスター)のエンジンを搭載した3+1クーペで、当時のデザイン責任者である米国人のフランツ・フォン・ホルツハウゼン氏(現在はテスラのカラーリング部門を率いている)が考案した、左右非対称レイアウトのクルマだった。RX-8にも似た、素晴らしいアイデアだった。 筆者はこのクルマのデザインが大好きだった。記憶では、サスペンションはただシャシーに装着しただけで、乗り心地はまるでゴーカート。ステアリングもアシスト機構が故障した大型トラックのような感覚で、試乗中はほとんど、巨大なホイールがアーチライナーに擦れ続けるという状態だった。 しかし、筆者が書いたレポートでは、そのような細かいことで読者を心配にさせるような真似はしなかった。なぜなら、鏑の量産計画がマツダの経理担当者に承認されるチャンスをできるだけ増やしたかったからだ。その結果は、ご存じのとおり。 2年後、筆者は特別に閉鎖されたマイアミの高速道路で、アウディの12気筒ディーゼルエンジン搭載のR8ショーカー(R8 V12 TDIル・マン)を運転した。このような機会は滅多にない。 このクルマは最大102kg-mのトルクを発揮するはずだった。しかし、数週間で製作されたショーカーだったため、実際にはアウディA4の6速マニュアル・トランスミッションと、51.0kg-mしか出ないECUが搭載されていた。 長年にわたり期待を裏切ってきたコンセプトカーの中には、2010年のプジョーの電動耐久レーサー『EX1』もある。 しかし、2013年の素晴らしいジャガーC-X75や2022年の驚異的なアリエル・ハイパーカーは、まったく別の体験だった。ただし、これらはショーカーではなくプロトタイプだったからだ。プロトタイプはまた別の話である。

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