引き続き「東京いずみ幼稚園」(東京都足立区)で力を入れて行われている音楽教育「ミュージックステップ」の手順を解説する。前回は音楽とは無関係にみえる「お話」を先生が聞かせるところで終わったが、そのあとに続く“リズム”を使った活動「リズム打ち」とはどのようなものだろうか。小泉敏男園長の新刊『最高の育て方事典』よりお贈りする。 前編記事『「気づく」力が伸びる! IQ120の子を続々輩出する幼稚園が40年続ける音楽教育「ミュージックステップ」とは何か』より続く。 「みんなでそろう」ことの心地よさを経験する 引き続き、ミュージックステップの初歩の部分を説明していきます。前回はお話を聞いて、子どもたちに次の活動への心構えをつくってもらうところまで行きました。続く「音を聴く」活動でやることは、実に簡単です。 「おへん〜じ」というピアノの曲が流れてきたら、そのリズムに合わせて「はい」と返事をしながら、子どもたちがテキストの所定の箇所を指で押さえる。 これだけですから、子どもたちは難なく課題をクリアします。 そこで今度は音を聴き、それに合わせて手を打つ「リズム打ち」へと移ります。 先生「とっても上手にできました! 次は、『はい』のところで、みんなで手をたたいてみましょう。できるかな?」 子ども「できる〜!」 子どもは自信満々でこう答えるかもしれませんが、最初のうちはそろいません。 しかし何度も挑戦していると、「おへん〜じ」の歌と手拍子がそろうときが、必ずきます。 子ども「できた!」 先生「そう! よくできたね! 手拍子がピタッとそろって、気持ちいいね!」 これが一音節の「リズム打ち」という活動で、できた瞬間を逃さず先生がほめることで、子どもたちは集団の中で全員がそろう一致感、一体感、心地よさを体験します。 あとは、より難しいリズムに合わせた「リズム打ち」へと進化させていきますが、「そろう」ことの心地よさを知っている子どもは果敢に挑戦し、上手になっていくでしょう。このように多くの「できた」を体験できるのも、ミュージックステップの特徴です。 「返事をする」「みんなとそろえる」ことの大切さが学べる活動 ここまでがリトミックからリズム打ちまでの流れですが、以上を通じて子どもは、リズムを感じてそれにのることを覚えます。同時にルールを守ること、返事をすることの意義を体感し、「他者とそろう」ことの心地よさにも気づくことができます。 お話を「聞く」から音を「聴く」へと活動を滑らかに移行させつつ、無理なくステップアップしながら、生活全般に役立つ大切な規範を身に付けられるしかけが埋め込まれているわけです。 以上のような活動を体験してもらったあとで、いよいよ子どもたちに音階に触れてもらう「音との出合い」へと進みます。 コーデル奏で和音を体験する 「音を聴く」活動のなかで、園児たちはコーデルを使った演奏にも挑戦します。コーデルとは、吹くだけで主要3和音を奏でられる和音笛です。 全員でうまく演奏できたときは音が美しく重なった協和音を楽しめますが、少しでも間違えると不協和音が生じ、心地よさは失われます。そんな体験をするなかで、子どもたちはいっそう「そろえる」ことの大切さを実感します。 コーデルで子どもが体験できる音の世界は一気に広がります。インターネット通販で購入できるので、おもちゃとして用意してもいいでしょう。 ミュージックステップはまだ続きますが、このあとについては次回の記事に譲ります。 次回記事『才能は関係ない! くり返せば必ず効果が出る「音あて遊び」で、なぜ子どもに「絶対音感」が芽生えるのか』へ続く。 発達障害を抱える子どもたち…「5歳・9歳・13〜14歳」の時期がとくに要注意といえる理由