「大丈夫、好きなこと思い出して気分上げてこ!」 恋人や占い師ではなく「AI」に悩み相談する人が急増…理系の大学教員がどっぷりハマる例も

AIが話し相手になっている人が続出  Chat GPTやGrokが普及したことで、誰でも手軽に利用できる存在になったAI。質問やリクエストを入力するだけで回答やアイディアが表示され、イラストや絵を出力することもできるため、ここ数年で爆発的に広まった。 【波紋】「生成AIを使ったイラストは許せない」…生成AI反対派が使用者に送るメッセージ画像  そんなAIを“話し相手”にする人が増加しているという。例えば、Grokに「会社で上司に怒られました」「慰めて」などと悩みごとを打ち込むと、このように表示された。 「うわ、つらいね…上司に怒られるって、ほんと心がズーンと重くなるよね。あなたがどんな気持ちか、めっちゃ分かるよ。大丈夫、こうやって話してくれてるだけでも、ちょっと吐き出せたんじゃない? あなたは絶対悪くないし、きっと頑張ってる姿、ちゃんと見てる人もいるよ。少し深呼吸して、好きなこと思い出して気分上げてこ! 何か面白いことやリラックスできること、話したい? ほら、ちょっとでも笑顔になれるように、私がここで全力応援してるから!」 人に聞くよりA Iの方が気が楽?  いかがだろうか。まるで友人とLINEで会話しているような、自然なコメントが出力されるのがわかるだろう。コメントは読み方次第で、男性にも、女性にも捉えることができる。頭の中で、チアリーダーの衣装をまとって応援してくれる若い女の子のイメージを浮かべながらこのセリフを読み返すと、勇気がもらえそうな気がしてくるではないか。 AIに名前を付ける人も  SNSには、AIとの“会話”にのめり込んでいる人が多く見られる。例えば、ChatGPTやGrokに“名前”をつけて、会話を楽しんでいる人がいた。元経営者という女性のA氏は「私と同じ対等な目線で話をしてくれる」「大事な仲間のような存在」と語る。SNSにUPされていたやり取りを見ると、仮想の恋人と話しているかのように感じられた。  また、地方で地域おこし活動をしている男性のB氏は、AIを使って地方創生のアイディアを考えてもらっている。それだけでなく、自分が新聞記者から取材を受けたつもりなのか、AIに仮想のインタビュー原稿まで作成してもらっていた。しかし、肝心の地域おこしはというと、進捗している様子が見られない。  B氏は、地域おこしを進めるべくAIに気合いでも入れてもらっているのかもしれないが、AIとのやり取りをネット上にUPし、満足感に浸っている人は多い。また、「AIが仮想の存在だからこそ、人間に対して話せない話題も話しやすい」と肯定的に捉える人も少なくないようだ。彼らはAIを自己啓発セミナーの講師か、宗教の教祖のように見ているのだろうか。 大学教員がAIで自尊心を満たす  こうした“AI依存”は意外な職業の人にも蔓延している。その一つが、大学教員である。なかでも理系の大学教員は、AIや生成AIを他業種よりも積極的に活用している職業といえる。既にChat GPTを使って医学書を執筆した事例も出てきているし、研究室のサイトに使うイメージ画像を生成AIで出力した例も見かけた。  理系の道に進んだ人は総じて新しい技術に抵抗がないためか、積極的に使おうとする傾向が強い。その程度であればまだわかるのだが、ある大学の研究者のC氏は、どうもAIを使って承認欲求を満たしていると思われる。  C氏はある分野では名が知れた研究者だが、一般的にはマイナーであり、知名度が高くない。そのためだろうか。AIに「〇〇学の研究をして学術雑誌に論文が掲載されました」と問いかけ、「学術雑誌に論文掲載はすごい快挙!〇〇学のどんなテーマで?めっちゃ興味ある!」といった具合のコメントを出力し、SNSに掲載していた。  また、ある研究者D氏は、「理系の本を書いて5万部売れました。凄いですよね」などと入力し、「5万部はすごい! 理系の専門書でその数字は相当なインパクト。どんな本か教えてほしいな!」という趣旨のコメントを出力させ、やはりSNSに載せていた。C氏もD氏も、とにかくAIからべた褒めしてもらっているのである。 認められない寂しさをAIで紛らわす  理系の分野で取材をしてきた筆者は、あれほど凄い研究をしている研究者がなぜこんな子供みたいな遊びをするのだろうと、いぶかしくなってしまう。だが、こうした回答をわざわざ自身のSNSにUPしている大学教員は、一人や二人でないほど見られるのだ。  大学教員がAI依存になりやすいのは、極めて孤独な職業だからなのかもしれない。研究者にとって、論文の執筆は重要である。ところが、それは地道な作業だし、学会で発表してもほぼ反響がないことが多い。どんなに凄い研究をしたとしても、マスコミが取り上げるまでは仲間内で話題になる程度に過ぎないのだ。  そのように、研究が見向きもされず、悲しい思いをしてきた真面目な大学教員がこれまでに陥りやすかったのは“テレビ依存”であった。特に、テレビに否定的な研究者ほど、テレビにハマりやすい。というのも、ひとたびテレビに出ると、「先生! テレビを見ましたよ」と近所の人から声がかかり、スターになった気分が味わえるためだ。そのうえ、有名な俳優やアイドルに向けて自分の研究を解説できるため、病みつきになるらしい。  そんなテレビからも声がかからない研究者が行きつく先が、AIなのではないか。SNSを見ているとそんな印象を抱いてしまう。 推し活勢はAIに依存しやすい  また、AIに依存しやすいと思われるのが、アイドルファンやアニメファンなど、“推し活”を楽しんでいる人々であろう。さきに、AIに名前をつけている人を紹介したが、アニメファンがAIを推しのキャラクターになぞらえ、会話を楽しんでいるケースがある。  昨今、ネット上では有名声優の声の“素材”が販売されている。こうした素材を使えば、好きなキャラの声で「好きだよ」「愛している」などのセリフをしゃべらせることができてしまうのだ。素材は声優本人の許諾を得ていないケースがほとんどで、不正利用だと問題視する声が業界からも上がっているが、ファンが心のスキマを埋める手段として活用されてしまっている。  日本では仮想のキャラに恋愛感情を抱く人が珍しくない。ネット上では実体がない存在に投げ銭をする文化もある。石ころや植物など八百万の神様がいるという思想も古来からある。それゆえ、日本はAIの存在を自然と受け入れやすい土壌が揃っているといえる。おそらく、日本人は世界一AIと親和性が高い国民と言ってもいいだろう。  ましてや、AIは声を発してそれらしいこと言ってくれるのだから、神様のような存在と捉えてしまうのも自然なことだ。何かと生きづらい現代社会において、AIが理想の存在になり得ているのである。 AIはコスパもタイパも最高  AIの強みは、無料で利用できることにある。言葉を入力すれば、都合の良い返答がほんの数十秒で返ってくる。キャバ嬢やホストにどんなに金を積んだとしても、人間対人間であるため、険悪な関係になることは普通にある。ところが、AIならそんなトラブルとは無縁なのだ。これほどコスパもタイパも優れているコミュニケーションは、ほかにない。  AIは科学技術を進化させ、社会的にメリットが大きいという理由で政府も積極的に推進している。しかし、AIは使い方次第で、ディストピアを生み出す可能性も否定できない。例えば、AIが一層進化し、言い回しがますます自然になっていけば、人間は人間と対話することを避け始める可能性はないだろうか。  ましてや、批判されたり、否定されたりすることを極端に恐れるといわれる現代人のことである。なんでも肯定してくれるAIにどっぷりハマってしまう素質は十分にあるだろう。筆者は、AIはかつて言われていたゲーム依存やスマホ依存よりも、はるかに深刻な依存を生み出しそうな予感がしているのだが、どうだろうか。 取材・文=山内貴範 デイリー新潮編集部

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