７月のアジアカップ（中国・深圳）に向けたバスケットボール女子日本代表が本格的に始動した。 　２２日から都内で練習が始まった第１次強化合宿に、２０１６年リオデジャネイロオリンピック代表で１メートル９３のセンター、渡嘉敷来夢(らむ)（アイシン）が代表候補として復帰した。 　３３歳の渡嘉敷にとって日本代表での活動は、２３年アジアカップ前の強化合宿以来となる。０８年に高校１年生で日本代表候補に選出されて、長らくエースとして日本代表を引っ張ったが、２２年ワールドカップ（W杯）を最後に、近年は主要国際大会の本大会メンバーには選出されていない。久しぶりの代表活動でのパフォーマンスが注目される。 　２０年１２月に右膝靱帯(じんたい)断裂の大けがを負い、翌年の東京五輪出場はかなわなかった。その東京大会で日本は銀メダルを獲得。渡嘉敷は昨年のパリ五輪の選考にも漏れたが、ガード陣を手厚くした「走り切るシューター軍団」の布陣で臨んだ日本は１次リーグ全敗で敗退し、渡嘉敷がいなかった２度の五輪では日本の明暗が分かれた形だ。 　久しぶりとなる日本代表活動。２２日に取材に応じた渡嘉敷は「ロサンゼルス五輪を目指しているからここに立っているが、まずは（メンバー選考に）残りたい。（選から漏れた）パリ五輪は不完全燃焼だったからこそ、いま強い気持ちで代表に臨めている」などと決意を口にした。 中国の絶対的な高さへの対抗 　日本の当面のライバルはアジア女王の中国となる。２３年の前回アジアカップ決勝では７１−７３で競り負け、６連覇を逃した。その中国は今夏のアジアカップでも身長２メートル台の走れるビッグマンを複数、擁して日本の前に立ちはだかることが予想される。 　３５歳でチーム最年長の高田真希（デンソー）も「アジアでは頭一つ抜けた存在」とその強さを認めている中国に対抗してアジア女王の座を奪還するためにも、全盛期を過ぎたとはいえ、渡嘉敷の高さは大事な要素となりそうだ。 　さらに、渡嘉敷は代表チームで積極的に取り組みたいことがあるという。 　今年から就任したコーリー・ゲインズ・ヘッドコーチ（HC）（５９）は、オフェンスで目指す形として、５人の選手を３点シュートラインの外側に配置し、常に動き回るスタイルを標榜する。２２日の記者会見では「ガードもセンターもボールを自在に操り、ポジションレス（ポジションは関係ない）のバスケット」と述べている。 「ポジションレス」のスタイルのなかで 　渡嘉敷は、国内Wリーグで長年所属したENEOSからアイシンに移籍した２４〜２５年シーズンに、１試合平均１４・７１点で２季連続のリーグ得点王となり、チームの１部（プレミア）残留に貢献した。昨秋のリーグ開幕前には「ENEOS時代よりもいろいろなことをすると思う」と話していたが、ゴール下での存在感に加えて、アシストに回るプレーも多かった。 　日本代表の生命線の一つが３点シュートだが、渡嘉敷はWリーグでは入れ替え戦を含めた３０試合で１３本打って成功６本と、確率はともかく試投数が少なかった。インサイドのプレーを多くせざるを得ないというチーム事情もあったが、代表チームではスリーにも積極的になりたいと話す。「スリーポイントでみんなより劣っているところがある。（前が）空いたら思い切って打つ、ということを意識して練習もしているけれど、試合の中で打って、それが自信につながればいい。HCの求めることに合わせていきたい」と語った。 　ゲインズHCは現役時代にNBAで通算８０試合に出場し、日本リーグでプレーした経験も持つ。リオ五輪に向けた日本代表のアドバイザリーコーチとしてオフェンスの指導をするなど、女子代表との関わりも深く、渡嘉敷が若いころからの接点もある。今回の第１次合宿は「チームの土台作り」という位置づけだが、３３歳のベテランをどう使い、どんな新生日本代表を作り上げるのか。（編集委員　千葉直樹）