認知症リスクを45％も下げられる 2024年、イギリスのトップ医学ジャーナル『Lancet』の発表を受けて、各国の認知症研究者たちに衝撃が走った。鳥取大学教授で、日本認知症予防学会理事長の浦上克哉氏が解説する。 「Lancet誌は数年に一度、世界中の認知症予防に関する研究成果をサーベイして、科学的にエビデンスがある『認知症のリスク因子』を発表しています。昨年の最新版では新たなリスク因子として、高いLDLコレステロール値と視力低下の2つが追加されました。 同時に、この2つを含めた14のリスク因子をすべて取り除ければ、認知症が発症するリスクを45％下げられるとわかっています。つまりこれらを意識して暮らせば、認知症になる確率をおよそ半分にまで減らせるわけです」 これまで医学界では、「認知症は予防できない」という見方が主流を占めていた。しかし研究が進むにつれて、効果的な予防法が次々と見つかってきている。最新の知見に基づきながら、認知症リスクを下げる科学的な方法を紹介していこう。 冒頭で紹介した研究によると、高LDLコレステロールは認知症リスクを7％も上昇させる。次ページに14のリスク因子を挙げたが、単純計算で肥満やアルコール過剰摂取の7倍も認知症リスクを高めるのだ。 「かつて日本では、高血圧が原因で脳血管性障害を引き起こし、血管性認知症になる人が多かった。ところが最近では、認知症患者のおよそ7割がアルツハイマー型認知症です。食生活が欧米化して、塩分以上にコレステロールをよく摂るようになったことが原因でしょう。 日常生活で特に気をつけるべきなのはマーガリン。LDLコレステロールを大きく増やす作用があるため、パンに塗るならバターのほうがオススメです」（浦上氏） この時期は山菜がおすすめ 日本認知症予防協会代表理事の佐々木誠氏が勧めるのは、抗酸化作用のあるポリフェノールが含まれる食品を意識的に摂ることだ。 「赤ワインに多く含まれているのは有名ですが、飲みすぎるとかえって認知症リスクを高めてしまう可能性があります。実は野菜が旬を迎えると、ポリフェノールが多く含まれるとわかっている。この時期であれば、わらびや山うどなどの山菜がオススメですね」 認知症を予防するには、十分な睡眠が欠かせない。おくむらメモリークリニック院長の奥村歩氏が話す。 「脳内にアミロイドβという物質が蓄積していくと、アルツハイマー型認知症を引き起こすことがわかっています。人間は熟睡している夜間に、日中に溜まったアミロイドβを洗い流している。つまり十分に眠るだけでも、認知症の予防になるわけです」 奥村氏によれば、不安を引き起こすオレキシンというホルモンが過剰に分泌されると、人は熟睡できずアミロイドβが蓄積してしまう。オレキシンを抑制するためには、昼間のうちに外に出て、太陽の光を浴びながら体を動かし、ノルアドレナリンやセロトニンなどの脳内物質を活性化させるといい。 認知症リスクを下げる方法は、まだまだほかにもある。後編記事『ウォーキング「１日１万歩」はむしろ逆効果…「7000歩」で止めておいたほうがいい理由』で解説する。 「週刊現代」2025年5月26日号より 【つづきを読む】ウォーキング「１日１万歩」はむしろ逆効果…「7000歩」で止めておいたほうがいい理由