「最近のおすすめメニューは、豚しゃぶカレーに旨辛にんにくとマヨネーズトッピングです。私もよく食べてます」──スパイスの香り漂う店内で、笑顔でそう話すのは、「カレーハウスCoCo壱番屋(ココイチ)」などのFC(フランチャイズ)運営を行う株式会社スカイスクレイパー代表取締役社長・諸沢莉乃氏(23)だ。 【写真】ココイチ制服を着て、接客する諸沢社長 同社は都内を中心に「CoCo壱番屋」など27店舗をFC展開し、社員・アルバイト合わせて400人超が在籍する。そのトップに立つ彼女が社長に就任したのは、2024年5月。あれから早くも1年が経った。 もともとは、15歳のときにアルバイトとして入社。そこから一気に階段を駆け上がり、若くして社長の座に──。一体なぜ? そして今、何を思うのか。業界の今と彼女のこれからを聞いた。【前後編の前編】 ──まずは簡単に自己紹介をお願いします。 「改めてとなると逆に緊張しますね(笑)。株式会社スカイスクレイパーの代表取締役社長を務めています、諸沢莉乃です。高校1年、15歳のときにアルバイトとして入社して、20歳のときに創業社長(現会長)から『社長やってみないか』とお話をいただきました。それから2年間、修行して、22歳で就任しました」 ──まさに異例の抜擢ですよね。社長に就任してからどんな1年でしたか? 「本当に、あっという間でした。気づいたら1年という感じです。でも、何もできてないと思うことのほうが多くて……。社員さんもバイトさんも、会長も、素敵な方ばかりで私ひとりではなくみんなで一緒に進んできた1年でした。プレッシャーを感じるというよりも感謝の気持ちが大きいです」 ──この1年で、特に印象に残っている出来事はありますか? 「今年4月に新卒の方たちが入ってきたのですが、その方たちの採用から育成までを担当したんです。それが初めての経験で。自分の手でひとつずつ関わってきたので、思い入れも大きかったです」 ──実際、新入社員のみなさんもすごく楽しそうに働かれてました。あれは社長の“人柄効果”じゃないですか? 「ええ〜、そんなことないです(笑)。昨年は新卒が2名だけだったんですけど、今年はなんと7人も入社してくれて。職場見学に来た学生の方も、去年は2人だったのが今年は30人。面接も13人と行なって、その中から7人が入社してくれました」 ──社長になって、仕事の“見え方”って変わりましたか? 「ありますね。他の飲食店に行っても、“あ、オペレーションが違うな”って、つい見てしまいます。この前、行ったもんじゃ屋さんが、すごく素敵で。学生さんたちが声を掛け合って、生き生きと働いてるのを見たら感動しちゃって。気づいたら涙が出ていて、食事に全然集中できませんでした。覚えてるのは、1杯目のビールの味だけ」 ──SNSの影響などもあって、飲食業界って本当に変化が激しいですよね。そのあたりはどう感じていますか? 「めちゃめちゃ思います。最近でも異物混入の事例がありましたが、、“対岸の火事”とは思えません。“バカッター”みたいなこともあるし、毎日ドキドキです。でもだからこそ、人としてどうあるかを伝え続けるようにしていて。 みんながみんな一生『ココイチ』で働くわけじゃないと思うんです。だから、“損得”じゃなくて“善悪”を教える。たとえば大きな声で挨拶をするとか、そういう、人としての基本を大事にしてます」 ──社長って、現場との距離が出てきがちだと思うんですけど、どうですか? 「現場に入り続ける社長でいいと言って頂けたので“距離”は感じません。先日も、新潟で働いてる新卒の方に会いに行って、現場にはいっていました。 だから休みも、月1〜2回くらいのこともあります。ゴールデンウィークもバリバリ(シフトに)入ってます(笑)。でも、お店が混んでいて、伝票がどんどん並ぶあの感じが大好きなんですよ」 ──現場と経営、両方をこなすのは本当に大変そうですが。 「正直、数字にはめちゃくちゃ弱いなと。経営会議は周りに助けてもらいながら勉強中です。でも、そこはもう周りに頼ってます。あと、弊社には”日報文化”というものがあって、従業員の皆さんがその日の仕事のことや自分の思いを書いてくださるんです。それを、毎晩全部読みます。みんなが出勤する朝には、コメントを返しておくようにしていて。1時間半くらいかけて、170件。でも、それが私にとって大事なルーティンなんです」 ──毎日170件とはすごい情熱ですね! そうした情熱のなか駆け抜けている2025年。会社の目標は達成できそうですか? 「それがですね、ちゃんといけそうなんです。目標を立てたときから、みんなでそこに向かって頑張ってきました。いま27店舗なんですけど、これからは毎年1店舗ずつ、着実に増やしていきたいと思ってます!」 全力で駆け抜けた社長としての1年。けれど、その裏では──プライベートにも大きな変化があったという。後編では“諸沢社長”の、もうひとつの顔が姿をあらわす──。 (後編につづく)