【特集|戦後80年③】1500人あまりが犠牲に…今も鮮明に残る空襲の記憶「書かなければ」使命感、86歳のアマチュア画家の願い【新潟】

シリーズでお伝えする「戦後80年」。絵を通して長岡空襲の体験を伝えている男性。語り部として戦争の記憶を伝える人も年々少なくなる中、悲惨な経験を後世に残そうと、当時の様子を描いた86歳の男性がいます。作品に込めた思いや、平和への願いについて聞きました。 降り注ぐ焼夷(しょうい)弾から逃げる市民。こちらは、遺体を火葬している様子を描いています。長岡戦災資料館では、長岡空襲の悲惨さを後世に伝えようと絵画展が開かれています。 空襲を体験した人たちが描いた56点の絵- どの作品も当時の様子がリアルに描かれています。 ■来館した人 「戦争があって苦しい思いをいっぱいしていたと感じた。」 「こういう不幸が二度と起こらないよう、心がけていかなければいけない。」 1945年8月1日午後10時30分。 アメリカ軍のB29による焼夷(しょうい)弾爆撃が始まりました。1488人の尊い命が失われ、市街地の8割が焼失しました。 長岡市に住む伊丹功さん、86歳。6歳の時に長岡空襲を経験し、19年前に空襲をテーマとした水彩画を11点描きました。このうち4枚が資料館に展示されています。 ■伊丹功さん 「市で(空襲の)体験画を募集するということで上手に描いたつもりはなくて、今まで私が経験したことを知っていただきたいという気持ちで出した。」 絵の経験はほとんどありませんでしたが、空襲の記憶を風化させないため「書かなければ」という使命感が芽生え、自然と筆を走らせたといいます。 ■伊丹功さん 「語り部は、絵がなくても自分の体験談を現実的に話ができるが、私はそれができない。大変な経験を教える役目もあると、今だんだん自覚ができ始めた。」 長岡空襲の記憶は、今も鮮明に残っています。当日の夜、父親の叫び声で飛び起きました。 ■伊丹功さん 「(自宅の)高窓を抱っこされながら見たら宮内方面が真っ赤に燃えていて、これは普通の火事じゃないと思った。掛け布団を頭からすっぽりかぶって、みんなで裏口から出た。」 空襲が始まると、長岡市の市街地にある自宅から家族9人で信濃川の土手に避難しました。幸い家族は無事でしたが、自宅は焼け、街は火の海に- 一夜明けると景色は一変し、普段は見えない遠くのものが見通せたといいます。 ■伊丹功さん 「長岡の町が燃え上がり、(遠くの)長生橋を上り下りする坂がすぐそこに見えた。(町は)まる焼けで、ただ平らで“焼け野原”だった。」 伊丹さんは、その時の状況を絵に表しました。もっとも印象深い場所を描いた作品があります。自宅近くの柿川にかかる小畑橋付近です。 ■伊丹功さん 「ここに(燃えている)材木があった。避けて避けて逃げてきた記憶がある。」 勢いよく燃える材木と高く上がる炎が、今も伊丹さんの胸に焼き付いています。 一方で、変わらないものもあるといいます。 ■伊丹功さん 「2つになっているのが今でもある石碑。石は燃えないから。」 実際に伊丹さんが目にした場所を案内してもらいました。 ■伊丹功さん 「(Q.柱はこの家のもの?)こっちの家のもの。自分のものと言っていたので。」 当時、神社の入り口があったそうです。今も石の柱が残されています。伊丹さんはこの場所に来ると、80年という年月の長さを感じるといいます。 ■伊丹功さん 「家ひとつなかったんだから変わった。とにかく“まる焼け”なんだから。」 ロシアによる軍事侵攻やイスラエル・パレスチナ情勢など、世界では緊迫した状況が続いています。伊丹さんは戦争のない世の中になることを願っています。 ■伊丹功さん 「戦争がいかに残酷で人間の利益にならないということと、『戦争はするなよ』『平和は大事だよ』と思う。」 伊丹さんは洋品店を営みながら、現在もアマチュア画家として絵を描き続けています。長岡空襲はしばらく描いていないといいますが、記憶があるうちにまたチャレンジしたいと考えています。 ■伊丹功さん 「今生きているうち、命の続く限りはこういう機会に参加させてもらってもいいと思っている。」

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