「コメは買ったことがない」などの“コメ失言”で辞任に追い込まれた江藤農水大臣。新たに就任したのは小泉進次郎氏。自らを「コメ担当大臣」と意気込みました。こうした中、石破総理は21日、コメ価格を「3000円台に」と強調しました。 【写真を見る】「コメ買ったことない」江藤氏の問題となった発言 ※動画内で紹介したアンケートは22日午前8時で終了します。 新農水大臣に小泉進次郎氏「とにかくコメだ」 小泉進次郎 新農林水産大臣 「消費者に安定した価格でコメを供給できるよう、強力に推進する」 大臣の顔が変わっても、「コメの価格」が国民の最大の関心事であることに変わりはありません。 小泉進次郎 新農林水産大臣 「私の中では、今私がやらなければいけないことは、もうとにかくコメだと。もうコメ担当大臣だというような、そういった思いで集中して取り組んでいきたい」 新たな農水大臣として抜擢されたのは小泉進次郎氏でした。 21日の朝、官邸に入った江藤農水大臣。この後、石破総理に辞表を提出しました。 江藤拓 農水大臣 「所管の大臣として、極めて不適切な発言をしてしまった。このことは改めて国民の方々に心からお詫びを申し上げたい。トップを務めることが適切であるかといえば、私自身、私ではいけないのではないかという判断を自分自身でいたしました」 石破総理は、いったんは江藤大臣の続投を決めていましたが、一転、事実上の更迭となりました。 ——(続投の)判断を振り返って誤りではなかったのか 石破総理 「全て任命権者たる私の責任です。それはいかなるご批判であっても、それは任命権者として私がそれを受け止めるべき」 コメの価格が高止まりする中で、肝心の農水大臣が発した言葉。 江藤拓 農水大臣(18日・佐賀市) 「私もコメは買ったことありません。もうまさに売るほどあります、私の家の食品庫には」 その翌日、発言を撤回するか問われると… 江藤拓 農水大臣 「撤回というより修正ですね」 ——進退についてはどのようにお考えでしょうか 「進退?」 ——責任の取り方はどのようにお考えでしょうか 「責任の取り方?」 さらに苦し紛れだったのか、こんな発言も。 江藤拓 農水大臣(20日) 「(地元の)宮崎は、たくさん頂くと『売るほどある』とよく言うんですよ。ですから宮崎弁的な言い方でもあったんですけれども」 石破政権で閣僚が辞任するのは初めてのこと。新潟県の農家も呆れ顔です。 農家 「とっても腹が立ちました。こんなに苦労しているのに、コメは買わなくていいなんて。そんな発言は大臣としておかしいなと思っていました」 農家の手伝い 「それだったら佐渡に来て(コメ作り)やれよと。『やって苦労を考えてくれ』と思いがあった」 江藤大臣の地元、宮崎県からは惜しむ声も。 宮崎県民 「応援している立場だったので、辞任までしなくてもいいのかなと」 「コメ3000円台に」総理が明言 現場からは懐疑的な声も 政権にとって至上命題とも言える“コメの値下げ”。 21日の党首討論で石破総理は。 石破総理 「新しい農林水産大臣のもとで、必ずコメを下げるということをやってまいりますが」 国民民主党 玉木雄一郎 代表 「どのように下げるのか、いつまでに5キロいくらまでに下げますか」 石破総理 「コメは(5キロ)3000円台でなければならないと思っております。4000円台ということがあってはならない。それは1日でも早くその価格を実現する」 「価格を下げる」という石破総理の言葉に、都内にあるコメの販売店の店主は。 森田屋米店 森田ひろみさん 「値段を下げますって言ってましたよね。そんなに簡単に下がるもんじゃないと思う。すでに(コメが)足りないんだから。どうやって下げるんですか。そこを聞きたいですね」 21日に初めて備蓄米が入荷するという連絡があったそうです。ただ、そのコメの量は… 森田屋米店 森田ひろみさん 「30キロ袋で20本入ればいい方だと思う。たった2日か3日で多分なくなると思う」 コメ不足や価格高騰の問題に、有効な策を打てなかった江藤前大臣。 スーパーの平均販売価格は、2024年夏ごろから高騰の動きがありましたが、「新米が出回れば落ち着く」などと楽観視していました。 しかし値下がりはせず、政府は2025年3月になってから3回にわたり備蓄米を放出しましたが、販売価格は史上最高を更新し、2024年の2倍という高値が続いています。 買い物客からは厳しい声が… 買い物客 「(コメ価格)高いですね。備蓄米でちょっと安くなるのかなと思ってたんですけど」 「安くなっている実感はない」 農水大臣交代でコメの価格はどうなる この切実な問題に小泉氏はどう対応するのか。関係者によると、20日夜、“ある決意”を自民党の森山幹事長に電話で伝えていました。 小泉進次郎氏 「いま求められているのは農協に忖度しない判断ですよ」 自民党 森山幹事長 「分かっている。それでいい」 2015年、自民党の農林部会長に就任し、全国の農家を視察した小泉氏。農協の非効率な組織の改革などを訴えましたが、猛反発を受けた経緯があります。 ——農協改革が失速したという声がある 自民党 小泉進次郎 農林部会長(2016年 当時) 「全ての評価は受け止める。今まで登ることがなかった山に踏み入れた。自分なりに一言で振り返ると、負けて勝つかなと」 再び難局に挑む小泉氏に対し、石破総理は備蓄米の放出先について入札を経ずに決める「随意契約」を新たに検討するよう指示しました。これを受け、小泉氏は21日夜、「来週の入札を一旦中止する」と発表。 小泉進次郎 新農水大臣 「来週に予定していた入札を一旦中止し、随意契約のもとで、どのような条件で売り渡しができるかなど、具体的な対応策を早急に整理するよう事務方に指示を出した。今回1回やめますけども、新たな随意契約の形でやった方が、私は国民の皆さんにより安く届けられると判断しました」 さらに事実上続いているとの指摘がある“減反政策”もやめると明言しました。 小泉進次郎 新農水大臣 「石破総理も思いを持っている、“もう減反をやめるんだ”と。作るなという農政ではなくて、意欲を持って作っていただいて、余った部分があるとしたら輸出をするんだと」 今後、コメの価格は下がるのか。 TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん 「随意契約をすればスピードアップする。価格も一時的に下がる可能性がある。地方では輸送費や人件費が相当上がっている。自民党の詳しい人たちの間で3700円くらいで止まってくれればいいと」 “随意契約”で何が変わる? メリット・デメリットは 藤森祥平キャスター: 今度こそ新大臣のもと、コメの価格が下がるのか、そしてどうやって下げるのか。 石破総理から小泉新農水大臣に対して、新たにこのような指示があったそうです。 「随意契約を活用した備蓄米の売り渡しを検討すること」 これまでの備蓄米というのは、複数の業者によって「競争入札」で価格が決まっていました。一方で「随意契約」とは、競争入札をしないで特定の業者と契約を結んでいく形です。これは例外的な措置を取るという手段ですね。 価格は下がっていくメリットがありますが、デメリットとして、どんな業者と契約を結ぶのか、不透明な部分が挙げられます。 小川彩佳キャスター: この随意契約でコメの価格は下がっていくのか、どう見ますか。 藻谷浩介さん: どうも、何か重要なことを言わずに話している感じがします。 裏にあることを好意的に推測すると、従来は農協に行ってそこから彼らが備蓄米をもらって卸売りに行って、小売りに行って、というやり方をしていた。 このように間を挟むのをやめて、直接大手の小売事業者や卸売に売るぞと。そのときに『これぐらいの値段で売ってくれ』という約束をして、早く市場に出せという契約にしようとしてるのかなと思います。 小川キャスター: 農協に忖度しない、という言葉がありましたよね。 藻谷浩介さん: 迅速に安く店頭に並ばないと意味がないので。大手の小売業者に直接売ったらどうか、という声にこたえるんでしょうかね。 トラウデン直美さん: しかし随意契約になると、欲しかったけど手に入らないという業者も出てくるわけじゃないですか。すごくアンバランスな感じがする。 藻谷浩介さん: 大手や特定の小売業者が安く売る約束で(備蓄米を)買った場合、逆に小さい中小の小売店が困るんじゃないかという話が出てきますが、ある程度配慮して、特定の業者に偏らずに、卸売業者をきちんと活用することも含めて、買ったら1ヶ月以内には店頭に並べる契約をするとか、そういうことが必要だと思うんですね。 小川キャスター: コメの価格が下がるかどうかに加えて、これまでどういった問題が起きていたのか、どこに目詰まりがあったのかということをつまびらかにして、説明をしていただくというのも新大臣に求められることですよね。 藻谷浩介さん: 私は彼はなかなかよく勉強する人だと思っていますので、頑張ってほしいと思います。 ======== <プロフィール> 藻谷浩介 さん (株)日本総研 主席研究員 NYコロンビア大学ビジネススクール卒業 トラウデン直美さん 環境問題やSDGsについて積極的に発信 趣味は乗馬・園芸・旅行