国が生活保護費を引き下げたのは生活保護法に違反するとして、熊本県内の受給者ら３３人が熊本市など県内４市に対して減額処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が２１日、福岡高裁であった。 新谷晋司裁判長は「厚生労働相の判断に裁量権の逸脱や乱用はない」として、減額処分を違法とした１審・熊本地裁判決を取り消し、原告側の請求を棄却した。原告側は上告する方針。 国は２０１３年から１５年にかけ、デフレによる物価の下落に基づいて生活保護費のうち、食費などの生活扶助の基準額を引き下げ、この決定に従って自治体が減額処分を実施。１審は「厚労相が専門的知見に基づく分析を怠った」と判断していた。 控訴審判決では、０８年のリーマン・ショック以降、賃金や物価、家計消費が落ち込み、一般国民の生活水準と生活扶助基準額の水準との不均衡が顕著となったと指摘。このため、厚労相の引き下げ判断について「一応合理的で、専門的知見との整合性に欠ける点はない」と結論づけた。 弁護団によると、同種訴訟の高裁判決は１２件目。原告側の勝訴は７件、敗訴は５件目と判断が分かれており、今後最高裁が統一判断を示す見通し。
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