名だたる金融機関のトップがこぞってご意見を拝聴したがる「トランプ政権の弓削道鏡コンビ」

現代版「プラザ合意」 米ホワイトハウス西隣のアイゼンハワー・エグゼクティブ・オフィスビル(Eisenhower Executive Office Building。通称「アイゼンハワー行政府ビル」)4階に、大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長の執務室がある。 第1次トランプ政権のスティーブン・ムニューシン財務長官の経済政策アドバイザーを務めたミラン氏は第2次政権発足前の昨年12月22日、ドナルド・トランプ大統領にCEA委員長を指名され、今年3月12日の第119米議会上院本会議で賛成53票・反対46票によって同人事は承認された。 ミラン氏はボストン大学卒業後、ハーバード大学で経済学博士号を取得。博士論文のタイトルは「家計貯蓄行動と財政政策に関する考察」で、指導教官は有名なマーティン・フェルドシュタイン博士である。同氏もロナルド・レーガン政権時のCEA委員長。 それは措いて、ミラン氏がワシントン政界雀の耳目を集めたのは昨年11月に発表した論文「A User’s Guide to Restructuring the Global Trading System(国際貿易システムの再構築に向けたユーザーズガイド=手引書)」であった。この「ユーザー」とは、実はトランプ氏本人ではないかとも言われた。 同論文が強調するのは、ドルの過大評価是正には関税のほか、多国間通貨協定が有効であり、協調的にドル安を推進した1985年のプラザ合意の現代版として、トランプ氏の私邸にちなみ「マール・ア・ラーゴ協定」と呼ばれる新たな通貨協定を模索する必要がある、と。 大手金融機関トップの来訪 ポイントとして挙げられる3点は次の通り。�米国が提供する安全保障の見返りとして、他国が米国債を購入、�短期債から「長期世紀債」への移行により安全保障の資金調達負担を軽減、�債権を保有しない国には関税を課すことで、協定への参加を促す。このように通貨政策と安全保障政策を連携させることで、ドルの過大評価を是正し、米国製造業の競争力を回復することが期待される—。 論文執筆はミラン氏がCEA委員長に指名される前であった。加えて、但し書きに「(本論文は)政策提言ではなく、政策の分析や取り得る選択肢を示したもの」と記述されているが、ワシントニアンの誰もがトランプ2.0の通貨・関税政策の理論的バックグラウンドを提供するものと受け止めた。 実際、ミラン氏は1ヵ月後にCEA委員長に指名されて、今現在のEEOB4階に執務室を構えている。現在のミラン氏の影響力を示すファクトがある。それは4月25日のことだった。 米最大手ヘッジファンド、シタデルの創業者ケネス・グリフィン最高経営責任者(CEO)を筆頭に、大手投資ファンド、カーライルグループのハーベイ・シュワルツCEO、投資銀行最大手、ゴールドマン・サックスのジョン・ウォルドロン社長ら、主要金融機関のトップが揃ってEEOBにミラン氏を訪れたのである。 「二人の道鏡」 経済政策を大統領に助言するエコノミスト集団がCEAである。かつて当コラムでEEOB3階に執務屋を持つカール・ジャクソン大統領特別補佐官兼国家安全保障会議(NSC)アジア部長を筆者が表敬したことがあると書いた。しかし、その部屋の狭さに驚愕したことは記さなかった。ミラン氏の部屋の広さは承知していない。ただ、CEA委員長執務室には別途に会議室が隣接しているはずだ。 グリフィン氏ら約10人余が執務室を訪れて意見交換したとされる。いや、意見交換ではなく、ミラン氏のご意見拝聴が目的であろう。敢えて言えば、両者の力関係は一目瞭然の差があるのだ。 1990年に発足して以降の累計利益が830億ドル(約13兆円)に達するシタデル創業者といえども、ミラン氏が構想する通貨・関税政策の「肝」について本人から直接聞きたいのである。斯くもトランプ政策の先行きは不透明なのだ。 この間、筆者が「トランプ政権のキーマン」と断じたスティーブン・ミラー大統領次席補佐官(政策担当・39歳)と今回のスティーブン・ミラン氏(40歳)2人の「スティーブン」は英語表記も同じ「Stephen」だ(日本人感覚からすると「ステファン」と読みたくなる)。 両氏にはもう一つ共通点がある。共にスキンヘッドなのだ。然るに筆者は「米国ファースト」のトランプ、J・D・バンスの正副大統領を支える、ミラー次席補佐官とミランCEA委員長の2人を「トランプ政権の弓削道鏡コンビ」と名付けたい。 天平の高僧・弓削道鏡は一体どんな人物だったのか? もう一度、歴史教科書を捲っていただきたい。 合わせて読む【トランプの最側近】「MAGAの生みの親」39歳の大統領次席補佐官に注目すべき「これだけの理由」

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