このままで大丈夫? スポーツ紙が「千賀滉大」や「山本由伸」の好成績をスルーし「大谷翔平まっすぐ帰宅」をニュースにする理由

 昨シーズンは史上初となる50本塁打、50盗塁を達成し、3度目のリーグMVPに輝いた大谷翔平(ドジャース)。今年も現時点で投手復帰を果たすことはできていないが、ナ・リーグでトップの17本塁打を放つなど、見事な活躍を見せている。(※成績は5月20日終了時点)【西尾典文/野球ライター】  *** 【写真を見る】最近「兄弟そっくりすぎる」と話題になっている「大谷翔平の実兄」 大谷以外の日本人選手も活躍中なのに…  ただ、その一方で気になるのが大谷以外の日本人メジャー選手の活躍についての報道の少なさだ。投手では故障から復帰した千賀滉大(メッツ)がここまでナ・リーグでトップとなる防御率1.43をマーク。大谷の同僚である山本由伸(ドジャース)もナ・リーグ3位となる防御率2.12を記録しており、日本人投手同士でのタイトル争いとなる可能性も高い。 CMにのぼり、街で見かけない日の方が少ない大谷翔平選手(本人Instagramより)  現在は左ハムストリングスの故障で離脱しているものの、今永昇太(カブス)も安定した投球を見せて、2年続けて活躍を見せている。野手では、鈴木誠也(カブス)も既に11本塁打を放っており、ナ・リーグ2位となる39打点をマークするなど、チームには欠かせない存在となっているのだ。  しかし、いくら彼らが活躍を見せても、メジャー・リーグに関するニュースでは大谷の動向が真っ先に紹介され、他の日本人メジャー選手全員分を足しても、報道量は及ばない。これは今年に始まったことではなく、大谷がエンゼルスで二刀流として活躍を見せてからは、何年もこのような状況が続いている。 まっすぐ家に帰るだけでニュースになる大谷  なぜ、ここまで大谷の報道が過熱するのだろうか。スポーツ紙の記者は、その理由について以下のように話してくれた。 「スポーツ新聞においてはプロ野球に割く紙面の量が圧倒的に多く、それは今も変わっていません。ただ、ファンも多様化が進んだことで、以前のように誰もが知るスターがいない現状があります。野球に関心がない層も増えていますね。そんな中で、大谷はどの世代にも知名度は抜群で、イチロー以来となる本物のスターと言えます。また、他の競技でもいわゆる“国民的な”スターやカリスマ性を持った選手は不在で、そうなると、どうしても大谷を取り上げることが、部数を伸ばしたり、ページビューを稼いだりするために効率的が良いのです。本当にコアな野球ファンは、自分で色々と調べられるようになったことも大きいかもしれませんね。それほど野球に関心がなくても大谷には関心があるという人は多い。それが今の大谷への集中した報道に表れていると言えるでしょう」  先日も、「大谷が試合後、わずか15分で球場を後にして帰宅した」という話題が多く報道されており、プレー以外の一挙手一投足が話題となっている。ドジャースのチームメイトである山本や佐々木朗希の名前は知らなくても、大谷夫人の真美子さんや、飼い犬のデコピンの名前は知っている。そんな日本人も多いのではないだろうか。 スポーツ紙はいつまでも大谷頼みでいいのか  また他にスターがおらず、大谷が圧倒的な存在となっていること以外にも、報道が過熱する理由があるようだ。スポーツ紙の記者はこう続ける。 「今はどの世代もスマートフォンやタブレットでニュース速報を見る時代です。時差の関係でメジャーの試合が行われているのは、日本の早朝や昼間ということが大半ですが、そこで速報記事を出せば簡単にアクセスが稼げる。特に、大谷の場合はホームランを打てば、それだけで速報が出せるので、報道する側からしてもこれほどありがたいことはないですよね。誰からどこに打ったのかということに加えて、今は打球速度や飛距離などもすぐに分かるので、その数字を紹介すれば記事が完成するわけですから……。非常に『費用対効果』も高いと言えます」  そのため、各媒体とも大谷専門記者が彼の動向をくまなくウォッチしているのだという。 「どの媒体もいかに早く大谷のホームランをまとめて記事をアップするかということに注力しています。頼むから怪我で長期離脱するだけは避けてほしいと考えている報道関係者も多いと思いますね。あと取材される側の選手や、NPBの球団からも『大谷は別格』という認識が広く浸透していることも大きいと思います。NPB球団の広報も、大谷のニュースがない日にリリースを出すなど考えているようです」(スポーツ紙記者)  こういった話からも、大谷がいかに野球界を超越した存在となっているかがよく分かるだろう。ただ、他の日本人メジャーの活躍についても詳細を知りたいという野球ファンも確実にいるはずで、そのことも野球の裾野を広げていく意味では重要である。  また、NPBなど日本の野球界全体でも大谷に続くスターを次々と生み出していくような努力が必要ではないだろうか。いつまでも話題は大谷頼み……そんな状況から早く脱することを望みたい。 西尾典文(にしお・のりふみ) 野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。 デイリー新潮編集部

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