去年、首都高でトラックが乗用車に衝突し6人が死傷した事故で、運転手の男の初公判が開かれました。裁判を見つめた遺族は、会見で「悔しい」と怒りをあらわにしました。 ◇ 20日、1年前の事故で父親や夫を亡くした遺族が会見を開きました。 夫を亡くした遺族 「いったいどれだけ被害者や私たち被害者遺族を苦しめるんでしょうか」 父を亡くした遺族(19) 「直接見て、自分の父はこんな人に殺されてしまったんだ、すごい悔しい気持ち」 去年5月に埼玉県戸田市の首都高速・美女木ジャンクション近くで、トラックが渋滞の列に突っ込んだ事故。乗用車に乗っていた船本宏史さん、杉平裕紀さん、小松謙一さんの3人が死亡し、3人がケガをしました。 過失運転致死傷の罪で起訴されたのはトラックを運転していた降籏紗京被告(29)。20日に遺族らも見つめるなか、初公判が開かれました。 裁判長 「起訴事実に間違いはありませんか?」 降籏被告(29) 「ありません」 起訴内容を認めた降旗被告。これまで、警察の調べに対し、体調が悪く風邪薬をのんだ状態で運転をしていたと供述していました。 降籏被告(29) 「ぶつかったとき、意識がなかった」 「本当に体調が悪かったため正直に申告したのに結局、運転を代わってもらうことができなかった」 しかし、20日の裁判で検察側は、38℃台の熱があり運転に支障があることを自覚しながら自ら仕事を行う判断をしたと主張しました。 検察側 「意識がはっきりしないことを運転中に認識していたが『仕事ができないと言いたくない。借金があり職場に迷惑をかけたくない。事故を起こすことはないだろう』などと安易に考えて運転した」 「直前までブレーキを踏むことなく、時速75キロないし80キロで前方の車両に激突した」 また、検察側は、事故の前夜から不倫相手とLINEでやりとりを繰り返して、睡眠を十分に取っていなかったことなども指摘しました。 遺族らが涙を流す様子も見られた今回の裁判。亡くなった杉平裕紀さん(42)の葬儀で長男と長女が話したあいさつ文が読み上げられる場面もありました。 杉平さんの長男 「この先ずっと一緒にいられると思っていた。話したいこと、見せたい自分の姿がたくさんあった」 杉平さんの長女 「すてきで最高なお父さん。事故の1週間前に『お父さんみたいな人と結婚したい』と伝えたとき、お父さんがうれしそうで良かった」 あの日、突然失われた日常。 船本宏史さん(54)の妻 「供述調書を隅から隅まで何度読んでも、被害者や遺族への謝罪の言葉はまったくありません。検察官の取り調べに対し『次に乗るなら中型かな』信じられない言葉ばかり発しています」 「我々のようにつらい思いをする遺族がこれ以上、増えないためにも、降籏被告を厳罰に処するよう司法ができる最大の量刑を与えてほしいと強く思っています」 「過失運転致死傷罪」と「危険運転致死傷罪」の違いについて、藤井貴彦キャスターが解説します。 藤井貴彦キャスター 「今回、起訴されたのは、過失運転致死傷罪によってですが、遺族は当初、危険運転致死傷罪への変更を求めていました。この2つには大きな違いがあります」 「過失運転致死傷罪は『不注意』で事故を起こした場合で、法定刑の上限は7年です。一方、危険運転致死傷罪は『危険かつ悪質な運転』をして事故を起こした場合で、(法定刑の)上限は20年と極めて重い罪なんです」 「この『危険運転』をめぐっては、法制審議会で悪質な運転による事故に適用しやすくするための見直しの議論が始まっていて、速度やアルコール濃度に数値基準を設けることなどが提言されているということです。長濱さんはどう感じますか」 長濱ねるさん(俳優・『news zero』火曜パートナー) 「二度と同じことが起こらないためにルールの整備が必要というのは賛成です。企業や個人に委ねない、統一したルールがあった方が良いと思いました。納得できるルールが今後、どのようにつくられていくのか、議論に注目したいです」 (5月20日放送『news zero』より)