2児の母で、臨床心理士・公認心理師として精神科に勤務しながら、 Instagram や X でユーモアあふれる漫画を更新している漫画家・イラストレーターの白目みさえさん。現在、二世帯住宅で義父母と一緒に暮らしている白目さんは、善意が悪意に感じてしまうほどお世話好きで独自の価値観を持っている義母にたびたび悩まされており、その詳細とともにうまく付き合うコツや対処法などを綴っていただいています。 今回は、娘の初めてのお宮参りに関するエピソードを綴っていただきました。孫が主役の行事ですが、義母の主張に振り回され気味だったという白目さん。嫁姑の間でどんなやりとりがあったのでしょうか。 お宮参りの大変さにも地域差がある? 今回は長女のお宮参りのときのお話です。 お宮参りの一般的な流れで言えば、フォトスタジオにてスタッフさんの神業により「あれだけ泣きじゃくっていたのに、いつこの笑顔の写真が……?」と思えるようなベストショットを撮っていただき、私たち家族も「あらやだ、細見えするじゃない」と思えるような素敵家族にまとめていただき、その後着替えて神社に出向いてお宮参りへ、という感じかと思います。 さて、突然ですが私はまあまあ田舎に住んでおります。なにやら都会にお住まいの方はフォトスタジオと神社が徒歩圏内にあることも多いそうですね。駅近でショッピングモール内のスタジオで撮影できたり、衣装もメイクも撮影も神社参拝も全部ひと申し込みで完結するプランがあったりするとか。 だから一日で撮影も参拝も済ませられるのだと思いますが、私の住んでいる地域ではそうは問屋がおろしません。 その地域ごとに「お宮参りならここよ」という有名な神社があり、選択の余地はありません。フォトスタジオの数も限られていますから、近くのスタジオはすでに予約が取れないなどで、そこから真逆の距離に車で1時間、という事態もざらにあります。 家からスタジオに車で40分ほどかけて移動し、写真撮影を終えてそこから1時間かけて神社に向かい、ご祈祷を終えて帰るころにはへっとへとのボッロボロという未来が容易に想像できました。 臨月での入院中に「ママたちの産後奮闘記」的な記事を読み漁った私は、お宮参りに不安を覚えておりましたので、ネットで必死に探して一筋の光を見つけました。 ナイスアイデアだと思ったけれど… それが「出張カメラマン」。 なんでもお宮参りをしている最中のいろんなシーンをプロのカメラマンが撮ってくれるというのです。私が依頼した方は、お値段もスタジオで撮るのとあまり変わりませんでした。 また、カメラマンさんがずっと撮り続けてくれるので、通行中の誰かに気を遣って撮影を頼まなくとも、家族全員の自然な姿を写真に残すことができるのです。しかもプロの技で『上手に』。私の住んでいる地域においては、これ以上ない素晴らしい方法だと思い、私は早速申し込みました。 そして長女のお宮参りの日が近づいてきたので、参加したいはずに違いない義母に声をかけ、出張カメラマンの説明を行いました。ドヤ顔で。「私すごいでしょう」という態度で鼻息荒く。「ナイスアイデア」という返事待ちで。 ところが義母の反応は意外なものでした。「えー……イヤや」とまさかの拒否!私は説明が足りていなかったのかと思い、再度メリットを説明するも「イヤや。恥ずかしいわ」と更に拒否! えっと……そもそも私たちのイベントなので、義母を撮るわけではないのですが……?主役は娘(孫)ですぞ? イヤだと拒否する義母に夫が一喝 その後も何を言っても「恥ずかしいからイヤ」と拒否。しかしもう申し込んでしまいましたし、スタジオを予約するにももう日がありません。 どうしたもんかと思っていると夫が「じゃあ俺らだけでやるからいいよ来なくて」と魔法の一言。「ちょっともう……そんな言い方」なんて私は止めに入っていましたが、心の中では(私もそれ言いたかったー)と大喝采していたことは内緒です。 すると、「いや行くよ。カメラマンだけでもどうにかならないの?」と粘る義母。めっちゃ嫌がるし、来たがるやん。そんなに嫌やったら写らなくていいですけど……撮影の瞬間だけ神社の御神木に隠れていてもらったらいいんですけど……。 ところが珍しく夫が「ならん。俺らで決めたことやから」とバッサリ。ありがとう夫。たぶん面倒になっただけやと思うけど。そして夫は何も決めていないけど。なんだったら支払いも申し込みも私がやったけど。夫には「移動距離が少ない」ってメリットしか伝わっていないとは思うけど。それでもこの時の私にはヒーローに見えていたよ。 夫にそう言われて、ぐぬぬとなる義母に「あ、私の母もその日来たいと申しておりまして」と伝えると、「あらそうなの!」と急に笑顔に。たぶん自分と同じように嫌がってくれると踏んだのではないでしょうか。 義母は何をそんなに嫌がっていたのか? そして迎えた当日。案の定、義母は私の母に「カメラマンが撮ってくれるらしいですよ。恥ずかしいですよねぇ」と同意を求めました。 しかし母は「一回で終わるんやったら楽でええやないですか。主役は孫ですし」とバッサリ。ありがとうお母さん。事前に根回ししておいて良かった。 そんなこんなで嫌がっていた義母でしたが、写真にはしっかり全カット写ってくださいました。カメラマンが「あちらから歩いてきて、この辺りで止まってお話ししてください」など指示してくださるのですが、しっかり歩いて、止まって話して……。 できあがった写真集を見たときも「年賀状にはこれがいいんじゃない?」なんてノリノリ。お義母さんも写ってますね。しかも真ん中に笑顔で(苦笑)。 後から何をそんなに嫌がっていたのかを聞いてみたところ、なんと義母は「グラビアアイドルみたいな撮影」が行われると思っていたようです。神社前にパネルのようなものを置いて、そこでスタジオのように「素敵ですよー」「可愛いー」「いいねいいねー」「ふーセクシー!」みたいな掛け声をかけられながら、カメラマンが撮影する様子を想像していたんだとか。 そんなんしたら神社側から怒られるわ。でもそんな想像をしていたら、たしかに嫌だろうと思います。私も嫌です、そんな撮影。 覚悟を決めて参加してくれた義母に感謝 一方、私の母は保育士なので、園の行事を撮影してくださるカメラマンを想像していたのだと思います。進行の邪魔にならないように、さっとさりげなく園児たちの自然な姿を撮影してくれるイメージが容易に浮かんでいたのでしょう。 でも、義母の世代にとっての「出張カメラマン」だと、グラビアアイドルや漫画に出てくるお嬢様のような想像をしてしまうのも無理はないかもしれません。完全に私の説明不足でした。申し訳ありませんでした。 逆に言えば、そう思っていても来てくれたってことは、グラビアアイドルのような撮影をされるつもりで腹を括っていたということですよね(笑)。なんかほんとすみません。ありがとうございます。 その後も次女のお宮参り、七五三などにも同じカメラマンを派遣しましたが、義母は見事に全部参加してくださいました。 七五三の時なんかは、「ちょっとポーズつけてみましょうか」なんてカメラマンが提案してくださって、全員で手をつないで歩いているようなシーンや、木の影から覗いているようなポーズで撮影していただきましたが、義母もしっかりやってくれました。 そりゃ、一度グラビアアイドルの撮影を想像して覚悟を決めてくださったのですから、これくらい余裕ですよね。お義母さん、ありがとうございました。 妊娠中、義母のストレスで入院した嫁が、病室で聞いた的確すぎる「嫁姑トラブルの対処法」