河合優実と原菜乃華が「主人公より魅力的」…朝ドラ『あんぱん』が”支持を集める理由”と”唯一の不安”

Xの「#反省会」は盛り上がらず 3月31日の第1話放送から1ヵ月半が経過し、ようやく朝ドラ『あんぱん』(NHK総合)の全貌が見えてきた感がある。ここまで第7週35話が放送されたが、前作『おむすび』と比べて視聴率、ネット上の反響ともに安定。Xには連日、好意的なコメントが寄せられている。 当作は『アンパンマン』や『手のひらを太陽に』などを手がけた、やなせたかし・暢夫妻がモデルの物語。どちらも世代を超えた作品であり、本人のキャラクターも人気があっただけに放送前から注目度は高かったが、序盤から期待に応えていると言っていいだろう。 近年ではどの作品も毎日「#反省会」で批判を受けるなど、朝ドラをめぐる環境は厳しさを増す中、なぜ『あんぱん』は好スタートを切れたのか。さらに今後、期待できるポイントと、現時点で考えられる唯一の不安にふれていく。 心をつかむ脚本のサービス精神 物語は昭和2年(1927年)、高知県御免与町で小学生の朝田のぶ(永瀬ゆずな)が東京から移り住んできた柳井嵩(木村優来)と出会うところからスタート。2人は同じクラスとなり、父親を失うという共通点などから徐々に心を通わせていく。 第3週に入ると、のぶ(今田美桜)は高等女学校5年生、嵩(北村匠海)は中学5年生に成長。のぶは学校の先生を目指して女子師範学校へ、嵩は浪人を経て絵を描いて生きていくために芸術学校へ進学する。しかし、高知で兵隊に向けた奉仕活動をはじめたのぶと、東京で自由を謳歌する嵩の間には徐々に溝が生まれていき……。 また、この間においしいパンとそれを作る屋村草吉(阿部サダヲ)との出会いや、嵩が得意の絵でのぶを元気づけるシーンなどが織り込まれている。さらに序盤でネット上を賑わせたのは視聴者に『アンパンマン』を想起させる仕掛けの数々。 屋村(ヤム)=ジャムおじさん、のぶの母・朝田羽多子(江口のりこ)=バタコさんなどの役名、「何のために生まれて何をしながら生きるのか」「元気100倍だね」などのセリフを筆頭に、中園ミホが手がける脚本のサービス精神と抜け目なさを感じさせられる。 もう1つ、スタート直後に話題を集めたのは、出演俳優の豪華さ。第1週から、朝田のぶを演じる今田美桜と柳井嵩を演じる北村匠海だけでなく、ドラマ・映画界の主演級俳優が次々に登場した。 嵩の母・柳井登美子に松嶋菜々子、父・柳井清に二宮和也。育ての父となる伯父・柳井寛に竹野内豊、育ての母となる伯母・柳井千代子に戸田菜穂。のぶの父・朝田結太郎に加瀬亮、母・朝田羽多子に江口のりこ、祖父・朝田釜次に吉田鋼太郎。風来坊のパン職人・屋村草吉に阿部サダヲ。しかも二宮和也は第1話の段階ですでに病死していて、加瀬亮も第4話で病死という贅沢な起用だった。 その後も河合優実、原菜乃華、志田彩良など、来年以降の朝ドラ主演を務めそうな若手有望株が次々に登場。ちなみに今後も妻夫木聡や、本格的なドラマ出演は初めてのMrs. GREEN APPLE・大森元貴などの出演が予告されている。 序盤から描かれる「喪失」と「挫折」 開始早々から『アンパンマン』の要素や名優の存在感という、視聴者にとって分かりやすい訴求が奏功したのだろう。 ただ、それだけでは「出オチ」に終わりかねないのだが、『あんぱん』は朝ドラらしい「喪失」や「挫折」をベースにした人情劇で視聴者の心をつかみはじめている。 嵩は父・清を失い、母・登美子も自分を残して家を出てしまう。のぶは父・結太郎を失い、祖父・釜次も骨折で仕事ができず一家は困窮する。その後、嵩は受験を失敗し、帰ってきていた母は再び家を出てしまった。また、朝田家の石材店で働く原豪(細田佳央太)に召集令状が届き、家族は悲しみに暮れる。さらにこの先、戦争にまつわるシーンは増え、家族との別れなども描かれていくという。 そもそも『あんぱん』は、「生きる意味も失っていた苦悩の日々と、それでも夢を忘れなかった二人の人生。何者でもなかった二人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描き、生きる喜びが全身から湧いてくるような愛と勇気の物語」というコンセプトが掲げられている。 序盤から「喪失」や「挫折」から立ち直ろうとする、のぶや嵩の姿を丁寧に描き、それが受け入れられただけに、今後も視界良好と言っていいのかもしれない。 加えてもう1つ支持を得ているのは、こちらも朝ドラらしい純愛の描写。のぶを密かに慕い続ける嵩と弟の千尋(中沢元紀)、ひとつ屋根の下で思いを秘めていた蘭子(河合優実)と豪、嵩の同級生・辛島健太郎(高橋文哉)に恋した蘭子(原菜乃華)。寛と千代子の夫婦愛、結太郎と羽多子のなれそめなども含め、さまざまな人物のピュアな恋心を描くことで、主に女性層の心をつかんでいる。この点はかつて『やまとなでしこ』(フジテレビ系)や『花子とアン』(NHK総合)などでも見せた中園ミホの真骨頂と言っていいだろう。 ただ裏を返せば、そこに多少の不安要素も感じさせられる。 脇役より魅力を欠く「のぶ」と「嵩」 第6週では次女・蘭子と演じた河合優実、第7週では三女・メイコと演じた原菜乃華。それぞれの役柄と女優が称賛を集め、なかには「主人公より魅力的」「未来の朝ドラ主演」とまで言い切る声もあった。 姉より成績優秀だったが家計を支えるため郵便局に勤めるしっかり者の蘭子、明るく天真爛漫で家族を笑顔にするメイコ。対照的な姉妹のキャラクターは河合とメイコのハマリ役と言っていいかもしれない。 一方、主人公であり主演である、のぶと今田美桜はどうなのか。のぶは嵩と出会ったシーンで自分からぶつかったにもかかわらず「ボケ!」と言い放つほど勝気な性格。千尋と兄弟げんかをする嵩を平手打ちしたり、東京と高知の遠距離電話で嵩に怒鳴ったりなど、正義感が強い一方で怒りっぽいヒロインとして描かれている。 また、希望通り女子師範学校に通わせてもらい、「愛国の鏡」として新聞に掲載されて周囲から称えられるなど、家族や友人の中で“おいしいとこ取り”するような描写も目立つ。そんなのぶに感情移入しづらいのか、ここまでは演じる今田を称えるような声は少ない。 さらに相手役の嵩も、恵まれた環境で育ち、浪人を経て東京の芸術学校へ通わせてもらい、酒場で遊び、のぶにハンドバッグをプレゼントするなど、共感しづらいシーンが続いている。幼少期は体が弱く養子に出されるなど嵩より辛い境遇ながら家族思いで優しい弟・千尋、謙虚で勤勉な若き石工・豪など、他の男性キャラクターと比べて「思い入れが持ちにくい」と言われても仕方がないだろう。やはり現段階では演じる北村を称えづらい状況が続いている。 つまり現状は、「『あんぱん』という作品そのものに好感は持っていても、メイン2人のキャラクターと俳優に対してはまだそうではない」という人が少なくないのではないか。 だからこそ今後の鍵を握るのは、2人の人生に大きな影響を与えるであろう戦争の描写。女子師範学校で忠君愛国の精神をたたき込まれたのぶは戦争を経てどう変わっていくのか。自由な生活を謳歌していた嵩は召集令状が届き、入隊することでどう変わっていくのか。さらに2人は戦争によって何を失って苦しみ、何を得ようとしてもがいていくのか。 これらの描写が、「お腹を空かせて困っている人がいたらパンをあげる」という“逆転しない正義”を描いた『アンパンマン』の誕生につながっていくのだろう。となれば、戦争と終戦後の描写が増える6月・7月には、のぶと今田、嵩と北村への支持が高まっていくのかもしれない。 【さらに読む】朝ドラ「あんぱん」柳井千尋のモデルになった「やなせたかし氏の弟」についてSNSなどで広まり続ける「誤解」を正す

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