広島・中村奨成が“素行不良”から改心してついに開花か 「広島だから成し得た」と他球団の編成担当者が指摘する理由

 毎年、多くの新星が飛び出してくるプロ野球の世界。時には開幕前にそれほど大きな期待をかけられていなかった選手が、意外な活躍を見せることもある。今年のセ・リーグで、そんな選手の代表格と言えるのが広島の中村奨成だろう。【西尾典文/野球ライター】  *** 【写真を見る】新井監督の就任も追い風になった? 2022年の女性トラブルでも厳しい目が向けられていたが…  広陵では3年夏の甲子園で大会記録となる6本塁打を放つなど大活躍を見せ、2017年のドラフト1位で入団。地元広島出身のスター候補として球団の期待も大きかった。にもかかわらず、昨年までの7年間、一軍での通算成績は39安打、2本塁打、11打点、打率.192と寂しい数字に終わっている。2022年オフには女性との交際を巡るトラブルが報じられ、プレー以外の面で厳しい声が聞かれることも少なくなかった。 活躍を見せる広島の中村奨成選手(4月2日)  しかし、今年は4月下旬から外野の一角に定着。5月13日の巨人戦では4年ぶりのホームランを放つなど、ここまで20試合に出場して20安打、打率.317と見事な成績を残しているのだ(5月15日終了時点)。  昨年は得点力不足が課題でシーズン終盤に失速したチームにとっても、中村の8年目のブレイクは大きなプラスであることは間違いない。  では、くすぶっていた中村が、今年結果を残している要因はどこにあるのだろうか。まず、取り上げられることが多いのが打撃フォームの変化だ。今年から左足を少し開いて構えるオープンスタンスを取り入れ、バットを肩に乗せるスタイルも昨年までとは全く異なっている。  昨年までは速いストレートには差し込まれて、変化球に崩されるシーンが目立ったが、今年はしぶとく食らいついて右方向にヒットを打つケースも明らかに増えているのだ。4年ぶりとなるホームランも戸郷翔征(巨人)のフォークに上手く対応したものだった。 昨年までより「がっちりした印象」  打撃フォーム以外にも変化した点があるという。ライバル球団の編成担当者はこう話す。 「昨年までと比べて明らかに体が大きくなりましたよね。今まではプロで何年もやっている選手には見えないくらいでしたが、今年は体の厚みがだいぶ増したように見えます。広島は、伝統的に練習量も多く、キャンプでもかなり練習するので、体重を維持することも難しいと聞きますから、オフの間にトレーニングもかなりやってきたのではないでしょうか。フィジカル面が向上したことが、打撃技術の向上にも繋がっていると思います」  公表されている体重は、昨年が84kg、今年が86kg。数字的は微増だが、体つきを見ても、がっちりした印象を受ける。速いボールに力負けしないパワーがついたことで、打席の中で余裕が出てきたことも確かだろう。  そして、フィジカル面、技術面の向上を支える“バックボーン”になったものがあったようだ。前出の編成担当者はこう続ける。 「やはり大きいのが、高校時代にしっかり精神的に鍛えられてきたということではないでしょうか。広陵出身の選手は、高卒でプロ入りするケースは少ない一方で、大学時代に大きく伸びて、プロで活躍している選手が非常に多いです。例えば、今年のルーキー、宗山塁(楽天)や渡部聖弥(西武)もそうですね。中村は、素行面でいろいろと言われることが多かったですが、そこからしっかり軌道修正できたのも、広陵時代の教えが大きかったと思いますね」  粘り強く待ち続けた球団の姿勢もキーになったようだ。 「あともう一つ感じるのは、広島という球団の“我慢する姿勢”ですね。ドラフト1位であれだけ騒がれて入団しながら結果も残せず、素行に問題があると指摘されている選手をここまで長く契約することは、他球団ではなかなかできないことです。地元の広陵出身ということもあるかもしれませんが、二軍の試合を見ていてもなかなか結果が出ない選手をよく我慢して使っているケースは多いです。もちろん、それがマイナスに働くこともありそうですが、良くも悪くも家族的な球団ですよね。『そろそろクビが危ないな』という時期に、新井監督が就任したことも、中村にとっては追い風だったと思います」(ライバル球団の編成担当者) 広島には“遅咲き”の成功例が多い?  過去を振り返ってみても“赤ゴジラ”の異名をとった嶋重宣がブレイクしたのは、プロ入り10年目のことだった。2016年からのセ・リーグ三連覇に貢献した安部友裕は、9年目で初めて年間出場試合が100試合を超えている。彼らのような成功事例があったことも、中村を見切らなかった背景として考えられる。  5月13日には、センターのレギュラーである秋山翔吾が怪我から復帰して一軍に合流したが、それでも中村はスタメンを譲らず、ホームランを含む2安打の活躍でチームの勝利に大きく貢献した。他にもライバルとなる選手は少なくないが、このまま完全なレギュラーに定着することができるのか。今後のプレーぶりに注目だ。 西尾典文(にしお・のりふみ) 野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。 デイリー新潮編集部

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