一棟購入は9.5億円 2025年5月、群馬県みなかみ町の山頂に2020年創業のスタートアップ企業「NOT A HOTEL」(代表取締役CEO茺渦伸次)による高級シェア別荘 NOT A HOTEL MINAKAMI「TOJI」が開業した。 建築家の谷尻誠氏と吉田愛氏が手がけた独特のデザインを持つ、5棟の独立した各ヴィラの総面積は約252.28平方メートルで、最大8名まで宿泊可能だ。1階には2つのベッドルーム、シャワールーム、専用駐車場、2階にはリビング、露天風呂、サウナ、薪ストーブ、キッチンスペースを備え、リビングを囲むように設計された15mのインフィニティプールと天然温泉、水風呂まである。冬の雪景色、夏の緑、秋の紅葉など四季折々の絶景を眺めながら、極上温泉に心ゆくまで浸ることができる。 車で都心から約2時間半で到着するみなかみ周辺では、スキー、ゴルフ、ラフティングなど、多彩なアクテビティも楽しむことが出来る。また、宿泊者だけが利用できるプライベートレストランを併設、地元の食材を活かした薪火料理のディナーコースや朝食がふるまわれる。 NOT A HOTEL MINAKAMI「TOJI」は、年間10泊の利用の場合は2,891万円(50年を想定)、同30泊の場合は7,948万円、一棟(360泊/年)を実質購入する場合は9億5370万円。発売後、早々に完売したというから驚きだ。 都心や北関東在住の経営者層、30代後半から50代がコアの購入者で、都心からのアクセスの良さ、温泉・プール・サウナがプライベートで利用できる設備や非日常的な眺望が決め手となったという。 NOT A HOTELの特徴は、「世界中にあなたの家を」をコンセプトに、世界的な建築家やクリエーターが手掛けるデザイン性とIoTなどのテクノロジーによる快適性を両立させた別荘を、毎年10泊分からシェア購入ができることだ。別荘における維持・管理の手間も一切ない点もポイントだ。 オーナーは自分が保有する利用日数を使って、全国各地のNOT A HOTELにも滞在可能だ。また、オーナーが利用しない日はホテルとして運用することで、宿泊収益の一部還元によるインカムゲインが期待できる。 いわゆるリゾート会員権ではなく、土地や建物の「所有権」の購入となるため、減価償却や相続などが可能な「資産」として保有できるだけでなく、購入から4年目以降は売却も可能であり、物件自体の値上がりによりキャピタルゲインの可能性も期待できるなど、新しいタイプのリゾート投資スタイルといえよう。 管理費月額55万円でも順番待ち 冒頭に紹介した群馬 ・みなかみの他、NOT A HOTELは、既に、宮崎・青島、那須、福岡・薬院、北軽井沢、石垣島などに展開している。 2026年4月開業予定の瀬戸内海に浮かぶ離島・佐木島(広島県三原市)のNOT A HOTEL SETOUCHIは、世界的建築家ビャルケ・インゲルス率いるBIGがデザインした3つのヴィラからなり、オーナーを出迎える専用の桟橋やビーチテラスを持つ。 総シェア購入数36口(1口年間30泊)が販売され、1口(毎年30泊、50年を想定)3億8,903万7,000円、管理費は月55万4,400円にもなるものの、現在、第4期募集中(シェア口数6口)でウェイティング登録となるほどの関心が富裕や投資家などから寄せられている(2025年5月1日現在)。 この先も、北海道のルスツリゾート、三浦海岸、千葉県富津市などで新たなNOT A HOTELの計画が進んでおり、販売予定となっている。 NOT A HOTEL の購入者層は、デジタル世界に慣れ親しみ、建築や家具、絵画や音楽などアートや自然などにも興味を持つ30代から50代の会社経営者、会社役員、医師、クリエーター、投資家といった富裕層が中心だという。また、都内からのアクセスがいい北軽井沢や那須などの物件では法人での契約も多い。会社の福利厚生として、所有する宿泊日数をギフト機能でアプリから社員にプレゼントするといったニーズもあるようだ。 実際、創業5年を迎えたNOT A HOTELの累計の契約高は400億円を突破、オーナー数は約800名に届く(2025年4月)。さらに、2027年3月期までには、累計契約高を現状の2.5倍となる1000億円超を目標としている。 1泊4万円以下で泊まれるプランも なお、NOT A HOTELでは、一棟購入やシェア購入ではなく、「メンバーシップNFT」となってシェア別荘をリーズナブルに利用することも出来る。NFT(非代替性トークン)を購入・保有することでメンバーシップ会員になり、毎年決められた日にランダムに選ばれた場所に宿泊できるというものだ。 メンバーシップNFTは3種類あり、年間宿泊日を1泊から3連泊までを選ぶことができ、47年間利用できる。年間1泊の場合、価格は185万円となり1泊あたり3万9,361円で利用できることになる。既に販売は終了しているが、NFTは、随時売却・譲渡可能だ。メンバーシップNFTにより、デジタルネイティブ世代の若年層の取込みにも繋がっているという。 その他、NOT A HOTELでは、仮想通貨による宿泊も可能としている。 NOT A HOTELは、2024年12月、「NOT A HOTEL COIN(NAC)」を発行し20億円を調達した。これは国内過去最大規模かつ、日本初のRWA(現実資産)対応のIEO(Initial Exchange Offering)となるという。 NACの購入者は、仮想通貨として保有するか、NOT A HOTELに貸し出すことでNOT A HOTELの宿泊権が報酬として付与される仕組みだ。貸し出したNAC自体は、価格変動するものの、1年後にそのまま返還されるため、毎年、NOT A HOTELに実質無料で泊まれることになる。 「世界的なカネ余り」が要因に NOT A HOTELによる高級シェア別荘が、高額にも関わらず新生代の富裕層を中心に契約が増えている背景には、「世界的なカネ余り」がある。 足元ではトランプ関税などによる不安はあるものの、日米欧で長らく続く世界的なカネ余りにより、株式市場や不動産市場にカネが流れ込み、個人の保有資産が拡大した。これにより満たされた「退屈でひまな社会」をもたらされ、デジタル化やSNSの発展と相まって、リゾート別荘やコンドミニアム、アート作品、高級ワイン、高級時計など装飾品、高級外車など富裕層向けの余暇市場が拡大してきた。NOT A HOTELの盛り上がりは、その世界的な動きの象徴の一つともいえよう。 筆者は、国内外の富裕層向け資産運用アドバイザーや金融コンサルタントの立場で、数多くの富裕層と直接接してきた。こうした経験則からいえる富裕層の特徴として、(1)「人と同じはいや」(2)「面倒くさがり」(3)「でも、仲間は大切」が挙げられる。 この特徴に沿ってNOT A HOTELがなぜ、特に30代から50代の新世代の富裕層に支持されるのかを考えてみると、(1)「人と同じはいや」なので、NOT A HOTELの唯一無二なラグジュアリーなシェア別荘の存在はうってつけだ。出来たばかりのスタートアップによる運営で真新しさもあり、他者と被ることはまずない。また、プライベートダイニングやラウンジスペースとして、浅草と広尾にある住所非公表のオーナーだけの専用施設の存在も秘密基地のようで、富裕層の心を擽るものだ。 こうした富裕層は、概してお金よりも時間が大切であり、(2)面倒くさがりでもあるので、至れり尽くせりのサービスは不可欠だ。NOT A HOTELでは、別荘のような維持管理の手間がかからない。換気をし、溜まった埃や湿気のために掃除をするという煩わしさから解放され、到着してすぐに高級ホテルのような空間を利用することができる。購入者は洗練されたオンライン上のサイトで応募し、ラグジュアリーな別荘の購入手続きが出来るだけでなく、購入後の予約や収支管理までUIに秀でたスマホアプリで視覚的に操作可能な点も魅力となっていよう。 面倒くさがりの一方で、(3)「でも、仲間は大切」だ。経営者であれ、医師や士業の先生であれ、富裕層はその立場上、孤独であったりする。家族やパートナー、気の置けない友人たちと過ごす時間をとても大切にする。 「何もしない贅沢」を満たす 普段は都市部で忙しく経営や投資や社交にと国内外を飛び回る富裕層は多い。このためオフには多忙な日常から離れ、家族やパートナー、気の置けない友人たちと一つの場所に留まり、お気に入りの美しい山々やビーチといった自然に癒されながら過ごす時間を大切にするのだ。 つまり、「何もしない贅沢」こそ彼らが求めているものといえる。都会の喧騒から離れゆったり過ごすため、山々や湖に海岸など大自然に囲まれたリゾート地が選ばれることになるわけだ。 出来れば別荘からも出たくない。だから、NOT A HOTELのように、専用レストランや出張シェフサービス、調理設備の充実も必要になる。 プールや温泉にサウナなどの施設も必要だ。家具やアメニティが上質さも含め、至れり尽くせりの機能と格式を備えプライバシーが保たれ、使い勝手が知れているNOT A HOTELは富裕層の理想型となる訳だ。 海外富裕層もターゲットに もっとも、富裕層の(1)人と同じはいや、(2)面倒くさがり、(3)でも、仲間は大切、といった特徴は、国内の富裕層だけでなく、海外富裕層にも通じるものだ。 2024年7月、 NOT A HOTELは、海外向けにシェア別荘の販売を始めると発表している。既に日本語サイトに加え英語サイトが開設されており、米国やアジアを中心に海外富裕層からの関心も高く購入実績もある。今後開業する予定の世界的な著名クリエーターが手掛けるより高額な別荘を中心に、顧客層の多様化が進みことになり、海外での知名度の向上やブランド化により、将来的には、海外リゾート地などでのNOT A HOTELの展開も期待できよう。 このように富裕層向けの高級シェア別荘という独自のビジネスモデルを構築し、有名建築家によるデザイン性の高い建物やIT操作が評価され話題になるものの、これら物件を取得・開発し、マーケティングし運営していくには多額の資金が必要になる。 NOT A HOTELは、創業以来複数のラウンドを通じ、大規模な資金を確保して運転資金、シェア別荘の取得・開発・運営、海外向け事業など事業の拡大を図っている。 2023年2月には、ANRI、オープンハウスグループ、SMBCベンチャーキャピタル、ニッセイ・キャピタル、などから約28.5億円を調達した。 2024年7月には、一定の知識や経験、資産規模を持つプロの個人投資家(151人)を引受先とする第三者割当増資などで約55億円を調達。同年12月には、三井住友銀行、千葉銀行、広島銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行、群馬銀行などから総額約105億円の融資を受けており、資金調達は、融資分を含め累計約223億円に達している。 当然ながら、これら投資ファンドや融資した銀行は、NOT A HOTELの創業者をはじめ経営陣による先駆的なビジネスモデルによる成長性や収益性だけでなく、財務の健全性などを調査しリスク分析をした上で、魅力ある投資先・融資先として実行していることになる。 なお、NOT A HOTELの株主には、経営陣、個人投資家に加え、オープンハウスグループ、Plan・Do・Seeなど事業会社、金融系の投資ファンドでは、ニッセイ・キャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、静岡キャピタル、ちばぎんキャピタル、広島ベンチャーキャピタル、みずほキャピタル。事業会社系の投資ファンドでは、オリエンタルランド・イノベーションズなど、その他、独立系投資ファンドのANRIなど錚々たる企業が名を連ねている。 リスクと懸念点よりもワクワク感 NOT A HOTELにも不安点やリスクは存在する。ホテルに自動切り換えできるとはいえ、年間10泊や30泊の宿泊枠を毎年使い切れるのか、自宅からのアクセスはどうか、そもそも投資商品としてみた場合、収益性はどれくらいあるのか、といった点は購入検討の際に考えることになろう。 また、NOT A HOTELの契約は30年間を基本とし、借地期間の50年間を見据えているというが、建物が老朽化した場合の対応、物件の売買はスムーズに可能なのかも気になろう。 万が一、運営会社が破綻した場合、または運営会社が変更となった場合、別荘の運営や維持管理などのサービスはどうなるのか、資産価格が下落するのではといった懸念点もあろう。 無論、こうした懸念点やリスクの多くは、NOT A HOTELに特有のものではなく、あらゆる不動産投資と不動産保有において存在するものではある。概して金融リテラシーと観光リテラシーが高い富裕層が占めるNOT A HOTELのオーナーは、こうしたリスクも理解した上での購入となろう。 確かに、NOT A HOTELは、資産運用や不動産投資の側面もあるが、オーナーにとって、単純により高いパフォーマンスを求めるのであれば、株式や為替、仮想通貨など他の金融商品を選択できる。NOT A HOTELでは、収益性や投資観点だけではなく、唯一無二のものを保有する喜びや新しいものへのワクワクする感覚をより大切にしているのだ。 キャピタルゲインの魅力も「不動産のメルカリ」 なお、物件の売買はスムーズに可能なのか、資産価値は上がっていくのか、という点に対しては既に手が打たれている。 NOT A HOTELは、2025年12月にリゾート会員権や別荘のセカンダリー(中古)取引プラットフォームを展開するNOT A HOTEL2ndを設立している。 現在は、NOT A HOTEL内での買替えを中心に取引実績を積み重ねている。例えば、「NOT A HOTEL AOSHIMA」の物件において、12口(360日)所有するオーナーから7口(210日)をNOT A HOTEL2ndが買取り、新しいオーナーに再販している。当初価格(プライマリー)よりも約30%高値にも関わらず、7口すべてが1週間で完売し、取引総額は4.2億円分となったという。 まさに資産価値としてのNOT A HOTELが評価されキャピタルゲインが生まれているのだ。冒頭に紹介したNOT A HOTEL MINAKAMI「TOJI」のように、既に多くの物件が完売しており、いくつかの人気物件では、キャンセル待ちやウェイティングリスト登録者も多いという。 「世界的なカネ余り」により「退屈でひまな社会」が続くなか、NOT A HOTELは、(1)唯一無二のブランドとビジネスモデル、(2)富裕層のニーズを理解している(3)デジタル化と巧みな資金調達という経営戦略によってブランド化が進め、資産価値の上昇を促し更なる開発投資が行うという好循環が続いていこうとしている。 【独自】最高級住宅街「芦屋・六麓荘」でご近所トラブル……移り住んだ中国系富裕層は、どんな「ルール違反」を犯したのか
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