「自民には“玉木首相”というカードが…」 勢いに乗る国民民主との連立の可能性とは

【前後編の後編/前編からの続き】  今夏の参議院選挙で、与党が「過半数割れ」の危機に瀕する中、躍進が確実視される国民民主党。人気の高まりを受け、永田町では同党の玉木雄一郎代表(56)が首相に担がれるという見立ても。しかし、その一方で、肝心の候補者擁立の内幕をのぞいてみると——。  *** 【写真を見る】「兄よりイケメン」 玉木雄一郎氏の弟・秀樹氏  前編【偽名を使い「独身」を装った不倫議員に、「不倫弁護士」菅野志桜里… 国民民主党、大躍進のカゲで候補者擁立に苦戦】では、夏の参院選での大躍進が期待される一方、候補者擁立に関するトラブルが絶えない国民民主党の現状について報じた。元衆院議員で弁護士の菅野(山尾)志桜里氏(50)を巡っては、SNS上で「不倫まみれの国民民主党」や「不倫容認政党」などの言葉が飛び交う“大炎上”へと発展した。 玉木雄一郎代表  出馬情報が菅野氏に劣らぬハレーションを起こしているのが、東京選挙区の目玉候補に挙げられる元NHK「日曜討論」キャスターの牛田茉友氏(39)だ。  古巣NHKの関係者が憤懣(ふんまん)やるかたない様子でこう話す。 「立候補が発表される直前まで、彼女は周囲に“その気はありません”と答えていたので、局としてはほとんど青天の霹靂(へきれき)でした。22年の参院選時にも彼女の名前が候補に挙がり、その後、自民や立民、維新など各党の勉強会に積極的に顔を出すようになっていた。散々顔を売ったおかげで今回、彼女はほぼ全ての政党からオファーを受けていたといい、よりどり見取りの中から選んだのが国民民主だった。要は、一番勢いのある“勝ち馬”に乗ったということでしょう」  てっきり「脈アリ」と勘違いしていた自民党や、大阪出身の牛田氏にご執心で熱烈ラブコールを送っていた日本維新の会も、彼女の手のひら返しにあきれているという。 「年度途中で辞めたことに関しては申し訳なく思っている」  5月5日、東京・秋葉原で行われた国民民主党の街頭演説には牛田氏も玉木代表と並んで登壇。約200名の聴衆を前によどみなく演説を打った後の彼女を直撃した。 「(NHK内からの批判は)私自身には届いていませんが、年度途中で辞めたことに関しては申し訳なく思っています。どのような形になっても、NHKには必ず恩返しできるようやっていきたいと考えています」  国民民主を選んだ理由については、 「私自身、NHKにいた頃から、孤独・孤立支援の問題について何とかならないかと考えていて、国民民主はその部分について熱心で充実していた。そういったところに共感しましたし、私もそこ(問題解決に向けた道)をしっかりとこじ開けていきたいなと」  他党の関係者が「ウチから出てほしかったのに」と悔しがる候補者はもう一人いる。  3月にいち早く比例代表としての擁立が正式発表された、東海大学海洋学部教授の山田吉彦氏(62)だ。 “隠し玉”も  山田氏が出馬の経緯をこう明かす。 「私の専門は海洋安全保障で、これまで尖閣諸島や北方領土の問題などに取り組んできました。しかしプランを提案してもなかなか(解決に向けて)前に進まないのが現実でした。自民党がダメなら野党に声を上げてもらおうと、尖閣諸島開拓の日である今年1月14日、各党代表者が集まった会議で話をした際、一番活発に受け答えをしてくれたのが榛葉さん(国民民主党幹事長の榛葉賀津也氏・58)でした。後日、“ご自身で政策をつくってみてはどうか”と、榛葉さんから出馬を打診され熟慮の末、出馬を決意するに至りました」  ピンからキリまでバラエティーに富む面々に紛れ、“隠し玉”も用意されているという。 「元特捜検事で弁護士の郷原信郎氏(70)にも比例代表候補としてオファーしているそうです。郷原氏自身、国民民主党が政権入りを果たした際には法務大臣を希望しているともいわれています」(全国紙政治部記者) 「玉木首相」というカード  同党の勢いを目にして、自民党内では政権維持のため「玉木首相」というカードを切って、国民民主と連立を組む構想があるとされる。 「仮に参院でも過半数を割って石破氏が辞任するとして、新総裁を党内から選出したところで、野党の協力が不可欠な少数与党の状態では、国会での首班指名選挙を乗り越えるのは簡単ではありません。国民人気の高い玉木氏を首相に担いで同党を取り込めば、政権の安定に加えて支持率アップも見込める。“ジリ貧を打開するウルトラC”と言う自民関係者もいるほどです。こんな話が真顔で語られるのも、玉木氏が“首相になりたい”との野心を周囲に漏らしていることも影響しています」(政治ジャーナリスト)  一方、元自民党本部事務局長で選挙・政治アドバイザーの久米晃氏は玉木氏の心中をこう推し量る。 「政権入りして結果を出せなければ、今度は玉木氏自身が批判の矢面に立たされ、次の総選挙でボロ負けするリスクを抱え込むことになる。いまのポジションのまま自民に厳しい要求を突き付け、国民から拍手喝采を浴びるほうが得策なのは自明です。玉木氏の野心は確かですが、いまはタイミングと環境を見定めていると考えた方が自然です。参院選で自公が過半数割れしても、私は連立の組み替えは起こらないとみています」 「自公と連立を組むことはない」  果たして、自民・公明に国民民主を加えた「自公国政権」や「玉木首相」誕生の可能性はあるのか。榛葉氏に問うと、 「(自民と)連立を組むことはないです。われわれからそんな発信をしたことはないし、いまはこの党を大きくして、さらなる政策実現のパワーを得ることだけを考えています」  と言下に否定する。打算と思惑が交錯する中、自民党関係者はこんな危惧の念を口にする。 「渡辺喜美氏らによって2009年に結成された『みんなの党』は、翌年、初めての参院選で10議席を獲得する大躍進を遂げました。“増税反対”を打ち出し、都市部の30〜40代を中心とした無党派層から支持を集めた構図はいまの国民民主と重なる部分が多い。ですが、“アジェンダ(政策課題)の党”を標榜して政権入りを拒否したことが一因となり、党の求心力低下を招いて空中分解。結党からわずか5年で解党に至りました。国民民主がその轍を踏まない保証はない」  玉木代表が首相を目指すのは結構。だが、その前に国会議員としてふさわしい候補者を探すことが先ではありませんか。  前編【偽名を使い「独身」を装った不倫議員に、「不倫弁護士」菅野志桜里… 国民民主党、大躍進のカゲで候補者擁立に苦戦】では、夏の参院選での大躍進が期待される一方、候補者擁立に関するトラブルが絶えない国民民主党の現状について報じている。 「週刊新潮」2025年5月15日号 掲載

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