「情報を集めすぎて迷う人」へ “不安”を減らして自分の選択に満足するための意外なコツ

 毎日、大量の決断を繰り返しているうちに、私たちの脳は知らないうちに疲れている。 「絶対に失敗したくない」。そんな気持ちから、次々に情報を集めてしまいがち。情報を集めれば集めるほど、どうしたらいいか分からなくなる……。そんな経験をした方も多いだろう。こうした行動の根本にあるのは「不安」。不安との付き合い方を見直せば、決断の負担からも解放される。 (引用はすべて堀田秀吾氏の『決めることに疲れない 最新科学が教える「決断疲れ」をなくす習慣』より) 【写真を見る】宇多田ヒカルさんが答えた「緊張との闘い方」 「私はワクワクしている」と言う  ハーバード・ビジネス・スクールのブルックスの研究では、「脳はリラックスした状態以上に、興奮状態にあるほうが、ポジティブな状態だ」と判明しています。ブルックスは、不安な状態からリラックスした状態に落ち着かせるよりも、興奮状態に移行したほうが、パフォーマンスが上がることを実証しています。 不安との付き合い方を見直せば、決断の負担からも解放される  研究では、100人以上の被験者に対して、見知らぬ人の前で歌わせたり、ビデオカメラの前でスピーチをさせたり、計算問題を解かせたりといった緊張状態を作り出しました。その際、  グループ(1) 実験前に「私はワクワクしている」と声に出したグループ  グループ(2) 実験前に「私は不安だ」と声に出したグループ  グループ(3) 実験前に「私は落ち着いている」と声に出したグループ  グループ(4) 実験前に何も言わなかったグループ  という具合にいくつかのグループに分けて比較をしたのです。 【「決めかた上手」になると、日常ががらりと変わる!】人が1日にする決断は3万5000回。私たちは日々、「決めること」に追いかけられています。あなたをその疲れから解放する賢い決めかた、迷いをなくし、決めた後に後悔しないコツを世界最先端の研究を基にご紹介。「時間をかけない方が良い選択をできる」「あえて休憩を取る効果」など、今日からすぐ役立つノウハウ満載! 『決めることに疲れない 最新科学が教える「決断疲れ」をなくす習慣』  その結果、グループ(1)の被験者が相対的に良いパフォーマンスを見せたといいます。「自分は落ち着いている」などとリラックスさせるよりも、「この状況にワクワク(興奮)している」と自らを奮い立たせたほうが効果的だと研究では提唱しています。  歌手の宇多田ヒカルさんも、「緊張との闘い方を教えてほしい」という質問に対して、「私、今、すごくワクワクしてる! 高揚している! 楽しみ!」と声に出して自分に言い聞かせていると答えたそうです。日本を代表するアーティストであっても、緊張や不安との向き合い方を考えているのです。  こうした自分の感情についての解釈を変えることで、マイナス感情を軽減する方法を「リアプレイザル」と呼びます。英語で書くとre =再度、appraisal =評価。いま感じている感情を再評価し、新たな意味づけをする「認知的再評価」を意味します。感情を再評価することで、悪い解釈を良い解釈に変えてしまおうというわけです。私は、「事実はひとつ、解釈は無限」とよく学生たちに伝えています。同じ物事でも、どうとらえるかによって、まったく印象は異なります。  動物園をデート先に選んだとして、会話は盛り上がったけど、園内で食べたご飯は美味しくなかった。この場合、良いことと悪いことのどちらを重く見るか、とらえ方ひとつで、デートの印象はがらりと変わってしまいます。  だからこそ、私は「事実はひとつ、解釈は無限」だと、自らに言い聞かせています。そう考えることで、都合よく自分の中で折り合いをつけやすくなり、ネガティブな出来事に引きずられずに、「まぁ、そういうこともあるさ」と受け流せるからです。 不安を紙に書き出す  不安によって、人の判断が間違ったものになってしまうのには、理由があります。  人間の本能とも言える「喜び」「怒り」「不安」「恐怖」といった感情は、脳の古い部位である大脳辺縁系の扁桃体によって生じます。  人類が進化していく中で、まず大脳辺縁系が発達しました。その後、脳が進化する過程で、理性を司る領域として前頭葉が発達しました。  人間が不安を覚えるとき、脳のリソースは大脳辺縁系に割かれてしまいます。そのため、分析や判断を担う前頭葉にリソースが注がれなくなり、合理的かつ効率的な判断ができなくなってしまうのです。パニックになると冷静な判断ができなくなるのは、こうした脳の働きによるものなんですね。  では、どうするか。前頭葉を働かせることで、思考する力を取り戻すのです。  そこでトライしてほしいことが、「書き出す」という作業です。  不安の解消法として、「あえて不安を紙に書き出す」というシカゴ大学のラミレスとベイロックの研究があります。  実験では、20人の大学生の被験者たちにテストに解答してもらいました。その際、不安とプレッシャーを感じさせるため、「テスト内容が難しい」「試験のスコアによってお金がもらえたり取られたりする」「試験をしている様子を録画し、後ほど教員と学生がその映像を見る」といった条件を課し、被験者を次の3つのグループに分けました。  グループ(1) 10分間、何もせずに静かに座ってもらう  グループ(2) テストについての自分の感情や考えを書き出してもらう  グループ(3) テストとは関係のないことを書き出してもらう  これらのアクションをしてからテストに臨んでもらいました。  すると、グループ(1)とグループ(3)は実験前に行ったテストと比べて7%も正答率が下がり、グループ(2)だけは4%ほど正答率が上がったといいます。  不安なことを書き出すという作業は、考えて分析することにつながります。考えるためには前頭葉を使いますから、不安がわく大脳辺縁系とは異なる脳のリソースを使います。そのため、不安の感情が抑えられることにつながると考えられているのです。  さらに、こんな研究もあります。ノースカロライナ州立大学のクラインと北テキサス大学のボールズらは、35人の新入生に「大学に入った気持ちや感想」を毎日20分間2週間にわたって書き綴ってもらう一方で、別の36人の新入生には「大学とは関係ない普通のトピック」を書いてもらうという実験を行いました。  7週間後、前者は後者に比べ、メンタル部分の改善だけでなく、作業や動作に必要な情報を、一時的に記憶・処理する「ワーキングメモリ」の大幅な改善も見られたというのです。  彼らは別の実験も行っています。  ・「ネガティブな体験」を書いてもらった34人のグループ  ・「ポジティブな体験」を書いてもらった33人のグループ  ・普通のトピックを書いてもらった34人のグループ  このうち「ネガティブな体験」を書いてもらった34人のグループは、ほかの2つのグループよりもワーキングメモリが改善し、余計なことを考えなくなったといいます。  不安を書き出すことは、不安を抑えるだけではなく、パフォーマンスの向上にもつながるというわけです。  不安で選択ができなくなっているときは、とりあえず不安を書き出してみる。それだけで状況改善の第一歩となります。 デイリー新潮編集部

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